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ひとりぼっちの残酷すぎる成功法則

孤独な人間は努力してでも友達を作った方がいいのか。
研究結果は無慈悲にも「そうだ」と答える。

成功するための方法を『ひとりぼっちの〇〇生活』から学ぼう。

『ひとりぼっちの〇〇生活』6話

クラス全員と友達に

中学卒業までにクラス全員と友達にならなくてはいけない

これは今期アニメ『ひとりぼっちの〇〇生活』の主人公、一里ぼっちに課せられた試練である。

『ひとりぼっちの〇〇生活』1話

TVアニメ「ひとりぼっちの〇〇生活」公式サイト

ぼっちは孤独な少女である。友達と呼べる存在は幼馴染の八原かいのみだ。

『ひとりぼっちの〇〇生活』1話

しかし小学校卒業を期に、その唯一の友達とも離れてしまう。

「このままでは、ぼっちはダメになってしまう」

そう考えた八原かいは、ぼっちに一つ約束をさせた。それが冒頭に書いた「中学卒業までにクラス全員と友達になる」というものである。もしこの約束が守れなければ絶交すると付け加えて。ぼっちの幸せを願った彼女は、心を鬼にして親友を追い込んだのだ。

『ひとりぼっちの〇〇生活』1話

ここまで見た孤独なオタクは思う。「クラス全員と友達になることで、ぼっちは幸せになるのか?」 と。自分が普段あまり人と積極的に関わらないようにしているため、まるで自分自身が責められているように感じてしまうのだ。

しかしこれは重要な問いである。ぼっちは人見知りであるため、友達を新たに作ろうとするのは「苦痛というコスト」を支払わなくてはいけない。自己紹介で嘔吐するほどのぼっちが、友達を作ることでコストに見合ったリターンを得られるのだろうか

リターンは高確率で得られる。リチャード・ワイズマンによる研究はそう言っている。

ネットワークを築け

英国ハートフォードシャー大学の心理学者リチャード・ワイズマンは、世の中に幸運な人と不運な人がいる理由を10年にわたって研究した。

Vera de Kok CC BY-SA 3.0,Link

ワイズマンらはまず被験者を集めると、彼らに自分自身の運の良さを尋ねた。これによって被験者は「運がいい」「運が悪い」「どちらでもない」の3つのグループに分類された。次にワイズマンらは数年間かけて、このグループ間の違いを探し続けた。日記をつけてもらい、インタビューを行い、テストや実験を実施した。

この研究でワイズマンは重要な成功要因を発見する。運のいい人たちは「運の強力なネットワーク」を作り、維持しているのだ。

運のいい人達は、出会った人々と強固で長続きする人間関係を形成するのが得意だった。運の悪い人達と比べて、ずっと多くの友達や同僚と密に連絡を取り合う。この友達ネットワークは何度も彼らにチャンスを与え、人生の機会を発展させるのに役立つのである。

ガチャで目当てのものを入手する確率は、回せば回すほど高まる。人生における幸運も同じことなのだ。友人と会話を1回するたびに、あなたは人生のガチャを回しているのである。

ワイズマンの研究はこれだけで終わらなかった。彼は運の悪い人達を集めると、幸運の法則を伝え、具体的にどのように行動すればよいか教えた。人的ネットワークを作って維持することや、新しい体験に寛容になるように指導したのである。

結果は素晴らしいものだった。ワイズマンの指導を受けた人の80%が、運が良くなったと回答したのだ。しかも彼らは幸運になっただけでなく、幸福感も増したのである。

このワイズマンの研究結果から、ぼっちは友達を作った方が幸せになれる確率が高いと言えるだろう。現状を維持してしまったら耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らすことになるのは目に見えている。精神的な初期投資は高いかもしれないが、それでも自分を変えるべきなのだ。

『ひとりぼっちの〇〇生活』6話

これで人的ネットワークを作ったほうがいいことは分かった。しかし、どうすればネットワークを、つまり友人を作ることができるのだろうか。一言で言えば、相手の望むものを与えることである。

友達の作り方

この人と友達になろうと狙いを定めたら、まずやるべきことは相手を知ることである。それも本人の口から語らせるのが良い。

米ハーバード大学の神経科学者ダイアナ・タミールは「セルフディスクロージャー(自己開示)は特に満足度が高い」と語っている*1。自分のことを話すというのは、食べ物やお金よりも快楽中枢を強く刺激するのだ。隙あらば自分語りする人が多いのも納得である。

また、ニューヨーク州立大学の心理学教授のアーサー・アーロンの研究では、相手に自分自身のことを尋ねることで、短時間で親密な関係を築けることが証明されている*2

これを踏まえてぼっちの行動を見返してみると、最初の友達作りとして砂尾なことの会話に臨んだ際、まず質問から始めたのは正解だったと言える。

『ひとりぼっちの〇〇生活』1話

ちなみにぼっちは上のシーンのように、手やノートにやることをあらかじめ書いているが、これは有効な手法だ。心理学者のロイ・バウマイスターによれば、書き留めることは目標達成に役立つだけでなく、リラックスさせる効果があるという。これは続けるべきだ。

さて、相手のことを知ったのならば、次は相手に何かを与えよう。TEDでアダム・グラントが語った*3ように「与える人」つまり「ギバー」になるのだ。とはいえ高価なプレゼントをする必要はない。ちょっとした親切でいいのだ。

