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友人との記憶を一週間ごとに失くしてしまう少女のためのライフハック

『一週間フレンズ。』4話見た。そして確信した。知識が無いのは罪であると。

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バカは走るハメになる / 『一週間フレンズ。』4話より

「文章のないところに現象はない」
クリフォード・ストールはこう言っていたが、『一週間フレンズ。』のヒロイン藤宮香織の場合はこう言えるだろう。
「文章のないところに友情はない」
そんな状況にある彼女に対してこの物語の主人公、長谷の提案はあまりにも杜撰すぎる。だから俺が代わりに考えた。

前提

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この目つき / 『一週間フレンズ。』4話より

天使のような笑顔と養豚場の豚を見るような目を併せ持って人気を博す、今期アニメのヒロイン藤宮香織。そんな彼女は記憶に関して以下の様な問題を抱えている。

「1週間で友達との記憶を失くしてしまう」という健忘症のため、あまり人付き合いをしたがらない。
友人との記憶は週末にリセットされ、月曜の登校時にはそれがまっさらな状態になっている。なお親族との記憶は失くしていない。
一週間フレンズ。 - Wikipedia

そんな彼女と仲良くなりたい主人公の長谷は日記を書くことを提案する。そうすれば記憶がリセットされても読めば何とかなるというのだ。

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知らぬが仏の主人公 / 『一週間フレンズ。』4話より

この物語はそうやって日記をキーアイテムとして進む、人間関係を描いた作品である。

これを見た時俺は思った。
「甘い、甘すぎる!」
二人の会話が、ではなく主人公の発想がである。大事な記録を紙のノートだけに任せるとかありえない。絶対何か問題が起きるだろと思っていたらやっぱり起きた。4話で藤宮さんは日記のノートを紛失してしまい、更に日記を付けていた事自体も忘れてしまったのだ。それ見たことか。そして長谷は日記を見つけるため学校を休み、街中を走り回るハメになる。

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濡れたらもうダメだろ / 『一週間フレンズ。』4話より

これは起きるべくして起きた事態だと言えるだろう。では何がまずかったのだろうか。

思い出すこと

まず「思い出す」ためにはどのような方法をとるべきかを考える。そうすれば紙の日記に頼る問題点が明らかになるだろう。

シグナルとメッセージ

以前紹介した中に『誰のためのデザイン?』という本がある。

【書評】間違っていたのは俺じゃない、設計のほうだ / “誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論” - 本しゃぶり【書評】間違っていたのは俺じゃない、設計のほうだ / “誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論” - 本しゃぶり

誰のためのデザイン?―認知科学者のデザイン原論 (新曜社認知科学選書)作者:ドナルド・A.ノーマン,D.A.ノーマン,野島久雄出版社/メーカー:新曜社発売日:1...

この中で「思い出させるもの」には2つの側面があると書かれている。1つ目は「シグナル」、何かを思い出さなくてはならないことがあると知ること。アラームの通知音などがそれに当たる。2つ目は「メッセージ」、いったい何を思い出すのかということ。メモなどがそれに当たる。

つまり思い出すためには、「シグナル」で思い出すタイミングを知り、「メッセージ」によってその内容を知ることが必要となる。このどちらかが欠けていると、思い出すべき時に気が付かない、肝心の内容を忘れてしまうということになる。忘れてはいけないことがあるならば、「シグナル」と「メッセージ」の両方を用意しなくてはならない。

『一週間フレンズ。』の場合

藤宮さんのとった方法は以下である。

  • シグナル:張り紙
  • メッセージ:日記

ドアに貼った張り紙を見て日記の存在を知り、日記を見て先週以前のことを知るという方法だ。しかし4話では日記を失くし、さらにうっかり張り紙を剥がしてしまった。これによって日記の存在そのものも忘却の彼方に消えたのだ。つまり「シグナル」と「メッセージ」を同時に失くしたのである。

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OPの時点でもうダメそう / 『一週間フレンズ。』OPより

