本しゃぶり

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ラブライブ!の洗礼

何の因果か手に入れたので紹介しようと思う。

ムービックラブライブ!School idol project 入浴剤3袋セット/BiBi: キャラグッズmovic

はじめに

まず始めに断っておくが、私はいわゆるラブライバーではない。アニメは一期と二期の両方を全話見たとはいえ、特別好きというわけでもなければ曲を持っているわけではない。私にとって『ラブライブ!』とはあくまでも数あるアニメの中の一つにすぎないのだ。それなのにこれをなぜか同期から渡されたのだ。ラブライブを好きだとは一度も言ったことは無いというのに。だがせっかくなのでありがたく頂いた。そしてこのブログで紹介することに決めたのである。

しかしレビューしようとしたところで私は困ってしまった。なぜなら本やアニメ、それにガジェットなどならレビューをしたことはあるのでやり方は分かる。しかし、バス用品については何のこだわりも無いため、どのように書けばいいかわからないのだ。そこでラブライバー達の感想を参考にしようと検索してみたのだが、全くと言っていいほど見つからない。出てくるのはマカロンと入浴剤を間違えたエピソードばかりであり、いくら探しても「フィギュアと一緒に入ってみた」とか「エリーチカの味がする」というようなレビューはどこにもないのだ。

そこでバス用品紹介の参考になるものは無いかと探していると、そのことだけに特化したレビュアーを見つけた。あまりにも質の高いレビューをするため、なんと映画にもなっている。彼の名はルシウス・クイントゥス・モデストゥス。西暦130年代にローマで活躍した浴場専門の設計技師だ。

そこで私は考えた。彼の目線で見ればこの入浴剤も上手くレビューできるのではないか、と。ラブライブどころか入浴剤すら知らない人間であるからこそ本質に迫ることができるに違いない。

内部から

さて、通常こういったレビューというものは外側から書いていくのが定石であり、一部の間では「開封の儀」と呼ばれる一種の宗教的行為にまでなっている。 しかし、ルシウス目線で考えるのならば中身から取り上げたほうが正しい。何故ならば彼が新しいお風呂関係のものと出会うのは、いつも浴槽から出たところであるからだ。おそらく入浴剤を知る時は、すでに入浴剤が入った状態で彼は出現したと考えられる。

粉末を湯船に

したがって湯を張った浴槽に入浴剤『BiBiの湯』を投入する。入浴剤は形状で三つの種類に分けられている。そしてその一つには固体の塊、もう一つには粉末状、またもう一つには液体が存在している。この入浴剤は粉末状のものであった。

今回の浴槽はルシウスの言うところの「湯の入った棺」であるユニットバス*1を使うことになった。ルシウスは初めてユニットバスを見た時にローマ帝国内に存在しない未知の素材であると言っているが、それも当然である。今のユニットバスの多くはFRP製であり、浴槽に使われ始めたのはルシウスの時代から1800年後のことであるからだ。

本来であれば入る前にしっかりとかき混ぜ、濃度が均一になったところも撮影しておくのが正しいのであろうが、そうはしなかった。というのもこの写真はiPhoneで撮っており、このまま調子に乗っていると落とす危険性があったからである。愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ。必要以上のリスクは回避するのが懸命なのは言うまでもない。

そして実際に入浴したが、当然入浴中の写真は無い。変わりに10話の温泉シーンの画像を用意した。

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『ラブライブ!』10話より

ちなみにラブライブの湯に浸かったところでこのような光景は見えるはずもなく、目の前には大理石と比較してずいぶんと安っぽい壁が、迫り来るように存在するだけであった。考古学には何よりも想像力が不可欠だ、と言ったイギリスの考古学者がいたが、その力はこのような風呂に入っている時も必要ではないかと思わされる。最も、ルシウスの活躍したローマのテルマエにおいてはこのような無機質な空間ではなく、庶民たちが「われわれ貧乏人のための宮殿」と呼び表すほどに多くのモザイクや大理石の群像といった美術品で飾られていたのだが。

「アウランティウム」

さて、入浴剤の入った風呂に出現したルシウスは、まず湯の色と香りに気がつくであろう。天然の温泉であるならばいざ知らず、水道から注がれたであろう湯が着色され、さらに柑橘系の香りが漂ってくるのであるからだ。勘のいいルシウスのことだ、最初はわからなくとも、すぐに何かが湯に混ぜられていることに気がつき、続いてその原因である入浴剤を見つけたと思われる。

