映画を夢中になって見た。
これを定量的に語るにはどうしたらいいか。
その答えはメガネをかけることで見えてくる。
映画を見るために
ここ最近、映画視聴時の心拍数を分析することにハマっている。心拍数がどのように変化したかで、その映画の面白さを定量化できるのではないかと考えているのだ。
しかしながら心拍数だけでは行き詰まりが見える。心拍数はあくまでも興奮の指標でしかないからだ。興奮しない=つまらない ではない。ドキドキしていなくても夢中で見ていることはある。
したがって何かもう一つ指標が欲しい。前回『キングスマン:ゴールデン・サークル』の心拍数を分析しながら、そのように考えていた。
何かもう一つ……
……
そうだ、メガネだ。
このメガネを装着すれば
集中状態を計測できる。
JINS MEME ES
俺が装着したメガネはJINS MEME ES*1。
このメガネには3点式眼電位センサーが搭載されており、まばたきと視線移動を検出、そこから集中状態を計測できるのである。
まばたきには、目の渇きを潤すという役割だけでなく、タスクへの集中状態にも連動していると言われています。JINSが東北大学と共同で行った実験でも、作業負荷が低いとまばたきの回数が増加し、作業負荷が高いとまたばきの回数が減少する傾向が確認されました。
JINS MEME OFFICEでは、まばたきの回数の増減を“ひとつのタスクへの専念状態”のパラメータと定義し、「アタマ」のスコアとして計測しています。
FOCUSの科学
参考論文:メガネ型デバイスJINS MEMEを用いたワークロード推定の基礎的検討
他からも瞬目数*2と集中の関係についての論文が出ているので、それなりに信用できる指標であると認識している。
したがってこのメガネをかけることで、映画視聴時の集中状態を計測することができるのである。
csv出力
JINS MEMEで集中状態を計測する時は、専用のアプリを使う必要がある。
このアプリを使うことで、後から集中状態の変動を時系列で見ることができるのだ。
ところがここに一つ問題がある。このデータはアプリ内でしか参照できず、csv形式などで外部に出力することができないのだ。これでは心拍数と比較することや、統計をとることができない*3。常々言っているように、データの再利用ができない活動量計はクソである。
しかし、幸いにもJINS MEMEには生データをcsv出力できるアプリが存在する。
これを使うことによって、まばたきのデータを手に入れることはできる。そこで瞬目数とアプリで計測している「アタマのスコア*4」とどれくらい相関があるか確認してみた。
それなりに相関があると言っていいのではないだろうか。よって瞬目数をそのまま集中状態の指標として使うことにする。映画を見ている時の瞬目数が少ないほど、映画に集中しているということだ。
心拍数と瞬目数
さっそくJINS MEMEを装着して映画を見てきた。見たのは『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』だ。
視聴時の心拍数と瞬目数の結果をグラフ化したものが以下である。
瞬目数は少ないほうがいい(=集中している)ので、軸を反転させた。
前半は心拍数と瞬目数が連動しているように見える。やはり興奮している時は集中しているということなのだろうか。ただし後半は連動しているように見えない。また、劇中でクボは「まばたきすらしてはならぬ*5」と言ったが、俺は1251回していた。平均瞬目数は12.0回/分である。
さて、このグラフを見ただけだと、瞬目数も計測したところであまり意味は無いように思える。やはりこういうのは他と比較してこそ意味があるというものだ。そこで対戦相手を用意した。
『劇場版 マジンガーZ / INFINITY』である。
グラフはこうなった。
『クボ』以上に心拍数と瞬目数の変動が一致している。それぞれのタイミングがどのシーンであるかは記録を取っていないため、理由まではわからない。ありそうなのは心拍数が低下しているのがドラマパートというパターンだろう。俺は今回が初マジンガーZであるため、キャラに何の思い入れも無いからだ。集中力が散漫になってもおかしくはない。
クボ 対 マジンガーZ
二作品の心拍数と瞬目数がそろったところで、それぞれを比較してみる。
まずは心拍数を比較する。
前回書いたように心拍数というものは、その時のコンディションによっても左右される。しかし今回は同一日に見たせいか、予告時の心拍数がほとんど同じである。なので特に調整せずに比較した。
開始10分ぐらいまでは両者ともほとんど同じ動きをしているが、以降は『マジンガーZ』の方が高い。やはりロボットアニメの方が興奮できるということだろうか。最大値こそ差は1bpmしか無かったものの、興奮という観点からしたら『マジンガーZ』の圧勝と言っていいだろう。
次は瞬目数の比較である。
瞬目数=集中力では『クボ』に軍配が上がった。特に0:05〜0:35の辺りは『クボ』が完全に勝っている。それ以降は両者の差はそれほど無いという感じだ。
最後に、横軸に平均瞬目数、縦軸に平均心拍数として各作品の平均値*6をプロットしてみた。右に行くほど集中、上に行くほど興奮する映画ということになる。
まだデータが2作品しかないので寂しいものがあるが、これで映画の傾向を分類できる。現段階としては『クボ』は集中して見るタイプの作品であり、『マジンガーZ』は興奮をもたらす作品であると言える。この先もデータを取り続け、俺専用のランキングを構築したい。
終わりに
映画を五段階評価する時にいつも思うのは、なぜその点数としたかを説明するのが難しいということだ。数字として出すと定量的に評価しているように見えるが、実際は雰囲気で評価しているにすぎない*7。俺はそれをやめたい。主観的でいいので、真に定量的な評価を下したいのだ。
今回の実験で計測は問題なくできることがわかったので、後はデータを積み重ねるだけである。まだまだ金はかかりそうだ。
使ったもの
俺が見る映画の参考にしたいので、やる人が出てくれるとうれしい。
瞬目数の測定
上でも書いたがハードはJINS MEME ESを使っている。
度入りでもwebから注文できるが、調整は特定の店舗*8でしかできないので注意。俺は視力検査も行いたかったので店舗で購入した。レンズの在庫があったので約1時間程度で済んだ。
データの取得はcsv出力ができるこのアプリ。
注意すべきは自動でログは残らないということ。csvで出力するためには計測を開始する必要がある。面倒だが30分の測定で3.8MBにもなるので仕方がないだろう。
心拍数の測定
心拍数を測定できるウェアラブルデバイスは色々と発売されているが、重要なのはcsvなどで出力できることである。amazonを見ていても出力できるかどうかはまず書かれていないので困る。基本的にはできないのだけれど。
俺が使っているのはこれ。
公式のアプリだとcsv出力できないが、これで心拍数を出力することができる。便利。
もともと公式が出力をサポートしているのはアップルウォッチしか知らない。何かいいのがあれば教えて欲しいが。
似たような記事
そういえば『プリアラ』のデータも今日で全部揃った。
とりあえず心拍数で単純にそのまま比較した記事。