習慣を身に着けたいのであれば、コストを軽くすることが肝心である。
読書においてもそれは変わらない。
いつでも好きなタイミングで読める。そんな本を紹介する。
精神的コストの軽い本
読書をした方がいいと思っていても、なかなか読めないという人は多い。その原因は「金が無い」「時間が無い」「字が読めない」と人それぞれであるが、その中に「読書の精神的コストが高い」というものがある。読書の習慣が付いていないため、読書が特別な行為となってしまい、気軽に行えないというパターンだ。
そういう人はまず気軽に読書する習慣をつけることが肝心だと俺は思う。肩肘を張らず、ちょっとした時間に少しだけ読む。それを繰り返しているうちに読書が当たり前の行為となり、長時間読むことさえもできるようになる。
ではそんな習慣をつけるのに向いた本はどのような本だろうか。俺は以下の3点を満たす本が最適であると考える。
- 好きな内容
- スマホで読める
- 独立した話で構成
1点目は当然なのでいいだろう。
2点目のスマホで読める、つまり電子書籍ということだ。これについては以前に書いている。
たくさんの本を持ち歩き、スキマ時間に読むなら電子書籍しかない。それもスマホで。読書が習慣になっている人ならばともかく、これからの人に対して「常に本を持ち歩け」と言うのは無理がある。すでに持ち歩くのが習慣となっている物で読むのが一番だ。なお、上記記事にも書いたが、俺がKindleを薦めるのは俺がKindleしか使ったことがないからだ。スマホで読めるのであれば、別にKindleというサービスにこだわる必要はない。
3点目の「独立した話で構成」について。スキマ時間に読むことのデメリットとして、前回までに読んだ内容を思い出すためのコストが増えるという点がある。細切れに読むと、どのような説明や話が展開されていたのかを思い出す比率が増えてしまう。そしてページを戻って読み返しているうちに、スキマ時間が無くなってしまう。これでは読む気にならない。
なのですぐに読み終えることの出来る、独立した細かい話で構成されている本が向いている。これならば遡る必要は無いし、すぐに区切りがつくので満足感も味わいやすい。特に読書の習慣が付く前だと、読む間隔が空きやすい。そういった時に前の内容を覚えていなくても読めるというのは、大きなメリットとなる。
というわけで、上記3点を満たした本を紹介する。「好きな内容」というのは「俺が」となるが。
天才たちの日課
今ちょっとずつ読み進めている本。このブログで紹介する本は読了したものに限っているが、これは半分も読まなくてもどんな本か分かる。
この本はタイトルの通り、天才と呼ばれる人たちの生活習慣について書かれている。この「天才たち」は主にクリエイター、特に作家が多い。そんな彼らがどのように一日を過ごし、仕事に取り掛かっていたのかが分かる。人物ごとに独立した構成となっているため、共通点などから天才の法則を導き出すというものではない。単にあの人はこのように過ごしていた、ということが分かるだけである。
これを読むと生活スタイルは人それぞれであり、成功者に共通することは何かを成し遂げたという一点にすぎないと言える。ベートーヴェンのように夜明けと共に起きて仕事を始める朝型もいれば、夕暮れに活動を開始するグレン・グールドのような夜型もいる。なので自己啓発本にありがちな「成功する習慣」は、この本を使えばどのような場合でも作れる。例えそれが「薬物に浸かれ」という内容だとしても。
LIFE<ライフ> 人間が知らない生き方
様々な動物の特徴をネタにした自己啓発本。簡単なマンガと説明文のセットで構成されている。動物のちょっとした豆知識を知るという意味ではいいが、これを読んで「自分の生き方を見直そう」とか考えている人には薦めない。『けものフレンズ』で動物に興味を持ち始めた人が読むのにちょうどいい本。