このオレンジ色の粉末はルシウスにとって未知の粉末であり、その原料について気になるに違いない。

まずこの香りから原料を推理するということは容易に想像できる。しかしここで問題になるのはルシウスはオレンジの存在を知っていたのか、ということだ。一般に言うオレンジ=バレンシアオレンジは15世紀末の大航海時代、ポルトガル人の手でアジアからヨーロッパへと伝えられた。そのためルシウスの生きる2世紀にはまだ、地中海世界にオレンジは存在していなかったのである。

しかし、ミカン属とするならば話は違ってくる。まず、レモンと類縁関係にあるシトロンは、かのアレクサンドロス大王の手によってインドから地中海世界へと前3世紀に伝わり、テオプラストスによってその記録が残されている。そして大プリニウスは彼の著書『博物誌』において、当時知られていたシトロンの名前をいくつか記している上、その利用法として香料を挙げている。このシトロンはオレンジと少し離れた関係にあるが、香料に用いられるミカン属の果物としてルシウスは知っていただろう。

さらにタイミング的にはきわどいが、よりオレンジに近い存在としてダイダイの存在が挙げられる。

Citrus aurantium.jpg"Citrus aurantium" by A. Barra - 投稿者自身による作品. Licensed under GFDL via ウィキメディア・コモンズ.

日本語でオレンジ色のことを橙と呼ぶ*2が、ラテン語でも同様にオレンジ色を『aurantium』と呼び*3、それはダイダイの学名である「Citrus aurantium」にも使われている。ダイダイはシトロンの次にヨーロッパへ伝わったとされ、10世紀から12世紀頃に広まっていった。

これだと、ルシウスの時代には伝わっていないではないか、と思われるだろうが、実はこのダイダイはローマで栽培されていなくとも存在は伝わっていた可能性があるのだ。トルコフスキーによると、火山灰に埋まった都市ポンペイで発掘されたタイルにはオレンジ色の実のついた樹木が描かれており、それがこの頃すでにローマまでダイダイが伝わってきている証拠だという。 また、カルタゴにあるヴィラで見つかったタイルは紀元2世紀のものであり、ここにもまたダイダイらしきものが描かれていると言っている。*4

Frammento di pittura di giardino dall'area vesuviana (20-40 dc.).jpg"Frammento di pittura di giardino dall'area vesuviana (20-40 dc.)" by see filename or category - book. Licensed under Public Domain via Wikimedia Commons.

ダイダイの栽培そのものがローマでされていなくとも、当時世界最大の国際都市であったローマのこと、はるか遠いインド東北州部のアッサムから運ばれてきていてもおかしくはない。そうであればルシウスも食べたことがなくともその存在を知っていた可能性は十分にある。

香りに関しては以上でいいとして、着色についてはどうだろうか。まず彼が思い浮かべたのは「雄黄」であった可能性が高い。ヒ素の硫化鉱物である雄黄は顔料として古くから使われており、大プリニウスがその著書で『auri pigmentum』と記していた。英語のオーピメントの語源となるこのラテン語は、金色の塗料を意味している。ルシウスの生きた五賢帝時代、西暦130年代のローマのカラーは白、赤、緑、金の四色*5とされているが、この内「金」に使われていたのが雄黄であった。また、雄黄はその化学組成を見れば予想がつくように、低温熱水脈や温泉地などで見つかるため、温泉地に幾度と足を運んだことのあるルシウスにとって「お風呂」と「オレンジ色」という組み合わせでまず出てくるのが雄黄というわけである。

Orpiment mineral.jpg"Orpiment mineral". Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

しかし、原料が雄黄であるという予想は取り消してもらったほうが、ローマ市民にとって喜ばしいことだ。なぜなら雄黄を含む砒素の硫化物は毒性を持っているからである。雄黄は古代中国で書物『周礼』に五毒の一つとして記載され、その毒性を利用して攻城戦に用いる毒ガスとして使うことや、逆に蛇の毒に対する解毒剤として使われていたほどである。そのようなものを瓦や石像の着色に使うならばいざ知らず、身体を沈めるお風呂に混ぜるというのは正気の沙汰ではない。とはいえ古代ローマ人であるルシウスが雄黄の毒性について理解していたは疑問なところである*6。 古代ローマでは口紅として鉛丹や辰砂が使われていたことからも分かるように、毒性を持っていようとも身体への着色に使われていたのだったから。

そしてルシウスは入浴剤の原料を見極めるためにどうするかと考えてみると、粉末を舐めるでろうという答えに行き着いた。身体に直接触れるものである以上、舐めた程度では特に害はないと考えるのは自然なことである上、ルシウスはすでに温泉を口にしたことがある。

