大人になったら子供の頃にできなかったこともできる。
大人だから知識も金も持っているので。
だからハイパーヨーヨーにリベンジしている。
TEDでヨーヨーした人
一ヶ月前、backspace.fmにゲストとして、ヨーヨーパフォーマーのBLACKが登場した。
#408:ヨーヨーパフォーマーBLACKさんと考える、今の時代の生き方 – backspace.fm
寡聞にして知らなかったのだが、彼はヨーヨーの世界チャンピオンであり、日本人として初めてTEDでスピーチをし*1、シルク・ドゥ・ソレイユでもプレイしていた*2という。
- 2001年、米国フロリダ州で行われたヨーヨー世界大会で優勝。
- 2013年、世界最高峰の講演会『TED』に登壇。日本人初スピーカーとして行ったスピーチ・パフォーマンスは、現在1,400万回以上再生されている。
- 2014年より、シルク・ドゥ・ソレイユ『KURIOS』に出演。シルク史上初のヨーヨーアーティストとしてソロ演目を担当し、500回以上のショーを好演。100万人以上の観客を魅了した。
プロフィール | BLACK | 世界中の人々を感動させるヨーヨーパフォーマンス
今でこそヨーヨーで輝かしい経歴を持っているが、そんなBLACKもヨーヨーを始めた当初は上手くできなかったらしい。14歳で初めてヨーヨーに触った時は、ロングスリーパーですら失敗したようだ*3。俺が小学生の時よりひどい。不器用でスポーツは苦手、それでもヨーヨーの練習を続け、上手い人の技を盗み、ついには世界大会で優勝に至ったのである。
このエピソードを聞いていてふと思った。「大人となった今なら、小学生の頃よりは上手くなれるのではないか」と。
例によって俺も『超速スピナー』でヨーヨーを買ったクチである。しかし残念ながらBLACKのような根気も熱意も無い小学生の俺は、ベーシックレベル '97*4を全部できるかどうかという程度で終わってしまった。
しかし大人になった今ならどうだろう。ヨーヨーができる時間は減ってしまったが、代わりに知識と金がある。そして練習で上達する楽しさもBeat Saberで知っている*5。マジメに時間をかけて取り組めば、ハイパーレベル '97程度のトリックをできるようになるのではないか。
ということで昔セールで買ったハイパーヨーヨーを引っ張り出してきた。
もう昔の俺とは違う。大人をなめるなよ。
習慣を作って記録する
まずは俺の生活の中にヨーヨーを触れる習慣を作らなければいけない。忙しくても毎日ちょっとぐらいはヨーヨーをプレイしたり、ヨーヨーのトリックについて調べたりする。そういう習慣だ。
そこで最近の記事にも書いたとおり*6、リマインダーを設定した。もちろん「繰り返し」の頻度は「毎日」だ。これでヨーヨーを忘れる日は無い。
リマインダーの通知に気がついたら、とりあえず数分だけでもプレイする。スケジュールや体調の問題で長く続けることができなければ、すぐに止めてもいい。とりあえずちょっとだけやるのだ。そうしてやる気が出てきたらヨーヨーを続ける。『独学大全』でいうところの技法5「2ミニッツ・スターター」だ。
これを実践するコツは2点ある。「必ずリマインダーに従う」と「すぐに始められる準備をしておく」である。後者については「やることの明確化」や、「ツールを取り出しやすくしておく」などが挙げられる。なのでヨーヨーの置き場所は机の脇とし、手を伸ばせばすぐにとれるようにした。
そしてやったらそれで終わりにせず、毎日記録をつける。どれくらいやったか、何をできるようになったか、何のサイトを見て学んだのか、など。3分程度しかやらなかったのなら「ループ・ザ・ループを3分くらい練習した」というように書く。熱が出てヨーヨーどころではなかった時は「ワクチンの副反応でサボり」と書いた。
この記録の仕方は筋トレを始めた時にやっているのだが、習慣を作る上で効果的である。毎日何かしらを記録していくことで着実に文字が積み重なり、前に進んでいることを実感できる。もちろん後から振り返られるのも良い。ちなみに『独学大全』では技法12「ラーニングログ」がこれにあたる*7。
このようにヨーヨーへの挑戦を始めた。そしてすぐに不安定ながらもスーパーレベル(2010)*9をクリアした。しかし、ハイパーレベル1st(2010)でつまずく。
これはヨーヨーが悪いのでは?