せめてこれ以外に「シグナル」か「メッセージ」を残しておけばまだマシだっただろう。長谷は自分自身が「シグナル」と「メッセージ」になろうとしていたが、それは無意味というものだ。知らない人の言うことを素直に聞くわけがない。

ノートの問題点

大事な日記を紙のノートに書いていたが、これは間違いだ。特に問題となる点を3つ挙げる。

1.冗長性のなさ

情報をバックアップ無しに保管しておくことの恐ろしさは今更言うまでもないだろう。描写を見る限り日記をコピーしているシーンは一切ない。つまり万が一日記をなくした場合、思い出はもう二度と戻ってこないということだ。事実4話では日記を紛失しかけたし、3話でも日記を教室に忘れるという失態を犯している。藤宮さんにはこれに懲りてバックアップを用意する習慣を持ってもらいたい。

これは紙という媒体の特性によるものだ。紙に書いた内容のコピーは手間がかかる。試験前に他人からノートを借りたことのある人ならわかるだろう。時間はかかるしコストもかかる。さらにそれを保管しておく場所も必要だ。これは日記が増えれば増えるほど問題として重くのしかかるだろう。

2.情報の欠如

ノートに手書きで記録する場合これは自動化されず、自ら手を動かさなくてはいけない。これはコストの掛かる作業だ。そのためどうしても記録できる内容は限られ、情報は欠落する。その時はどうでもいいと思っていたことが後になって必要になったりもする。そういう時にノートにある情報量の少なさを恨むことになるだろう。

また、紙のノートに残せるのは基本的に文字情報だけというのもいただけない。ノートに写真を貼ったりイラストを書いたりして視覚的な情報も記録している人もいるだろう。だがそれもスペースの問題から量は限られるし、作業量もさらに増えることになる。何か記念的なことについて記すのであればそれもいいが、藤宮さんのように日常的に行うのには向いていない。

3.積み重なる文字

長谷は数学が苦手らしいが、そのために藤宮さんも苦しむハメになる。先のことが見えていない。日記を読むことで情報を取り戻そうとしたらどうなるか考えてみると将来がヤバい。

重要なのは、日が経つにつれて読む日記の量が増えていくということだ。最初の週は7日分だけで済むが、1か月後には30日分の日記を読む必要が出てくる。記憶がリセットされるため、最初から読み直さなくてはいけないのだ。というわけで算出を始める。

藤宮さんの日記はどれくらいの分量なのか。アニメ公式サイトでは藤宮さんの日記を読むことが出来るのでこれを参考にする。
『一週間フレンズ。』TVアニメ公式サイト
最新の日記の文字数を数えてみると、325文字(句読点含む)あった。これは内容的に1日分であると考えられる。そこで325文字を1日分として扱うことにする。

次に読むスピードを決める。日本人の平均読書スピードは600文字/分*1らしいのでこれをそのまま使う。

では日記を読むのにどれくらい時間がかかるのか。その結果がこれだ。

日数 文字数 読むのに必要な時間
1日 325 32.5秒
1週間 2,275 3.8分
1ヶ月 9,750 16.3分
1年 118,625 197.7分 = 3.3時間
51年 6,049,875 10083.1分 = 168時間 = 7日

なんと51年後には過去の日記を不眠不休で読み返すだけで1周間が過ぎ、記憶がリセットされてしまう。これでは何のために日記を書いているのかわからない。

日記は持っているだけではなく、読まないとその中身を知ることはできない。おそらく長谷は日記を手にするとこんな感じになると思っているのだろう。

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DEATH NOTE (7) (ジャンプ・コミックス) より

残念ながら普通のノートにそんな効果はない。

さらに問題は文字数だけではない。物理的なノートで記録しようとすると、ノートそのものも数を増していく。これはかなり面倒な話だ。

以前この記事で書いたように俺も日記を書いている。

【書評】ガッチャマン見てノートを手に取る / “あなたを天才にするスマートノート” - 本しゃぶり【書評】ガッチャマン見てノートを手に取る / “あなたを天才にするスマートノート” - 本しゃぶり

あなたを天才にするスマートノート作者:岡田斗司夫出版社/メーカー:文藝春秋発売日:2011/02/25メディア:単行本(ソフトカバー)購入: 23人クリック: ...