この舐めて判別という行為は一見単純に思えるかもしれないが、わりと理にかなっている。というのも人間にかぎらず、哺乳類の多くは舌が最も敏感な感覚器官であり、また指先と違って舌ならば触覚だけでなく味覚によってその物質が何であるかさえも見極められるからである。人間は自分にとって未知の物質がどのようなものか知りたいとき、舐めてみる習性がある。それは対象がクモであろうと砂であろうと、または白い粉であろうと変わりはない。

そこで実際に私もこの入浴剤を舐めてみたが、当然オレンジ味などではなく、微妙な塩味だけであった。この入浴剤は「無機塩類化合物」と呼ばれる種類であり、成分はその名の通り硫酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウム、それに香料と黄色5号*7となっている。つまりナトリウムが多く含まれているため塩味を感じたというわけであり、このことから舐めて判別するという方法はそれなりに有効であることが分かる。

ここで主な成分が塩(塩類)であることがわかったと同時に、ルシウスはこの粉末がどのような目的のものであるか気がつくことになる。この奇妙な粉末は美容と健康目的で、お風呂に投入するための塩である、と。ずいぶんと勘が良すぎるのではないかと思う人もいるかもしれないが、そうでもない。ルシウスの勘が良いということについては私も否定しない。しかし、当時のローマにおいても塩水=海水を用いる治療法である海洋療法、すなわちタラソテラピーはすでに知られていたのだ。

まず紀元前480年に古代ギリシャの詩人エウリピデスの残した言葉に「海は人間の病気を治療する」があり、ルシウスの600年以上前から塩水の効能は知られていたことがわかる。さらに紀元前420年には医学の開祖ことヒポクラテスが海水入浴を提唱している。そしてルシウスの時代より200年前、かの神君カエサルがポンペイウスを打ち倒した頃、後に「世界三大美女」に数えられるクレオパトラは死海の泥を美容目的に活用し、化粧品工場まで建てさせていたほどであった。

以上のように古代の地中海世界においては健康・美容に塩が有効であることは周知の事実であり、そして何よりルシウス自身がエルサレムの地でその効果を用いて兵士たちを癒していたわけであるので、入浴剤の目的を自力で理解したとして何ら不思議ではないのである。この目的を理解した瞬間、ルシウスは膝から崩れ落ち、平たい顔族の発想にショックを受けたことだろう。自ら海へと出向くのではなく、塩を用いることで自宅に海を創りだしてしまうのだから。

ちなみにこの塩を入浴剤として活用という発想であるが、お風呂文化の乏しい西洋においても「バスソルト」の名で用いられている。ある意味では古代からの伝統ということになるのかも知れない。そして一般的であるがゆえに隠語としても使われており、粉末状の脱法ドラッグ全般を指す言葉となっている。このような薬物に手を出すよりも、本来のバスソルトを入れたお風呂にゆっくりと浸かるほうがストレス解消になると思うのは、私が日本人であるからだろうか。

パッケージ

入浴剤そのものについて理解が深まったところで、続いてパッケージに視点を移すことにする。パッケージなんてどうでもいいではないかと思われるかもしれないが、それは大きな間違いである。この手のキャラクター商品において、そのキャラクター性というものはパッケージに集中していると言っても過言ではない。仮に中身だけ見せられて、この入浴剤は何のキャラクター商品でしょう、と訊かれ、正解を答えられる者はまずいない。おそらく鎧武*8と答える人が多いのではないだろうか。

ゲルマン人

冒頭にパッケージを載せているのだが、ここでキャラクター部分だけを切り抜いたものをもう一度貼っておく。

ユニット「µ's」を3分割したミニユニット「BiBi」*9の3人が描かれているこのイラスト*10、ルシウスからしてみれば脅威以外の何物でもない。平たい顔族の少女とゲルマン人の少女が一つの集団として描かれているからだ。平面であるイラストであるから3人とも顔が平たいのは置いといて、着目すべきは彼女らの髪の色にある。

当時すでに染髪は行われていたとはいえ、髪に色を与え飾り立てるのはカツラを用いるのが主流であり、ブロンドや赤毛のカツラはゲルマニアから調達されたものであるため、このような色の髪を持つ人間はゲルマン人と想定される。エリーチカと真姫の髪がカツラである可能性を否定できなくはないが、人は絵画にしろ像にしろ、その者の髪型がいかに突飛でもまず地毛であると捉える。さらにエリーチカにいたっては目が青く、このような特徴を持つ平たい顔族にルシウスは会ったことが無いため、彼女らをゲルマン人と認識したのであった。