金ならある
俺が持っていたハイパーヨーヨーはフリーハンド。そこには「BANDAI 2003」と書かれていた。手に入れてから一度もメンテナンスをしたことがない。分解してみるとベアリングにはサビがあるし、パッドはボロボロだ。
ヨーヨーがこんな状態だからスリープが傾いたり、きれいなループを描けないのではないか。この仮説を検証する方法は簡単だ。新しいヨーヨーを買えばよい。
ちょっと調べてみたところ、今のヨーヨーは昔とは比べ物にならないくらい性能が上がっているという。「昔」がいつを指すのかは不明だが、2003年は充分に昔だろう。ということで買った。
my new gear pic.twitter.com/sAexA1mKrp
— 骨しゃぶり (@honeshabri) September 12, 2021
ONE STARは初心者向けの金属ベアリング搭載のヨーヨーである。
金属ベアリングだから長時間回るし、「ウィングシェイプ」と呼ばれる外側にかけて広がる形状は糸に乗せやすく、エレベーターやブレイン・ツイスターなどのトリックが簡単にできる。しかもスターターセットを買えば、パーツ交換で簡単にバインド仕様*10に変更することもできる。
BLACKも初心者向けヨーヨーの決定版としてこのONE STARを推している。
この動画は2020年となっているが、backspace.fmで話していた時もこのONE STARを勧めていたので、今でも初心者にはこれがベストの選択肢なのだろう。
もう片方のLOOP 720は、その名の通りループ向けのヨーヨーである。
こちらも軸は金属ベアリングであるが、ONE STARと違って幅が狭くなっている。この幅がループトリックに最適らしい。レビューには「これのおかげでダブルループができました」なんてのがゴロゴロある。ということでONE STARと一緒に買った。大人だから金ならある。
なお、ヨーヨーに詳しい人なら知っていると思うが、ONE STARもLOOP 720もハイパーヨーヨーではない。「ハイパーヨーヨー」はバンダイの登録商標である。ONE STARとLOOP 720はヨーヨーファクトリーの製品だ。なのでハイパーヨーヨーのトリックはできるが、ハイパーヨーヨーではないのである。
ミニ四駆にタミヤ純正パーツしか付けなかった小学生の俺ならば、この選択はしなかっただろう。きっとハイパーヨーヨーに拘っていたはずだ。しかし今は違う。iPhoneのアクセサリはApple純正ではなく、AnkerやSpigenを使う大人になった。純正に拘らず、信頼性とコスパの観点から選ぶのだ*11。
フリーハンドをクビにし、ONE STARとLOOP 720でトリックに挑戦する。あいかわらずスリープで傾き、ヘロヘロとしたループになる。
大人をなめるなよ。
正しく基礎からやり直す
初心者向けの新品ヨーヨーを使ったことで、問題は俺の技術にあることがはっきりした。これが要因の切り分けである。
問題が明確になったのなら、あとは対処すればいい。つまり練習である。しかしやみくもに練習しても意味はない。「正しい動き」を身体に覚えさせてこそ、意味のある練習であると言える。まずは正しい動きを知るところから始めないといけない。
俺が小学生の時とは違って、今はインターネットで好きなだけプロの技を見ることができる。それどころか、解説動画もふんだんにある。なんと素晴らしい。そこで基礎の基礎、ロングスリーパーの動画を真剣に見ることにした。
繰り返し動画を観察していると、俺の問題が見えてきた。
- 糸を中指の根本にはめている (本来は第一関節と第二関節の間)
- 投げ下ろす時に肘が真下まで下がっている (手本では肘は身体の前のまま)
- 投げると同時に手のひらを返している (手本ではヨーヨーがスリープしてから返している)
そんなわけでここ数日はひたすらロングスリーパーの練習をしている。小学生の時に身につけた誤った癖を直すには、1回1回ちゃんと意識して投げなければいけない。だが意識すればスリープで傾くことが減ってきた。
