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本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

【書評】働かずに食う飯はウマいか / “もの食う人びと”

本の紹介

もの食う人びと (角川文庫)

もの食う人びと (角川文庫)

きっかけ

銀の匙見て腹が減って。

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銀の匙 Silver Spoon 1話より

食事がウマそうなアニメは名作という法則がある。ジブリなんかがその筆頭にあげられ、ただの目玉焼きですらごちそうに見える。これはアニメに限らないと思う。マンガだってウマそうに書いてあるのは名作が多い。そして銀の匙に出てくる食事はウマそうに見える。1話を見て卵かけご飯を食べた奴はそうとういると思う。

人は他人がウマそうに食べていると自分も食べたくなるものだ。潰れる寸前だった和菓子屋も、人がおいしそうに食べている映像を宣伝にして復活した。そういう作品はキャラを魅力的に描けるということなのだろう。キャラが魅力的で、ウマそうに食べていると自分も真似したくなる。たとえ演出が大げさだと理解していても、ついトマトとモッツァレラチーズを一緒に買って食べてみたりしてしまう。確かにうまかった。肩が抉れなかったとしても。

さてそんな人を同じ行動させる人の食事風景だが、この本はまさにそれを書いている。確か買った時にパラパラとめくって目についたのは、最初の話である「残飯を食らう」だ。まさかの残飯を食うもの、これはルアゴイフじゃなくて人間の話だ。衝撃を受けて思わず買ってしまった。このときはそうと知らなかったが、中高生におすすめの本100選とかでよく紹介される名著だった。


内容とか

この本は著者が世界のあちこちに出かけ、現地の人達と同じ物をいっしょに食べるという話だ。この現地の人達というのはかなりバラエティに富んでいる。スラムの住人に始まり、炭鉱員や修道士、はては受刑者と一緒になって昼食を食べる。行った先で庶民と同じ店で食べるという人は結構いるが、ここまでやる人はなかなかいない。しかも実際に仕事まで体験したりする始末。恐ろしいほどの体験主義なのだ。そんな人が書いているのだからつまらないわけがない。そして読んでいると腹がへる。

一番ウマいのは

この手の旅行記を読むときに俺が気になることの一つに、結局何が一番ウマかったのかというものがある。日本にもウマいものは多々あるが、世界にはまだ日本で知られていないウマいものもあるはずだ。だから俺は世界にどんなものがあるか知りたい。そしてあわよくば食べに行きたい。

この本で絶賛されているのはボグラッチというスープだ。これは「黒を食う」という話に出てくる。黒というのは石炭のことだ。日本で石炭を食うと言ったらイカスミが入っているか燃料に石炭を使うという程度だろう。だがこれは違う。実際に炭鉱に降りて石炭を掘り、石炭が口に入るという意味だ。そして炭鉱夫と一緒に食事をとるのだ。そこで出されたスープがボグラッチなのである。茶色い具沢山のスープで中にはウシキという白玉状のモチが入っている。そして牛骨と香味野菜、それに唐辛子で味付けされている。田舎らしい安くて体に良さげな料理だ。

ウマいのは分かったが正直絶賛するほどのものではない気がする。もちろん俺はコレを食べたことはないけれど。別に高級な具材を使っているわけではない。炭鉱夫が食べられる程度の値段だ。このスープがウマかった理由は続きに書いてあった。あまりにもウマかったので翌日にスープをまた飲みに行ったそうだ。だが昨日ほどウマくはない。その日は炭鉱に行っていないからだというオチで終わる。

やはり人間は体が欲しているものを食べた時にウマく感じるものらしい。体を動かし、汗を流しているからこそ栄養のあるものを体が欲しがる。この場合はさらに石炭まで口の中に入った後だからなおさらだろう。最初に書いた銀の匙で主人公がウマそうに卵かけご飯を食べたのは働いた後だった。果たしてアニメを見て、体を動かさずに卵かけご飯を食べた人たちはあれを味わうことができたのだろうか。少なくとも俺はしていない。運動のために食事をするならともかく、食事のために運動なんてやってられるか。だから俺はボグラッチを食べられない。残念だ。

背に腹は代えられない

しかし働きもせず、運動もせずに美味しくものを食べる方法がもう一つある。それなら俺にでもできるし効果が高い。それは何も食わず、腹をすかせて状態になること。空腹は最高のスパイスという言葉は有名だし、誰でもある程度のレベルなら体験済みだろう。だが人は空腹になることで想像以上のものを口に入れることになる。この本に出た中で特に衝撃的だったものを3つ紹介する。

3位 残飯
買うきっかけとなった話。バングラデシュで著者が最初に食べた食事がこれだ。残飯だから安い。わずか5タカ=約15円(執筆時)しかしない。いや、残飯なのにただじゃないというべきか。いろんなものを積極的に食べる著者もこれには勘違い。お米文化はいいものだと思いながら残飯を食べたが、残飯と知ったら投げ出した。そして残飯の残飯となったそれを食べる少年。ちなみに残飯の出荷日は木・金で、結婚式が多いから残飯も多い。鮮度の高い残飯ほど値段も高いらしい。

2位 石鹸
石鹸というのは別に何かの隠語ではない。体を洗う洗剤、高級脂肪酸の塩の総称、英語で言ったらsoapのあれ。なぜこれを食べる人がいるのか。それは体力を落とすためである。もったいぶらず真相を書くとこうだ。当時(93年)のロシア軍では上層部による物資の横流しが行われた。その結果軍内の食糧事情は悪化し、下っ端である新兵たちの食べるものは殆どなくなった。そして多くの新兵が栄養失調となり、病気にかかるものも大勢出た。しかも上官によるいじめもひどかったらしい。そのため病院に運ばれた兵士たちは体力が回復して軍に復帰することを恐れ、体力が回復しないように石鹸を食べたという。人は追い詰められるとこんな行動にまで出るのかと。当然のことだが著者は石鹸を食べてはいない。

1位 人
人を食ったような奴は世の中に大勢いるけど、ガチでやった奴はまずいない。そりゃ猟奇殺人の話はあるし、昔いたどこかの部族にはそんな習慣があったとかいう話もある。あと騙されて人を食べたハルパゴスなんてのもいたな。だが20世紀の日本人が組織的に人を食べていたとなると驚くしかない。人を食べたのはフィリピンのキタンラド山に潜んでいた三十数名の残留日本兵。食うものに困って近くの村人達を捕まえては食べたという。山なので野豚や野鹿もいるし、山芋も自生している。それなのに人を組織的に食べてしまった。この話を聞くために著者はわざわざ山に登り、村人に話を聞く。この本には衝撃的な話が多いが、これが一番やばい。この話では著者が何かを食べた描写はないが、これでこの肉料理がウマかったと言われても反応に困るだけなのでこれでいい。

まとめとか

食いたくないもののほうが多く紹介したが、それでも読んでいると腹が減ってくる。どこかに食べに行きたい。なんか食べてくる。


こんな人におすすめ

  • 旅行が好きな人
  • 食べるのが好きな人
  • 推薦図書を読まないといけない人

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