ここである程度知っている人は、エリーチカはロシア人とのクォーターなので、ゲルマン人扱いはおかしい*11ではないかと思うかもしれない。この発想は現代に生きる我々と当時のローマ人の「ゲルマン人」に対する意味合いが異なるところから生まれている。

ローマ人にとってのゲルマン人とは、カエサルの『ガリア戦記』における使われ方は、ドナウ河・ライン河の向こう側 = ゲルマニアに住むガリア人ではない蛮族、でしかなく、特定の人種を指す言葉ではない。そのため似たような特徴を持った人種を見ればゲルマン人と判断したはずであり、事実ルシウスもロシア人のウラジミール*12を見た時、彼をゲルマン人であると判断していた。

ローマ、それもルシウスの生きる2世紀のローマ人にとってゲルマン人とは蛮族の象徴とも言える存在であった。共和制の時代ならばその座はガリア人のものであったが、ユリウス・カエサルが征服してからというもの、ガリアは属州の手本となるような併合状態にあった。それに対し、ゲルマン人はマリウスが軍政改革を行ったきっかけであり、カエサルとアリオウィストゥスとの会談が決裂して以来、ローマにとって対処すべき存在として河の向こう側に居続けた。

そしてローマとゲルマン人の関係はこの時代でも大差なく、ハドリアヌス帝の全国行脚もドミティアヌス帝が建造した対ゲルマン防壁「リメス・ゲルマニクス」の視察から始められたのである。戦場経験のあるルシウスのこと、ゲルマン人の厄介さは十二分に認識していたであろう。

そのような帝国の外の野蛮な民であるゲルマン人と平たい顔族が仲良く描かれているのであるから、ルシウスが驚愕するのも無理は無い。一体何をすれば文明化を拒み続ける蛮族と平和を愛する民族が友好関係を結べるのか、湯の力はこれほどまでのものだったのか、そこにはテルマエを愛するローマ人にすら想像もできない世界が描かれていた。

ムーサ

ルシウスが日本のお風呂文化を学ぶときの常として、現地人との交流がある。日本に来た時に一人であったとしても、必ずそこへは誰かがやってきてルシウスが仕組みや使い方を学ぶ手助けをしてくれるのだった。とすると今回は例外であるとはならず、パッケージに驚愕していたルシウスの下へ説明役がやってくるというのは実に自然なことである。

その都合のいい説明役、おそらくそのお風呂の持ち主であろう人物*13にルシウスは何を尋ねたか。すでに中身の方はおおむね理解している以上、パッケージのほう、つまりはイラストについて質問するであろうと考える。なぜ平たい顔族と一緒にゲルマン人が描かれているのか、と。

当然聞かれたは方はルシウスが何を言っているのかわからないが、何となくこのパッケージに書かれた人物について質問しているのだろう、とは予想はできる。そもそもラブライバーの思考回路で、キャラクターより中身の入浴剤に意識が行くはずは無いのであるのだから、それ以外の発想は出てこない。したがってどのようなキャラクターなのか説明が始まる。彼女たちはµ'sという名のアイドルである、と。

Arts and the Muses by Pierre Puvis de Chavannes.jpg"Arts and the Muses by Pierre Puvis de Chavannes" by ピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ - Pierre Puvis de Chavannes, 1884-1889. Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

平たい顔族とゲルマン人だと思っていた所に、ギリシャ・ローマの女神である「Musa」の名が出たのである。ウェヌスやアモール、メアンドロス柄など平たい顔族がギリシャの影響を受けていることを知っているルシウスが、聞き逃すはずはない。もしかしたら描かれているのが3人であることから、アイドルを「Aoide」と聞き取り、アルクマーンによる3柱の方を連想したかもしれない。建築を学ぶためにギリシャへ行っていたルシウスのこと、その可能性は十分にある。

それにしても平たい顔族の発想力は恐ろしいものがある。すでに神と浴場を結びつけた商売はすでに見ているが、まさか果実と塩によって湯そのものに神性を与えるとは。しかも健康・美容という実用的な効果まで付加されているのだ。なぜそれを思いつかなかったのだと悔やむことになるだろう。

洗礼

ひと通りショックを受けたところで、ルシウスはこれと似たようなこと、神性を持った液体に身を沈めて身体を清める行為、を行う集団がローマで増えつつあることを思い出した。ハドリアヌス帝に反旗を翻したユダヤ人から分かれた存在、すなわちキリスト教徒のことを。彼らはこのような行為を洗礼と呼んでいた。

Kreshenie.jpg"Kreshenie". Licensed under パブリック・ドメイン via ウィキメディア・コモンズ.