今更ロングスリーパーかよと思ってしまうが、堂本瞬一もハイパーレベル '97に苦戦した時はヘビーブレインでひたすらロングスリーパーをやっていた*12。つまりこれは伝統的な流れと言えよう。ヨーヨーに鉛を仕込むつもりはないが、俺も基礎を固めることに集中する。
終わりに
理想を言えば、俺も最初はできなかったけど今はできるようになりました、と華麗なプレイを披露したい。しかし残念ながら、まだロングスリーパーをやり直している最中である。なので見せられるものは何もない。
それでもこの段階で記事にしたのは、世に向かって宣誓することで、決意をより強固にするためである。言ったからにはやるしかない。これが技法13「ゲートキーパー」である。
ここまで環境を整えれば、あとは地道に練習するだけだ。小学生の時ほど元気も時間もないが、今は知識と金、そして長期的な視点を持っている。プロは無理でも、ある程度のレベルにまでは行けるはずだ。
ヨーヨーよ、大人をなめるなよ。
参考書籍
この記事およびヨーヨー上達に向けて参考にしている本。
『独学大全』
よく使うやつ。「勉強」の本というイメージが強いが、スキル習得にだって使える。実際、使用例の一つは外国語学習であり、これはスキル習得に近いものがある。それならヨーヨーにも使えて当然だ。
『たいていのことは20時間で習得できる』
新しい物事に挑戦し「そこそこ」できるようになる方法を示した本。スキルを獲得する方法の解説は大した分量ではなく、ページの大半は筆者が様々なスキルを獲得する体験記に割かれている。
今回ヨーヨーに挑戦してみようと思ったのは本書の影響が大きい。backspace.fmを聞いて「ヨーヨー挑戦してみようかな」と思った時、まず本書の存在を思い出した。これを参考にして進めたら、わりと早くヨーヨーを楽しめるレベルに到達できるのではないか、と。本書の方針ほど徹底してやってはいないので、ヨーヨーを20時間で習得できるかは怪しいが、それでも小学生の時よりは効率的に上達するのではないかと思っている。
『成功する練習の法則』
いかにして効果的な練習によってスキルを高めるかという本。スキルを高めたい人が読んでも役に立つが、教師やコーチなど、人にスキルを教える立場の人が読むといい。
本書の中核にある考えは「練習によって永遠になる」である。「練習によって上達」ではない。正しい動きを体に覚えさせることが重要であり、そのためにはどうするべきか。まずはスキルを分割し、個々を完璧にこなせたら組み合わせ実戦へ近づける。それが正しい練習である。
『超速スピナー』
せめて1巻のレベルにまでは到達したい。
続き
練習の様子を動画撮影するようになった。
*1:BLACK: ヨーヨーの達人への道 | TED Talk
*2:BLACK at Cirque du Soleil KURIOS
*3:TED動画、SEから世界一に返り咲き 「TED 2013」に唯一出演した日本人・BLACKさんのヨーヨーと“再起”(1/3 ページ) - ITmedia NEWS
*4:ハイパーヨーヨーオフィシャルトリックとは (ハイパーヨーヨーオフィシャルトリックとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
*5:Oculus Quest 2を買って腕を振り回している|honeshabri|note
*6:ヘッドセットでリマインダー音声入力という言霊2.0 - 本しゃぶり
*7:厳密に言えば『独学大全』のラーニングログはもう少しやり方がちゃんとしている。最初に学習目標を決め、それに対する進捗を記入する形を取っている。
*8:日記をリアルタイムに書くというソリューション - 本しゃぶり
*9:内容はベーシックレベル '97とほぼ同じようなものと思えば良い。ハイパーヨーヨー | トリック一覧
*10:バインドとは糸を引いても戻らないヨーヨーを手に戻す技術のこと。現在のヨーヨーの中には長時間のスリープを実現させるため、普通に糸を引いても戻らないタイプのヨーヨーがある。それがバインド仕様だ。
*11:もっとも、製品を一つ一つ確かめる余裕は無いので、結局は信頼できるブランドの中から選ぶのだが。
*12:『超速スピナー』1巻。