本しゃぶり

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新生活に向けて読みたい資産形成の本3冊

資産形成は早くから始めた方が楽である。
しかしどこから手を付ければいいか分からない人は多い。

そんな人はまずこの3冊を読もう。

意識が高い季節

春は一年で最も意識が高い季節である。日本では年度の切り替わり時期ということもあり、何かを始めるのに都合がいい。実際そう考えている人は多いようだ。Amazonによる2022年の新生活に関する意識調査によると、75%の人が「この春、心機一転、新しく何かをやってみたい」と回答している*1

その新しく始めることの一つに「資産形成」がある。女性限定になるが、日本生活協同組合連合会による調査によると、「この春からの新生活でがんばりたいこと」の1位は2年連続で「貯金」であった*2。また、これは個人的な感覚になるが、職場で家計見直し資産運用の話題を耳にすることが増えた。やはり新年度が始まるにあたって、お金について考え直したくなるのだろう。

ではどうやってお金を貯め、増やしていけばいいのか。そこで俺が資産形成で参考にしている本を紹介する。これらの内容を理解し実践できれば、及第点は取れるだろう。

『私の財産告白』

私の財産告白

私の財産告白

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まずは基本方針の本として、『私の財産告白』を挙げる。本書は俺の中でFIRE*3を目指す人が最初に読むべき本だ。

本書がおすすめなのは、計画的堅実的な主張が展開されることだ。著者の本多静六は林学博士でありながら、投資で巨万の富を築き上げた。本書はそんな彼がどのように財産を築き、活用したかを自ら記した本である。

全ては本多が25歳で東京大学の農学部助教授となった時、人生計画を立てたところから始まる。

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Unknown authorUnknown author, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

この時点の本多は裕福ではない。ドイツ帰りの本多が東大で助教授となったということで親類縁者が集まり、いきなり8人を扶養することになった。実家も貧乏で助けてはもらえない。そんな状況からのスタートであった。

計画を実現するために本多は、給与の25%臨時収入の全額を貯金に回す。さらに毎日1ページ以上の執筆を自らに義務付け、多くの著作を出すことで副収入も確保した。これによって貯めた資金を元手に株式と山林に投資を行い、さらに増やす。結果、40歳になった時には本業の給与よりも利子や配当などからの収入が多くなっていたというから、徹底した勤倹貯蓄投資の力を思い知らされる。

本多静六がここまで徹底して実行できたのは、ドイツのミュンヘン大学での師、ルーヨ・ブレンターノの影響が大きい*4。ブレンターノは本多が帰国する際に、「財産を作らなければダメだ」と伝えた。そうしなければ常に金のために自由を制せられ心にもない屈従を強いられることになる、と。

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写真:Bundesarchiv, Bild 146-1971-021-04 CC-BY-SA 3.0, CC BY-SA 3.0 DE, via Wikimedia Commons / 文:『私の財産告白』

まさに《Financial Independence / 経済的独立》のススメである。さらにブレンターノは本多に対し、「財産を作ることの根幹は勤倹貯蓄だが、その貯金がある程度の額に達したら、他の有利な事業に投資するがよい」とも伝えた。帰国した本多はこの教えを愚直に実行し、経済的独立を果たしたのである*5

本書には一般的な人が財産を作るための普遍的な教えが記されている。これから資産形成に励もうとする人はまず本書を読み、資産形成の本質を学ぶといいだろう。

ただ本書に一つ欠点があるとしたら、それは内容が古いということである。本多静六が生まれたのは慶応2年(西暦1866年)、手鬼が鱗滝に捕まった頃だ。本書には銀行の金利は4%*6株式は8%の利回りが期待できたと書いてある。また、本多は山林投資を成功させることによって、莫大な財産を築き上げた。現代の日本でこの方法は無理だろう。銀行の金利はゴミだし、山林はまず失敗する。株式はまだ可能性はあるが、上がる銘柄を見極めるのは素人には難しい。

そこで現代日本における「一般向けのお金の増やし方」を知るために次の本がある。

『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』

本書は「貯金はしているが、運用方法が分からない」という日本人に特化した本である。ゆえに「そもそも貯金なんて無いが」という人*7や、逆に「NISAやiDeCoの説明をいまさら聞く必要はない」という人*8は対象外である。

財産は現金でどれくらい持っておけばいいか。NISAやiDeCoはどんな仕組みでメリットは何なのか。賃貸と持ち家はどちらがいいのか。こういった疑問に本書は答えてくれる。この手の入門書の良いところは、資産運用の基本を概ね網羅していることだ。一つ一つの内容はネットを使えば無料で知ることができるが、どこから手を付けていいのか分からないだろうし、ネットでどうにかできるなら既にやっているはずだ。自分で0から調べるのが大変な人は、まず本書を読んで基本的な知識を手に入れ、とりあえず試してみるのが良いだろう。

しかし本書にも問題が二つある。一つは今だと「最新」とは呼べないこと。本書が発行されたのは2017年であり*9、つみたてNISAすら開始していない頃だ。それどころかNISAは2024年にまた制度が変わるのだから*10、本書だけで今の金融制度を学ぶことはできない。やはり自分である程度は追加で調べる必要がある。とはいえ完全に0から調べるよりはポイントが絞られるので楽なはずだ。

もう一つの問題はアセットアロケーション (資産配分) である。自分で資産運用について調べると、インデックス投資に限った話でも様々な主張を目にする。本書では国内株式と海外株式を50:50で持つのがいいとされているが、これはかなり国内株式が多いほうだ。ネットを見ていると究極の分散である「全世界」が良いとか*11「アメリカ株こそが最強」という主張もよく見かける。ではどうしたらいいのかということで、3冊目の本が役に立つ。

