本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

「本質本」と呼べそうな本3冊

これについての本質はこの本を読めば分かる。
そういうタイプの本を紹介する。

本質本とは

この記事で言う「本質本」とは、以下の動画で提唱された概念である。

※上の埋め込みは「本質本」について話しているところから再生されるようにしてある。

曰く、「複雑怪奇だと思われているものが、本質を抽出するとこの一滴になる」というような本のことらしい。本質本の例としては『料理の四面体』『ストーリーとしての競争戦略』『ペンギンが教えてくれた物理のはなし』が挙げられている。

料理の四面体 (中公文庫)

料理の四面体 (中公文庫)

  • 作者:玉村 豊男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2010/02/25
  • メディア: 文庫

ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

ストーリーとしての競争戦略 優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)

  • 作者:楠木 建
  • 出版社/メーカー: 東洋経済新報社
  • 発売日: 2012/05/10
  • メディア: 単行本

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)

ペンギンが教えてくれた 物理のはなし (河出ブックス)

  • 作者:渡辺 佑基
  • 出版社/メーカー: 河出書房新社
  • 発売日: 2014/04/14
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)

残念ながら3冊とも読んだことは無いが、言いたいことはだいたい分かる。俺なら本質本を「ある分野を最小限の要素・法則・原理で解き明かす本」と定義するだろうか。少なくとも統一場理論*1の本が求められているわけではないだろう。

本質本という発想は面白いと思ったので、俺もそれっぽい本を紹介することにした。

俺が読んだ本質本っぽい本

ということで俺が読んだことのある本の中から、本質本っぽい本を紹介する。今回紹介するのは3冊。せっかくなので上記動画で紹介されている本から連想した本を選んだ。

フードトラップ

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

フードトラップ 食品に仕掛けられた至福の罠

  • 作者:マイケル モス
  • 出版社/メーカー: 日経BP
  • 発売日: 2014/06/04
  • メディア: 単行本

これは加工食品の本質本である。と言っても製造方法の話ではない。加工食品に使われる物質の話だ。それは原題にある「塩」「砂糖」「脂肪」である。加工食品で3つの物質がなぜ重要なのか、それを多くの研究・調査を引用しながら解説していく。

3つの物質はどれも「健康に良くない」と言われている。正確には「とりすぎると健康に良くない」だが、多くの人は3つとも摂りすぎなのであまり関係ない。それなのになぜ食品メーカーはドバドバ入れてしまうのか。理由は「入れた方が売れるから」である。入れることで味だけでなく、見た目や食感までもがグッと良くなる。消費者は「もっと減らせ」と言うが、実際に減らすと明らかに売上が低下する。市場は健康よりも快楽を求めるのだ。

たちの悪いことに3つの物質は組み合わせることで相乗効果を得る。この魅力にはプリキュアですら屈してしまうことは、以前記事に書いたとおりである。

この本を読んだらコンビニへ行った時にホットスナックを見るといい。売っているものがどれも「塩」「砂糖」「脂肪」の組み合わせであることに気がつくだろう。

反脆弱性

反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆弱性[上]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

反脆弱性[下]――不確実な世界を生き延びる唯一の考え方

これは複雑系の世界を生き残るための本質本である。『フードトラップ』と違って研究・調査よりも思想や経験に比重が置かれるが、『ストーリーとしての競争戦略』が本質本ならこれも本質本だろう。複雑系の世界で生き残るための選択を「反脆い」という1つの基準で判断しているのだから。

我々の生きる世界は複雑系である。地球環境もそうだし、人間社会もそうである。相互に関連する複数の要因が合わさることで、予測をすることが困難だ。そんな世界で生き残る戦略を紹介するために「反脆い」という概念が提唱される。これは「脆い」とは逆の概念だ。負荷で壊れにくい「頑健」とは違う。「反脆い」は負荷が加わることでより強くなる性質である。筋肉における超回復を一般化させたものと思えばよい。つまり生物の特性だ。本書ではこの「反脆い」性質こそが生き延びる道だと説くのである。

本書に妙な納得感があるのは、進化の概念が根底にあるからだろう。生命は不変の存在ではないし、各個体は頑丈な存在ではない。それでも生命がずっと存在し続けているのは、生命が進化のシステムによって「反脆い」性質を持っているからである。短期的に見れば不安定だが、全体を長期に見れば安定して継続している。その圧倒的事実があるからこそ、他の分野に当てはめても説得力があるのだろう。

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年

脚・ひれ・翼はなぜ進化したのか: 生き物の「動き」と「形」の40億年

これは生物の形質の本質本である。多種多様な形質を形作るメカニズムである進化は、ランダムな変異の積み重ねで起きる現象である。そう言うと生命の形質は「偶然の産物」に思えるが、実は違う。それぞれの種は、その形でなくてはならない理由があるのだ。本書では3つの要素「移動運動」「物理法則」「祖先の形質」で進化の道筋を説明する。

3つの要素は、どのように形質を決めるのか。まず「移動運動」は目的であり基準である。いかに効率的に移動するか。それが全てを決める。「物理法則」は1つめの制限である。生物が移動する際、抵抗や重力など、環境からの物理法則による制限がある。「祖先の形質」は2つめの制限である。生物の形質はゼロベースではなく、祖先の形質を原型とする制限がある。物理法則と祖先の形質に縛られながら、いかに効率的な移動をするか。それによって生物の形質は自ずと決まってくるのだ。

これまで進化に関する本をいくつか読んできたが、たいてい「進化の目的」*2は「遺伝子拡散」だった。ところが本書は「移動運動」である。最初は違和感があったが、読み進めていくうちに納得した。究極の目的が「遺伝子拡散」だとしても、形質が決まるのに最も重要な要素が「移動運動」なのだ。だから本書は本質本である。

終わりに

今回紹介した本質本だが、実はこの3冊には共通点がある。それは彼の名が登場することだ。

f:id:honeshabri:20200216192828j:plain:w480
Alvaro Marques Hijazo [CC0], Link

「万学の祖」アリストテレスである。以前からこいつの名前が出てくる本は当たりが多いと思っていた。面白そうなことにはだいたい手を出しているので、過去の研究について語ろうとすると紹介するしかないのだろう。

本記事を書くきっかけとなった動画で「本質本の探し方が分からない」と言っていた。とりあえずアリストテレスが手を出したジャンルで評判がいい本を読んでみたらどうだろうか。

本をまとめて紹介系の記事

*1:電磁相互作用、弱い相互作用、強い相互作用、重力を一つの形に統一する理論。もちろんこれについて書かれた本も本質本と言っていいだろうが。

*2:ここで言う「目的」はあくまでも説明上の表現である。自然選択や遺伝的浮動に何者かの意図は入らない。ある形質がどのような有効性があるかを説明するのに「目的」と言ったほうが分かりやすいだけだ。