もし藤宮さんが俺のように日記を1日1見開きで書いたらどうなるか。上の記事で紹介したように、2年ちょっとでこうなる。

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忙しい月曜の朝に読み返す気など起こらないだろう。作中で卵焼きに入れる砂糖の量をメモっていたが、こうなってはどこに書いてあるかわからない。見つからない情報は無いのと同じ、量だけあっても無意味なのだ。

これを使え

では藤宮さんに何を薦めるべきなのか。俺が厳選したアイテム・サービスを5つ紹介する。

1.iPhone

[asin:B00GBYGS28:detail] Apple - iPhone 5s

言わずと知れたiPhoneである。持ち運びが簡単で、文字・写真・音声・現在位置と、あらゆるものを単体で記録できる。これ以上の物があるだろうか。他のスマートフォンでも基本的に問題は無いが、後述する他のものと連携をしやすいため、iPhoneを選択した。

上で紹介した『誰のためのデザイン?』において、「シグナル」と「メッセージ」を兼ね備えた理想のリマインダー装置が語られている。まとめるとこんな感じだ。

  • ポータブルコンピュータ
  • ポケットサイズ
  • フルキーボード
  • 強力なグラフィックス
  • 電話機能

1990年当時には不可能だったが、今ならできる。そう、iPhoneならね。

2.Evernote

Evernote

Evernote

  • Evernote
  • 仕事効率化
  • 無料
Evernote | Evernote、Skitch、その他のファミリーアプリですべてを記憶。
定番のウェブサービスである。記録は全てこれに任せよう。

Evernoteを使うことで紙の日記の問題点はほとんど解決する。まず4話で起きた「日記を失くす」「日記の存在を忘れる」の2点が発生しない。Evernoteはクラウド型なので特定の端末に依存しない。仮にメインのデバイスを紛失したとしても他の端末から情報にアクセスできる。代わりを用意するだけでいいのだ。さらにEvernoteにはリマインダー機能が搭載されている。
Evernote リマインダー機能が Mac・iOS・Web 版に登場 | Evernote日本語版ブログ
これによって特に重要なノートを忘れずに読むことが出来る。Evernoteは「メッセージ」だけではなく「シグナル」の機能までも付いているのだ。

Evernoteの優秀な点として検索性の高さがあげられる。テキストで記録した内容はもちろん、画像データからでもOCRによって文字を検索することが出来る。上で書いたように日記を続けていくとその量が増え、求める情報がどこにあるかわからなくなる。その点Evernoteならいつでもどこでも検索するだけでいい。「卵焼き」で検索すれば入れる砂糖が18gであることもすぐにわかるだろう。

また、Evernoteには共有機能もついている。
Evernoteでコラボレーションや情報公開―ノートブックの共有・公開 | Evernote日本語版ブログ
記録や編集の作業が大変ならば人にやらせてしまえばいい。長谷なら喜んで藤宮さんのために働くだろう。

自分の脳が信頼出来ないなら第2の脳に任せてしまえばいい。藤宮さんにはぜひプレミアムユーザーになってもらいたい。iPhoneをドコモで契約すれば1年間無料ですむ。
キャンペーン・イベント情報 : docomo×EVERNOTEプレミアムキャンペーン | NTTドコモ

3.airpenPocket++


エアペンポケットプラス|airpenpocket++ |製品特長
入力方法はアナログでということで、このペンをチョイスした。

iPhone、Evernoteと紹介したが、問題点が一つある。それは藤宮さんがキーボードやフリック入力が遅そう*2というものだ。俺の場合、単に文字で記録するだけなら間違いなくキーボードで入力したいと考えるが、藤宮さんはまず紙のノートとペンを選んだ。そんな人間にいきなりiPhoneで入力しろと言ってもそれはムリだろう。そこは尊重してやるべきだ。