『投資の大原則』

アセットアロケーションは究極的には宗教である。そして俺の聖典はこの『投資の大原則』だ。

著者はバートン・マルキールチャールズ・エリスだ。二人はそれぞれインデックス投資の名著『ウォール街のランダム・ウォーカー』『敗者のゲーム』の著者であり、その二人が一般人向けに「資産運用でやるべきことだけ」書いたのが本書というわけだ。

この「やるべきことだけ」というのがシンプルで良い。『ウォール街のランダム・ウォーカー』も『敗者のゲーム』も良い本なのだが、ページの多くは「やるべきでないこと」に割かれている。やるべきでないことの方が多いから仕方ないとはいえ、正解だけが知りたい人にとってはダルい。そこで二人の考える「正解だけ」書かれた本書に価値があるのだ。

二人の主張は細かい点では異なるが、基本となる方針は一致している。「年齢と許容リスクに合わせて、全世界株式市場対象のインデックスファンドと全債券市場対象のファンドを組み合わせろ」だ。アメリカ人の二人が「全世界にしろ」と言っているのだから、俺も全世界を選んでいる。

インデックス投資は地道に淡々と続けることに価値がある。それを実行するには何か信じられるものが必要だ。二人合わせて100年を超える研究と経験の結晶*12である本書は、まさに聖典としてふさわしい。

終わりに

いろいろとお金や資産運用の本を読んできたが、結局は今回紹介した3冊を読めば大事なことはだいたい分かる。そしてこの3冊の教えを元にした俺の資産形成の要点をまとめると以下となる。

  • 勤倹貯蓄に励む*13
  • 余暇に執筆する*14
  • 当面の生活費を確保する
  • 安全資産は国債かそれ以上の金利がつくネット銀行に入れる*15
  • リスク運用資産は全世界株式市場対象のインデックスファンドに全額突っ込む*16
  • NISAやiDeCoなど、お得な制度を活用する

びっくりするほど面白くないが、まあ一般人の資産形成というのはそんなものだろう。

そして最後に言っておく。本記事の情報については細心の注意を払っておりますが、正確性および完全性等について一切保証するものではありません。個別商品の詳細情報については、銀行や証券会社などに直接お問い合わせください。また、本記事の情報を利用して何らかの損害を被ったとしても、著者は責任を負いかねますので、投資にあたっての最終判断はご自身でお願いいたします。

面白いけど役に立たないお金の記事

この記事の最後で『投資の大原則』を勧めた理由、これで分かってもらえた?

*1:この春、新しく始めたいことは何ですか? - About Amazon | Japan

*2:春の新生活スタートに関する調査 2021 - PR TIMES

*3:"Financial Independence, Retire Early" すなわち「経済的独立と早期退職」のこと。最も一般的な方法は、まず貯蓄率を高めて生活費25年分を貯蓄する。次にそれを投資に回して、インフレ調整後の利回りを4%以上にする。こうすれば理論上は利回りだけで暮らしていける。

*4:『私の財産告白』(本多静六 実業之日本社 1956)p12-15「ブレンタノ博士の財訓」の項に出てく... | レファレンス協同データベース

*5:「FIREを目指す人が読むべきと言っておきながら、《Retire Early / 早期退職》が抜けているではないか、これだと "FIRE" ではなく "FI" だろ」という指摘はもっともだ。これはわざとである。さっさと仕事をやめて慎ましく暮らそうというのはやめたほうがいい。これだと人的資本と社会資本が失われ、金融資本の一つに頼ることになる。これはリスクが高い。それより目指すべきは本多静六の言う「職業道楽化」である。つまり仕事を趣味のように楽しめることを目指すのだ。仕事をすることが楽しくて仕方がないのなら、辞める必要はまったくない。経済的独立を果たしていれば、クソみたいな仕事に「No」と言えるわけだしな。

*6:郵便貯金の金利の推移を見るに、これは通常貯金の金利ではないだろうか。100年以上にわたる郵便貯金の金利推移をさぐる(不破雷蔵) - 個人 - Yahoo!ニュース

*7:単身世帯だとこの時点で約半数が対象外となりそうだが。年代別「平均貯蓄額」は右上がり傾向!ウチは平均以上か平均以下か(LIMO) - Yahoo!ニュース

*8:一つの目安として、普通の人が資産運用で 99 点をとる方法とその考え方 - hayatoを読んで理解できる人は本書を読む必要は無いだろう。

*9:原著の出版が1950年である『私の財産告白』に比べたらだいぶ新しいが。

*10:新しいNISA制度 : 金融庁

*11:ちなみに教える側の著者である山崎元は、2021年の記事では個人投資家へのおすすめとして一番いいのは「全世界株式100%」であると述べている。個人投資家が実行しやすいインデックス投資を考える | トウシル 楽天証券の投資情報メディア

*12:経歴を足すことに何の意味があるか分からないが、本書の「はじめに」にはこう書かれている。

*13:クレカで1年に100万円使ったら年会費無料だよと言われたら、プリペイドへのチャージで終わらせるくらいには勤倹貯蓄に励んでいる。

*14:そう、まさに今あなたが読んでいる文章である。

*15:今だとauじぶん銀行がサービス連携で0.2%になり、国債変動10年型の0.12%を超える。auまとめて金利優遇 | auじぶん銀行

*16:チャールズ・エリスが20代30代は株式100%でいいだろと言っているので。