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本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

【書評】ラベルで時を引き伸ばす / “スーパーの裏側―安全でおいしい食品を選ぶために”

スーパーの裏側

スーパーの裏側

数年前の俺は毎日のように複数のスーパーに通い、それぞれの特色や値段の付け方を比較をしていた。主に弁当コーナーを。もちろんこれの影響でだ。

ベン・トー サバの味噌煮290円 (集英社スーパーダッシュ文庫)

『ベン・トー』
半額弁当を求めて客同士が殴り合いをするという作品だ。もちろん実際に俺は殴り合いをしようと思っていなかったが、店によってそんなに違いがあったりするのかということが気になって調べていたのだ。その結果、客の立場としてはそれなりに分かるようになって、買うものによって店を選択するようになった。

が、今回紹介する『スーパーの裏側』を読んで思う。「あの頃に読んでおきたかったな……」と。俺が知っているのはあくまでも表面上のことにすぎなかった。


一応最初に書いておくが、以降に書かれているスーパーの仕組みや問題点については俺自身が裏を取ったものではない。また、この本が出版されたのは2009年なので既に5年が経過している。何が言いたいかというと、事実と違うからって俺を責めるなよ。

ラベリングタイム

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この本の大半はスーパーによる偽装行為について書かれている。ただこの「偽装行為」とやらが問題で、客の信頼を裏切るという意味では完全にアウトなのだが、法律上は問題なかったりする。それは製造と賞味・消費期限の問題だ。普通の人は次のように考えていると思う。

  • 製造:調理
  • 賞味・消費期限:おいしく・安全に食べられる期限

この本によるとそんなことはないらしい。非常にスーパー側にとって都合のいいように決まっている。

製造

というわけでまず製造から。

食品衛生法では、「製造」とは「最終加工」のことだと定義されています。


「肉のブロックをカットする」「解凍する」「パックに詰める」「トレイのふたをする」「ラベルを貼る」なども、すべて「最終加工」にあたるのです。
スーパーの裏側―安全でおいしい食品を選ぶために

つまりどこか別のところで調理・パッキングされたとしても最終的にラベルを貼りさえすればそれが最終加工となり、そこで製造したことになる。シールを貼ることで全てがリセットされるのだ。そしてこの「最終加工を行った」という事実がうまいこと使われることになる。

賞味・消費期限

次に賞味・消費期限だがこのようになっている。

賞味・消費期限の決定は、法律(食品衛生法、JAS法)では、「その食品を一番知っている者が行う」と決められています。加工食品の場合、「その食品を一番知っている者」は、それを売るスーパーではなく、つくり手のメーカーになります。だから、メーカーが賞味期限を決めています。
スーパーの裏側―安全でおいしい食品を選ぶために

これだけ読むとすごく当たり前に思える。要するに製造したところが一番その食品についてわかっているのだから、製造したところが賞味期限を決めているというわけだ。ここで先ほどの製造の定義がうまいこと使える。その結果がこれだ。

問題は、スーパーが賞味・消費期限を決める以下の食品です。
①肉
②魚
③野菜
④果物
⑤惣菜
これら5部門の食品(解凍品含む)については、それぞれの生産者ではなく、加工した人、カットした人、パックした人が、「その食品を一番知っている人」ということに、法律ではなっています。つまりスーパーです。だから、それらの食品については、スーパーが「賞味・消費期限」を自由に決めることができるのです。
スーパーの裏側―安全でおいしい食品を選ぶために

これによってスーパーは時を自由に操る力を手に入れたことになる。

エコというかエゴ

以上の「製造」と「賞味・消費期限」の定義によってスーパーは合法的に食品を使いまわすことが可能となった。例えば売れ残ったトンカツもご飯の上に乗せて再パックしてラベルを貼ればあら不思議、できたてホヤホヤのカツ丼に生まれ変わるのだ。それがさらに売れ残ったとしてもシールを貼り直すことで理論上は永遠に当日できたことになる。もちろん現実にはどんどん傷んでいくのでそんなことは不可能だが、見た目が変わらない・健康的に問題ない範囲であるのならば可能ということになる。

