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本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

【書評】こいつは生ける燎原の火だ / “ジェフ・ベゾス 果てなき野望-アマゾンを創った無敵の奇才経営者”

本の紹介

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

ジェフ・ベゾス 果てなき野望

密林の奥深くから世界征服を狙っていそうな男の本。

photo by DonkeyHotey

Kindle Fire買っちゃったら読むしか無い。

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Kindle Fireについての英語ページをgoogle翻訳にかけるとこういう単語が出てくる。
"Kindleの火災"
もちろんこれは"Fire"の誤訳なのだが、これは実にそれっぽいなと思ってしまった。というのもamazonのCEOジェフ・ベゾスはまるで火のような男だからだ。それも瞬く間に燃え広がり全てを焼きつくす「燎原の火」だ。この本はそんな彼とamazonについて書かれた半公式の伝記である。

併合されるか焦土と化すか

えげつない。この本を読んでいて何度も思ったのがこれだ。amazon=ベゾスの戦略は本当にえげつない。他の企業は徹底的に締め上げる。なにせ「交渉」の成功をamazonはこう定義している。

片方が常に勝つようにするのが交渉だ

完全に「どちらかが勝ち、どちらかが倒れる」の世界だ。そんなamazonが競争相手を併合するさまは読んでいてかわいそうになる。まるで帝国による侵略だ。例えばザッポス。紹介される時に必ずと言っていいほどamazonの名が出てくる靴とアパレルの販売会社だ。

顧客が熱狂するネット靴店 ザッポス伝説―アマゾンを震撼させたサービスはいかに生まれたか

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ベゾスはザッポスに対しamazonの子会社になることを求めたが、ザッポスはこれを拒否。そこで靴とバッグ専門のサイト「エンドレス」を新たに立ち上げ、ザッポスを仕留めにかかる。送料無料は当然として、エンドレスで購入すると5ドルのキャッシュバックという完全に赤字前提のサービスを開始。ザッポスもそれに対抗せざるを得ないため、利益率が低下していく。そして我慢比べの結果、金融危機の影響もあってザッポスはamazonの子会社となる。

このような例は他にもある。オムツを販売するダイアパーズ・ドット・コムを買収するときも同様の手段を使っている。amazonに会社を売ることを拒まれるとアマゾン・マムというサービスを立ち上げる。3ヶ月で1億ドル以上の赤字を紙オムツだけで垂れ流すほどの価格攻勢が始まり、ついには「子会社にならなければ紙オムツの値段をタダにまで下げかねない」と脅して子会社化に成功する。俺はベゾスについて「燎原の火」と書いたが、この買収について語った関係者の言葉から連想したものだ。

「勝利者をはっきりさせるためなら、ためらわずに辺り一帯を焼き払う人々なのです」

猛烈に働くもの

協力・敵対問わず他社に厳しいベゾスだが、社員に対してもめちゃくちゃ厳しい。高い能力を求められるのは当然として、馬車馬のごとく働かされることになる。日本でもブラック企業がどうとか言われるが、amazonも負けてはいない。社是が「早くでかくなる」に変わった頃は、土日の休みなしは当たり前。当時を振り返る人はこう語る。

「できないと言う人はいなかったけど、やりたいと考える人もいませんでした」
「死線と死の行進の世界でしたね」

採用の際にもワークライフバランスを重視すると口を滑らせた候補者は、それだけで落としたというぐらいだ。ここまで徹底して働かされると聞くと、amazonと敵対するのも嫌だが入社するのも無理だなと思ってしまう。

だが俺にとってこの心配は杞憂だ。amazonは一流の人間しか採るつもりがないらしい。一人採用したら次はそいつを基準にもっと優れた人間を採用すると語っている。このへんはスティーブ・ジョブズが「A級の人材だけでチームを作る」と言っていたのに似ている。この手のセリフを凡人が言うと何様のつもりだと言われるが、成功者が言えば納得で済まされる。

しかしそんな優秀な人達も多くはベゾスに焼かれて去っていくようだ。要求は厳しいわりに薄給。さらに期待に応えられなければボロクソにけなされる。アマゾンの元社員らは、心に傷を負い、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に悩まされたりもするとまで書かれているほどだ。そして期待に応えられる能力があってもやはりきつい。

「有能でなければジェフにズタボロにされ、捨てられます。有能なら、もうダメというところまで働かされます」

全てはベゾス自身が猛烈に働くからのことである。

客は食物連鎖の頂点にいる

なんかもうベゾスをめちゃくちゃ酷い人間のように書き連ねてきたが、俺にとってはいい人間と言える。なぜならベゾスは顧客を第一に考えているからだ。

amazonの中核をなす価値としてベゾスは次の5つを挙げている。

  • 顧客最優先
  • 倹約
  • 行動重視
  • オーナーシップ
  • 高い採用基準

まず「顧客最優先」である。日本の企業でも多くが「お客様第一」と言っているが、amazonはこれを徹底している。顧客からダイレクトメールで1件の苦情が来た時、ベゾスは顧客が不快になるようなメールなら止めろと指示した。この方が売上が上がると反論する部下に対してベゾスは「顧客の信頼を損ねるのでは、いくら売上があがっても意味はない」と宣言する。一度買い物しただけでスパムのごとく送りつけてくる会社に教えてあげたい話だ。

結局上で書いたような他社と他者に厳しいのも、全ては顧客のためだからということだ。そのおかげで俺は家に居ながらにして安く買い物ができるし、読みたい本を一瞬で手にすることが出来るようになったわけだ。俺がこの本を読むために使ったKindle Fire HDXが、性能に対して値段がやたらと安いのもベゾスの方針ゆえというわけだ。世界でもトップクラスに優秀な人々が俺のためにボロボロになりながら働いていると考えると、なかなか感慨深いものがある。

しかし今回初めてKindleで読んだ本を記事にしたけどすごい便利だなコレ。気になったところをマーキングしておけば探すの楽だし、PCからも見れるので引用がコピペで済む。本文を検索できるのもかなりポイント高い。これが顧客最優先のなせる技か。だけど一つ文句もある。本に独自規格なんか使うな。DRMの無いPDFにしろよ。mp3はDRMフリーにしているのだし。そのへん顧客最優先的にはどうなんですかね。出版社が抵抗しているならお得意の締め上げで……