この記事で紹介する本はどれもそうだが、一つの対象について深く掘り下げるよりも、浅く広くが基本となる。なのでお薦めの読み方としては、この本で気になる動物を見つけたら、今度はそれを専門に書いた本を読むことである。検索するためにはまず検索キーワードを知らなければいけないように、興味を持つためにはきっかけが必要となる。この本はそのきっかけを見つけるための本だ。
ローマ帝国人物列伝
古代ローマ社会史の専門家による『ローマ人の物語』とでも呼ぶべき本。『ローマ人の物語』は好きなシリーズなのだが、大きな欠点が二つある。「長い」ということと、歴史書ではなく「歴史小説」であるということだ。この本はその欠点を克服している。人物に焦点を当てながらローマの歴史をおおよそカバーしているため、古代ローマに興味を持った人が初めに読む本としてお薦めである。
この本は新書一冊で、共和政の始まりから西ローマ帝国滅亡直前までの約1000年間を書く。そのため一人に割ける紙面限られている。しかしクラッスス、大ポンペイウス、カエサルと、同時代に活躍した人物を個別に取り上げることがある。当然その内容は被るところが出てくるが、個別に書くことでそれぞれの視点から見た人物像が分かるのが面白い。とはいえその代償に五賢帝が一括りになってしまったが。
フロンティヌス戦術書
古代ローマ人が書いた戦争における事例集、あるいはNAVERまとめ。同じくローマ人がまとめた『戦術書』と言うと、以前紹介したポリュアイノス作のもあるが*1、こっちの方が評価は高いとされる。理由はそのまとめ方にある。フロンティヌスはシチュエーションごとにまとめているのに対し、ポリュアイノスは人物を基準にまとめた。どちらが実用的かは言うまでもない*2。ついでに言えば値段においてもフロンティヌスに軍配が上がる。
内容は古代に書かれただけあって、今では通用しないものも多い。フロンティヌスは「城塞の攻防に関する軍事技術は、いまやもう発展の限度に達してしまっている」と書いているが、それは間違いであることを我々は知っている。それでも面白い話は多く、特に「凶兆に怯む兵士を奮い立たせる」例は、とっさによく言えるものだと感心してしまう。
ガイウス・カエサルは、軍船に乗り込もうとするときに、足を滑らせて地面に手をついてしまった。彼は大声でよばわった。「母なる地よ、わたしはおまえを早く掴むぞ」。
君主論
Kindle化されていて、内容が独立していて、しかも短い、と三拍子そろっている。惜しむらくは、例を理解するためにギリシア・ローマの知識がある程度必要ということだろう。逆に言えば知ってさえいればサクサク読むことができる。
『君主論』については以前がっつり紹介したのでその記事を読んでもらいたい*3、と書こうとして読み返してみたら『君主論』そのものには全然触れていなかった。これだから人間の記憶というものはあてにならない。
「マキャベリズム」という言葉もあるように、『君主論』というと冷酷非情な内容と思われることも多い。確かにそういった面もあるのは事実だが、それが本質ではない。マキャベリが重要視しているのは国の存続であり、そのために必要な確かな実力をつけろと言っているのである。借り物の力ではなく、自分自身の力で君主となれ、と。そうでなくては困難に打ち勝つことはできない。
終わりに
ここで紹介した本でなくとも、似た構成の本ならばスキマ時間に読みやすい。一番重要なのは「読みたいと思える」ということなので、合わなかったらさっさと次の本を手にした方がいい。だからこそ多くの本を持ち歩くことの出来る電子書籍が向いているのだ。読んでいて夢中になれば、後は意識せずとも読むようになるだろう。
読書好きの中には「読書というものは読みたい本があるからするもので、無理にするものではない」と言う人もいる。それは一理ある。しかし、「読書をしたいが、どうしても続かない」と悩んでいる人に対して言うのであれば、それは間違いだと言える。「やってみたいけど上手くできない」という人に対して必要なのは、諦めの言葉ではない。進むべき道筋を示すことである。この記事がその道筋になれば幸いだ。