当然消費期限のほうも品質的に変化がないかどうかで決めるのではなく、食べてもたぶん問題ないだろうというアバウトなスーパーの都合のいいように設定することが出来る。そしてラベルを貼る度に再更新のチャンスが訪れる。だって「作りなおした」のだから。

言ってしまうとこの本に書いてあるスーパーの偽装行為のほとんどがこれ。先に引用した5部門の食品でどのように適用しているかを書いてあると思えばいい。まあこんなに万能で合法な方法があれば利用する店が存在していてもおかしくないよな。こちらからするとたまったものじゃないが。

念の為に書いておくが全てのスーパーがこうだというわけではない。あくまでもそういう店もあるという話だ。本でもそう書いてある。

見極める

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このラベルを利用したトリックを知ると多くの人はこう思うだろう。
「じゃあどうすればちゃんとした店かどうか分かるの?」
この本の価値のもう半分が正にその見極め方だ。

第5章においてそれぞれの見るべきチェックポイントが書いてある。それは「店外」「店内設備」から始まり「各売り場」や「時間帯」といった細かいところまで書いてある。そして巻末にそれらをまとめたチェックシートまで用意されている。なのでこの本を読み終えたらいつものスーパーにこの本を持って行くといい。ちゃんとした店かどうか分かるはずだ。

この見極め方が書いてあるので、この本は電子書籍化して価値が上がったと言える。さすがに紙の本を片手にスーパーをウロウロするのはきついものがあるが、スマートフォンならばそこまでおかしくはない。さり気なく買い物メモを見る感じでチェックしていくといいだろう。

一方で俺が惜しいなと思う点もまたこの「見極め方」についてだ。せっかくこの著者は食品を一瞥するだけで判断できる目を持っているのだからその力の片鱗を分けてもらいたい。何が言いたいかというと「写真を載せろ」ということだ。この本には食品以外にもスーパーのダメな例が出てくるのだが、それについて解説の図はあっても写真がない。「新鮮なものは◯◯だが、鮮度が落ちると△△」とか「ネズミがいるとこのような痕跡がつく」とか色々書いてあるのだが、文章だけじゃわからない。写真があれば完璧なのにと何度思ったことか。

最後は情報

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この本を読んで最終的に思うことは「もっと情報が欲しい」だ。まずこの本に書かれていることが正しいのであるならば、スーパーはもっと情報を開示しろと言うことになる。加工日だけでなく「最初に調理したのはいつか」とか「いつ収穫されたのか」というような情報だ。客にとって最後にラベルが貼られた時間よりもっと知りたいことがある。その点についてちゃんと答えてもらいたい。

一方でこの本は本当のことを書いているのか、少なくとも現在においても当てはまることなのかという疑問がある。amazonのレビューなんかを見ても実情と異なっているなんてコメントがちょいちょい見受けられる。今の時代かなりの人がスマートフォンを所持していてすぐに情報が拡散される。しかもスーパーでは多くのパート・アルバイトというわりと逃げやすい立場の人が働いている。しかもほとんどがそこを利用する地元の人間だ。そんな人達の前で偽装なんて続けることが出来るのだろうか。

そういうわけでこのスーパーの問題については正確な情報が欲しいと言いたいわけだ。誰か実際に働いている人の話を聞いてみたいものだ。

今回この記事を書くために『ベン・トー』を少し読みなおしてみたのだが、あいつらスーパーの内部事情に詳しすぎだろ。そしてどのスーパーもちゃんとした店というのが判明している。道理で半額弁当なんていう品質的に怪しい物を全力で求められるわけだ。意外にリアリティある作品だった。

ベン・トー Blu-ray Hungry BOX(完全初回限定生産)(Blu-ray Disc)

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