本しゃぶり

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2018年に読んだ本から5冊

2018年に読み終えた本は95冊だった。
そこから印象に残っている5冊を紹介する。

21世紀の貨幣論

2017年から2018年の頭にかけて暗号通貨が盛り上がっていたので読んだ。暗号通貨の仕組みよりも、そもそも「お金」とは何かを知りたくて。本書ではこの疑問にこう答える。

通貨そのものはマネーではない。信用取引をして、通貨による決済をするシステムこそが、マネーなのである。

一般的に語られるお金の歴史では、初めに物々交換があり、そこから代用品としての貨幣が生まれたとされる。だがこれは間違っている。この通説は推論で導き出されたに過ぎず、何か明確な証拠があってのものではないのだ。

現実のマネーとは「債務を譲渡する」ところから始まっている。これを知り、理解できることが本書の価値だと俺は思う。金貨や銀貨といったハードではなく、社会制度というソフト。この本質さえ掴むことができれば、暗号通貨のような新たな媒介が登場しても、うろたえることは無いだろう。

われらはレギオン

全3巻のSF小説。

オタクでプログラマーのボブは交通事故で死んだ。そして人工知能として蘇った。別に異世界転生したわけではない。脳を細胞以下のレベルまでスキャンされ、コンピュータ・プログラムとなったのである。ボブの役目は人類を救うこと。フォン・ノイマン探索機 (自己増殖する探索機) となって宇宙に旅立ち、人類が移住できる星を見つけるのだ。

この作品の素晴らしいとこは、ボブの前向きさにある。プログラムになってしまったことや自分のコピーを作ることにグダグダ悩まず、現状を前向きに捉えて行動していく。技術の力で問題を解決し、ボブが宇宙に広がっていく感じは、RTSなどのシミュレーションゲームに近い楽しさがある。その手のジャンルが好きな人におすすめ。

スノーボール

投資家ウォーレン・バフェットの伝記。これも全3巻なので長いが、一番面白いのは上巻なのでそれだけ読むというのも手。というのも、上巻は子供の頃から一端の投資家になるまでが対象となっており、その成り上がる過程を知れるからである。

さらに上巻はバフェットの畜生エピソードが特に多い。俺は畜生エピソードこそが伝記において重要だと考えている。武勇伝のように本人自ら宣伝するのではなく、できれば隠しておきたい話。それがあると「あの偉人が若い頃にはそんなことをしていたのか」と現在とのギャップで楽しめるのだ。

以上の「成り上がり」と「畜生エピソード」については、記事に書いたことがある。本を購入するか迷っている人は、まずこれを読むといい。

ダーウィン・エコノミー 自由、競争、公益

進化の仕組みは人間社会にも適用できるという本は何冊か読んできた。特にマット・リドレーの本とか。そのタイプの考え方も好きだが、本書『ダーウィン・エコノミー』それに「待った」をかける本である。全体の幸福度を高めるためには競争だけでなく「規制」が必要である、と。

一番わかりやすい例は、本書にもあった「アイスホッケーのヘルメット着用義務化」の問題である。選手はヘルメット着用が自由な場合、装着しないことを選ぶ。その方が視界が広く、音も聞こえやすくなるため、優位に立ちやすくなるからだ。怪我のリスクが増えるとしても。しかしそうすると全員がヘルメット着用しなくなるため、その優位性は消え、ただ全員にとって怪我のリスクが増えるだけになる。だから選手達はヘルメット着用義務化を制度に求めるのだ。

本書を読むと、上記のホッケー選手のような立場があちこちに存在することに気がつく。例えば就活。就職するためには絶対的ではなく、周囲に対して相対的に勝っていなければならない。だからこそ会社側が「私服でOK」と言っても、就活生達は周囲より下にならないようスーツ着用で挑むのである。これを解決できるのは『規制』しかない。自然に任せたままだとどうなるかは、コクホウジャクの尾羽根が教えてくれる。

Longtailed Widowbird, Euplectes progne in early summer breading plumage at Rietvlei Nature Reserve, Gauteng, South Africa (15482420928).jpg
By Derek Keats from Johannesburg, South Africa - Longtailed Widowbird, Euplectes progne in early summer breading plumage at Rietvlei Nature Reserve, Gauteng, South Africa, CC BY 2.0, Link

A:命を脅かすようになるまで止まらない*1

このように進化万能論に対抗する本ということで、俺にとって価値が高い。

HIGH OUTPUT MANAGEMENT

インテルの元CEOであるアンドリュー・グローブが在職中に書いた本。きっかけは『インテル 世界で最も重要な会社の産業史』を読んだことだった。

最初はグローブに対する好感度は低かったが、読んでいるうちに彼こそが主人公に見えてくる。そしてグローブがいろいろと本を書いていたことを知ると、それを読みたくなるのは当然の成り行きだった。複数ある著書の中から本書を選んだのは、既に購入済みだったからである。たぶん何かのセールで買ったのだと思う。

少し古い本だし、著者があのグローブということで身構えていたが、スラスラ読めるほどわかりやすい。製造業を運営する上で基本的なことが中学生でもわかるように書いてある。名著と言われるのも当然で、新入社員研修で読ませるべきでないかと思う。マネージャーではなくても役に立つはずだ。

本書によれば、マネージャーの仕事は突き詰めると「部下のモチベーションを上げること」と「部下を教育すること」だという。なぜなら部下が仕事をできない場合、その理由は「やる気が無い」か「能力が無い」からだ。このような主張を読んで「なるほど」と思って記憶をたどり始める。この手の優れたマネージャー向けの本を読むと、自分の上司はどうなのかと考えてしまう。読んで欲しい。

終わりに

今年は100冊いかなかった。理由は分かっている。これのせいだ。

10月から11月にかけては準備を優先し、行ってからは体調を崩して本を読む気にならなかった。読書するにも健康であることが求められる。

ただそれでも「これだけ読めた」と言うべきだろう。ブクログの読書グラフを見ると、9月まではそれなりに安定して数を読めている事がわかる*2

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2018年の読書グラフ

これは間違いなくKindle読み上げのおかげだ。

本によって向き不向きがあるとはいえ、便利なのでこれからも続けていく。

他に読んだ本

2017年のおすすめ

*1:この暴走進化説の説明については、この記事で書いている。 https://honeshabri.hatenablog.com/entry/selfish_horn

*2:俺にとって。