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ヒゲが流される中、女エルフはオークを襲う / “ホビット 竜に奪われた王国”

見た。ネタバレあり。

ホビット 竜に奪われた王国 [DVD]

「ホビット2」というより「ロード・オブ・ザ・リング エピソード2」というべき映画を早速見てきた。原作を読んではいるが、映画としての前情報は特に仕入れずに見た。やっぱり面白いなこれ。特にスマウグ登場してからはテンション上がりっぱなし。はなれ山の災い魔っぷりには素晴らしい物がある。それに対してドワーフたちが巨大ロボで立ち向かうところは叫びそうになった。そして皆と同じ感想の繰り返しにはなってしまうけれど、スマウグがラストで溶鉱炉に沈んでいくシーンは涙無しには見られなかった。

で、見ていて気になったことがある。コイツ誰。

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| tauriel the hobbit the desolation of smaug movies | Wallpapo.Comより

調べたら映画オリジナルキャラだった。

タウリエル(Tauriel)は、J・R・R・トールキンの小説『ホビットの冒険』を原作としたピーター・ジャクソンの映画シリーズに登場する架空のキャラクターである。キャラクターは原作小説には登場せず、映画化の際にジャクソンとフラン・ウォルシュによって創造され、2013年公開の三部作の2作目『竜に奪われた王国』で初登場する。
タウリエル - Wikipedia

そういうことだったのか。俺の記憶は間違っていなかった。

この手のオリジナルキャラというのは扱いが難しい。特に原理主義者が多く、誰が訳したかですら揉める原因になる指輪物語シリーズにおいてこんなのを作った上に物語にガッツリと絡ませてくるとは思い切ったことをしたものだ。タウリエルの存在については賛否両論あると思うが、俺はタウリエルこそ映画の『ホビット』に必須のキャラだと思う。

中つ国の女エルフ

オリジナルキャラであるが、とても中つ国らしい女エルフである。

日本におけるエルフの肉体的な戦闘能力は高くない。

ゲームや漫画でよく見るエルフの特徴としては「魔法と弓をよく使うが力は人間に比べて弱く、森を愛し金属製の道具を嫌う」等の性質が挙げられる。
エルフとは (エルフとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

さらにこれが女エルフとなると扱いは女騎士と同じである。ようするに薄い本要員だ。そして相手は多くの場合オークとなっている。1対1ならともかく複数のオークに接近戦で勝てるわけがないというのが女エルフだ。

しかしタウリエルは中つ国の女エルフだ。上のニコニコ大百科にも書いてあるように、ここのエルフはチート的存在である。ケガ以外では死なず*1、老いることはない。さらに肉体は強靭で感覚は鋭く、ルックスもイケメンだ。その上頭も良く、手先は器用。はっきりいって人間の上位互換だ。そしてこのスペックであるがゆえに圧倒的な戦闘能力を持っている。

タウリエルも例外ではなくやたらと強い。何体のオークに囲まれようと次々と始末していく。それどころか逃げるオークを追撃する始末。この2作目においてオークを倒した数はドワーフ全員が倒したのより、タウリエルとレゴラス二人の合計のほうが多いであろう。多分あのエルフたちはオークを倒すことについてスポーツ程度にしか思っていないな。

三部作という無茶ぶり

元々この作品は1冊に収まる程度の長さしか無い。

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それを三部作*2にするのだからどう考えても内容が足りない。戦闘シーンや宴会の描写を引き伸ばすだけでは無理がある。何かしらの追加エピソードが必要だ。そのため1作目では『ロード・オブ・ザ・リング』で使われなかった「追補編」からも話を引っ張ってきている*3

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なので今回も何かしら追加しているだろうなと予想はしていた。それがまさか完全な新キャラによるエピソードの追加だとは思いもよらなかったが。しかしこれは当然の方法だと思う。追加エピソードの必要があるのであれば、新キャラを入れるのが手っ取り早い。既存のキャラだけで話を追加しようとすると、まわり道しているようになりやすいためだ。そこを新キャラならば新しく会話やイベントを起こさせるだけで話になる。

新キャラ投入の問題の一つとして、話の整合性がある。『ホビット』の場合はその未来として『ロード・オブ・ザ・リング』がすでにある。そのため新しく投入するにしても、後で登場しなくても問題が内容にしなければならない。そこでタウリエルの場合だが、キーリとフラグを立てたのは正解だ。どうせあいつは「五軍の戦」で死ぬ。なんならタウリエルもそこで殺してしまえばいい。そうすれば60年後にいなくても問題がない。

映画は映像作品なので

タウリエル投入を肯定するのにとてもいい言葉がある。

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メディアの違いを理解せよ / 「生徒会の一存 第1話」より

原作の「ホビットの冒険」はとてもむさ苦しい作品である。なにせ主人公が小人のオッサンで、仲間がヒゲのオッサンが13人とヒゲのジジイだ。なんとヒゲ率が90%超のヒゲ作品だ。だが読んでいて特に気にはならない。なぜならコレは小説であり、ヒゲ面を延々と見せつけられるわけではないからだ。

しかし「ホビット 竜に奪われた王国」は映画である。視覚に直接訴えてくる。もしこれを原作に忠実に再現したらどうなるか。ヒゲのオッサンが映り続けるマニアックな映画となり、一般層からの人気は得られない。そのため少しでも女性人気を得ようとピーター・ジャクソンは思い切った方法をとった。一部ドワーフの超絶イケメン化である。特にキーリに至っては使う武器が弓と短剣ということもあり、ほとんど髭の濃いエルフとなっている。だがそれでも集まるとむさ苦しい。

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そこでエルフである。幸い原作にも闇の森のエルフが登場する。いくら品のない荒っぽい森のエルフと言っても、ドワーフやオークに比べれば清涼剤として機能する。そして圧倒的に男性率が高いこの作品に女性を登場させるならエルフに限る。これが他の作品なら13人のドワーフのうち何人かを女性にするという手もあるが、中つ国の女ドワーフはヒゲを生やしているので意味が無い。

また自由に動かせる女性を登場させることによりラブストーリーも追加することに成功した。とりあえず一般向けの映画には恋愛要素を入れるものと決まっている。追加ストーリーは必要なこの作品で省く理由は無い。

まとめ

そういうわけでタウリエルは指輪物語らしくあるとともに、映画のためのキャラである。ストーリーのためにも見た目のためにもエルフ成分を増やすのは当然の流れであったのだ。そしてその結果、メインキャラが揃うポスターはこうなった。

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扱いは顔で決まる。

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*1:生きるのに飽きても死ぬが

*2:元々は二部作の予定だったらしい

*3:オーケンシールドの由来がわかるのは良かった