2011年に『フォーチュン』誌でシリコンバレーで最高のネットワーカーに指名され、グラントのTEDにも登場したアダム・リフキンは、ネットワーク作りの秘訣は友達になることであり、受け取るより与えるほうが良いと答えている。その「与えるもの」の例として、知識人との繋がりを挙げている。

幸いにも、ぼっちは「ギバー」の傾向が強い。常に相手のために自分ができることを考え、何かを与えようとする。忍者に憧れる外国人ソトカ・ラキターと仲良くなろうとした時には、折り紙で手裏剣を作ってプレゼントしていた。

『ひとりぼっちの〇〇生活』4話

相手の趣味に合わせ、自分にできることをする。まさにお手本のような行動だったと言えるだろう。

しかし「ギバー」として振る舞うことにはリスクもある。カモにされ、搾取され続けて消耗する危険性がある。これを回避するためには友達を選ぶ必要がある。

誰から繋がるべきか

先にTEDの件で紹介したアダム・グラントは、「成功」という尺度で見た時に、どのようなタイプの人がどの位置にいるのかを解析した。

nrkbeta CC BY-SA 2.0,Link

その結果、トップ層には「ギバー」が多かったが、最下層に多いのも「ギバー」だったのだ。「マッチャー (与えることと受け取ることのバランスをとるタイプ) 」と「テイカー (受け取ることを優先するタイプ) 」は中間層に位置していた。

ギバーはトップとボトムの両端に位置する。これは不思議なことではない。優しい世界ならばギバーは皆から愛されるため、成功の階段を登ることができる。しかし周囲に収奪者であるテイカーが多いと、「ギバー」は搾取され、消耗し破綻する。

これを防ぐ方法は2つある。1つは与える量を制限すること。最悪リターンが0でも破綻しない程度に抑えてくのだ。ソンジャ・ライウボマースキーの研究によれば、人助けは時間数を決めて行う方が幸福感が増し、ストレスも軽減されるという。

もう2つめの方法はバランスを重視するマッチャーと仲良くなることだと、グラントは述べている。マッチャーは自分だけでなく、仲間に関しても因果応報を求めるため、テイカーからギバーを護ってくれる。

ぼっちが最初になこを友達にしたのは幸運だった。ジュースのお返しと言ってアメをくれたことからも分かるように、なこは典型的なマッチャーである。

『ひとりぼっちの〇〇生活』1話

信頼できるマッチャーを獲得したことにより、ぼっちはギバーの欠点を補うことができた。後は攻めの一手である。次に繋がるべきは、多くの人々と繋がりを持った存在、スーパーコネクターを見つけるべきだ。2ステップ以内の到達度を高めるのだ*4

『ひとりぼっちの〇〇生活』2話

終わりに

以上のように『ひとりぼっちの〇〇生活』は成功への道筋をわかりやすく、面白く物語に落とし込んだ作品である。もちろんここで言う「成功」とは、金銭的なものに限らない。最も重要なのは「幸福」と感じることである。

ローラ・ナッシュハワード・スティーブンソンの調査結果から、幸福の測定基準として以下の4点が必須要素であると明らかにされている。

  • 幸福感
  • 達成感
  • 存在意義
  • 育成

これら「ビッグフォー」(幸福の四要素) をバランスよく追求していくことこそが、幸福への道である。あなたもぼっちを見習って前に進もう。今日から変わるのだ。

参考書籍

俺は友達を作れないから幸せになれない。この記事を読んでそう感じた人は早まらないでほしい。確かに幸福になるために人的ネットワークは有用である。しかし本当に重要なのは、有用な情報に触れる頻度を増やすことであり、新しいことを積極的に取り入れていくことなのだ。

それができるなら媒体は人に限る必要はない。代わりに本を読め。本からは選別され、濃縮された情報を得ることができる。何を読めばいいか分からないという人は、この記事を書くのに俺が参考にした本から始めればいいのではないか。

残酷すぎる成功法則

タイトルから分かるように、本記事はこれから得られた情報を中心に書いている。

巷に蔓延している自己啓発本の中には「これで成功できるソースは俺」というものかなりある。それに対してこの本は、どの指針にもエビデンスがあるので、信頼性が高いのが良い。本記事でやたら人の名前が登場するのはそのためである。

運のいい人の法則

最初に紹介した、リチャード・ワイズマンの本。研究結果の核は『残酷すぎる成功法則』に書いてあるが、より詳しく知りたい人はこれを読もう。

「運の良さを調べる」というと胡散臭く感じる。しかしこのワイズマンは、超常現象を疑問視し、ニセ科学を鋭く批判する人である。そこら辺に転がっているスピリチュアルな本とは別物だと思ってもらいたい。

GIVE&TAKE

与えることの価値を説いたアダム・グラントの本。これも『残酷すぎる成功法則』に書いてあるが、やはり深く理解したいのならば本書を読むべきだ。

インターネットの発達によって、人々の評判は瞬時に共有され、経歴として残るようになった。ギバーは他人からの評判が良いため、ポジティブな評価が積み重なり、ネットワークは広がっていく。最終的に頂点に立ち続けるのは他者志向のギバーである。その理由と戦略を学ぶべきだ。

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