そんな彼女に最適なのがこのairpenPocket++である。これを使えば紙に書いた文章をiPhoneはもちろん、Evernoteにも送ることができる。紙のノートに日記を書く行為を変えずに、内容をデジタル化できるこれは必須といえるだろう。

4.WristableGPS

WristableGPS | 製品情報 | エプソン

記録するならウェアラブルデバイスだろということで。

思い出を記録しようと思った場合、何がどれほど楽しかったのかわかるように記録したい。文章で「楽しかった」と書いてあっても、それがどれくらい楽しかったのかは1週間後には忘れてしまう。そこで客観的にわかる数値として心拍数の記録を提案する。そうすれば過去の自分がいつどこで興奮したのか後からでも手に取るようにわかる。

そこでこのWristableGPSだ。心拍数を計測でき、iPhoneとの連携も可能。バッテリーはGPS連続稼働でも30時間持つため、1日中でも全く問題ない。5気圧防水がついているので、料理するときもそのままでOKだ。藤宮さんは見たところ腕時計を着けていないので、ウェアラブルデバイスとしてちょうどいいだろう。

また位置情報が正確にわかるという点も見逃せない。藤宮さんは友達と関係のあることは全て忘れてしまう。そのため4話では先週自分がどこに行ったか覚えておらず、失くした日記を見つけられたのは幸運によるものであった。そこで自分の位置を記録しておく必要がある。WristableGPSにはスライドセンサーが搭載されているため、GPS信号が入らないトンネル内でも高い精度で記録をしてくれる。これで何かを紛失しても長谷が無駄に走り回ることはない。

5.Narrative Clip

Narrative Clip – a wearable, automatic lifelogging cameraNarrative Clip – a wearable, automatic lifelogging camera

30秒ごとに自動的に撮影を行って日常を記録してくれるライフログカメラ「Narrative Clip」を使ってみました - GIGAZINE

百聞は一見にしかず。できるだけ写真で記録を残しておくべきだ。

文字で記録できることには限りがある。だからこそ人は記念撮影をするのだ。しかし藤宮さんの場合全てを残しておかなくてはならない。理想を言えば佐木ぐらいの気合で記録を残すべきだが、それは無茶ぶりというものだろう。

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こいつのことな / 金田一少年の事件簿 (12) (講談社コミックス (2125巻))より

そんな彼女にぴったりなのがNarrative Clipである。これは装着しておくだけで、30秒に1回で自動撮影してくれるのだ。これなら着けていてもそれほど目立たずにすみ、全てを写真に収めることが出来る。昼休みの写真に毎回長谷が写っていれば彼が友達であると認識できるだろう。

このNarrative Clipがいいところは自動という点に尽きる。個人の日記だけでなく、考古学でも言えることだが、日常的にやっていることは記録として残っていないことが多い。普通記録する時というものは特別なことが起きた時だけである。日常的なことは当たり前すぎて、わざわざ残すのは手間なだけだからだ。しかし後から振り返ってみるとその「日常的なこと」はわからなくなっていることが多い。当時としては当たり前でも今は異なるからだ。そこで記録の自動化である。これなら意識しなくても記録を撮り続けられる。

まとめ

というわけで紙の日記に頼る問題点が明らかにし、それに替わる方法を提案した。藤宮さんの症状は非常に厄介なシロモノではあるが、現在のテクノロジーを用いればかなり問題を緩和できるのだ。長谷はもっと情報に触れたほうがいいだろう。全ては藤宮さんのためだ。

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守りたいこの笑顔 / 『一週間フレンズ。』4話より

ただアレだな。この手の作品全般に言えることだが、主人公が冴えていると問題が起きず、ネタが無くなるな。出木杉が劇場版からハブられるのもうなずける。

2015年版