キリスト教に限らず、液体に身を沈めることで新たな存在になるというのは、地中海世界周辺において珍しいことではない。アキレスしかり、クセルクセス1世しかり*14、この世界の歴史・神話を知っている者にとってはすぐに例が思い浮かぶ。そして何よりイエス・キリスト自身が洗礼を受けていることからも分かるように、キリスト教以前にも洗礼の文化は存在していたのである。

したがってルシウスは一つの結論に達する。この者はムーサを崇めており、この粉末を混ぜた風呂に浸かるというのは宗教的行為なのだということに。そう、この入浴剤はラブライバーが洗礼を行うためのものであり、知らないうちに私もラブライブの洗礼を受けていたのであった。

『ラブライブ!(第2期) 』1話より

ひとまずの結び

商品情報によれば、この入浴剤は2014年11月27日に発売されている。だが、1ヶ月経つというのにろくな感想が見つからない。しょうがないので参考にと、他のラブライブのキャラグッズの記事を見てみたが、それだけでは何ともしっくりこない。しっくりきはじめたのは、ルシウスの目線を通して見始めてからだった。

なぜ一九〇〇年も昔に生きた(という設定の)人間の視点のほうが、私にはしっくりくるのか。やはり彼がラブライブ以前に生きたのだから当たり前にしても、私もまたラブライブ信者ではないということである。ラブライバーでなければ、ラブライブの倫理や価値観から自由でいられる。

私は常々キャラグッズとは何なのか、と考えてきた。そして、この疑問に対して、それを解くヒントをはじめて与えてくれたのが、ネットの考察ではなく、一九〇〇年前も昔に生きたローマ人の言ったことであった。

何はともあれ、今年はローマ人の物語にハマった年であったと報告して終わりにする。

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*1:ユニットバスと言うと「風呂とトイレが一緒の物件」と誤用している人が時たまいる。正しくは天井・浴槽・壁・床等を予め成型しておき、現場では組み立てるだけの浴室のことを指す。

*2:おそらく細かい人は「オレンジ色と橙は別物だ」というかもしれない。しかしJIS慣用色名において規定されている橙色とオレンジ色は、同じマンセル値を示すため問題ない。

*3:“同様に”と書いたが、日本語とラテン語では順序が逆である。日本語の場合、ダイダイ(果物)の特性として、収穫しないと果実はそのまま残り続ける。この特徴から「代々」と呼ばれ、それが色の名に使われたのだ。一方ラテン語の方は金を「aurum」と呼ぶことから分かるように果物の方が後である。

*4:Citrus Genetics, Breeding And Biotechnology より。この部分にかぎらず、オレンジ関係はこの本が一番役に立った。

*5:古代ローマ人の24時間 ---よみがえる帝都ローマの民衆生活 (河出文庫) より。他にも“かつら”などの話でも使わせてもらった。

*6:雄黄はその金色の輝きから錬金術の原料としても使われていた。錬金術というと、よく水銀による中毒死が有名であるが、一緒に雄黄も摂取している。それどころかインド錬金術では回春をもたらすものとして雄黄と水銀を混ぜあわせたケーキまで存在していたという。その程度の知識ならば風呂に使うと考えてもおかしくない。

*7:EU圏ではこれが含まれる食品には「子供の行動や注意に悪影響を及ぼすかもしれない」というラベル表示が義務付けられているが、発がん性は確認されていない。

*8:鎧武の薬用入浴剤はフルーツをモチーフにしているだけあって、実際に果物成分が入っている。まずウンシュウミカン・柚子・レモン末が入っており、さらにエキスとしてグレープフルーツ・リンゴ・オレンジ・レモン・ライムが含まれている。ちなみにウィザードやドライブの入浴剤も同様の成分である。

*9:もともと3つの年齢から集められた集団が、年齢関係なしの部隊に再編させられる。これは元々レギオがハスターティウス、プリンキペース、トリアーリウスと年齢別に分けられていたのが、マリウスの軍制改革によって等級の無い戦術単位、コホルスに分けられたことを思い起こさせる。

*10:今さら説明するまでもないだろうが、このイラストは2期OP「それは僕たちの奇跡 」からの流用である。

*11:ロシア人の多数派はスラブ人である。

*12:フェンシングの実力はロシア大会でウラジオストック代表を務めた事があるほどである。

*13:こんな入浴剤を使おうという奴だ、ラブライバーであることは言うまでもない。

*14:300: RISE OF AN EMPIRE より。フィクションを根拠にするなという声は聞き飽きた。そもそもルシウスが実在していないというのに。