本しゃぶり

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【ヨルダン】俺を浮かすのに塩はいらない / 死海とやらを体験する

死海の話後編。

2013年10月17日
朝日に照らされる死海のビーチにトランクス一丁で歩く日本人男性が一人いた。どうしてこうなった。

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死海ホテルのカフェ

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現地調達は基本

話は出発前にさかのぼる。俺は水着を持っていない。それどころか最後に着たのがいつか思い出せない。最後に海に入ったのは10年以上前だし、プールも中学を卒業してから入った記憶が無い。今年の夏には海水浴場に行ったが、車を降りた段階で俺は海に背を向けた。海で遊ぶより大洗の街を探索したかったのだ。そんな感じの人間なので水着を持つ必要がないのだ。

死海に行くにあたって俺は水着を買う必要はないと考えていた。俺は荷物をできるかぎり減らしたい。必要な物があれば現地調達すればいいと思っている。だからREVOLTECHをカバンに入れても水着は用意しなかった。そんな感じで出発し、前回へと至る。

ホテルのテリトリー

死海を味わってから考えた。さてどうするか。見渡すと人がプカプカ浮いている。どれもまだ生きてる。東の果てからはるばるとやってきたというのに入らず帰るのはどうかしている。よし、水着を調達しよう。

完全に誤算だった。俺は日本の海水浴場みたいな状況を想定していた。つまり様々な店が死海の周囲に点在しているという状況だ。しかし現実は違っていた。俺が行ったあたりは各ホテルが自分のプライベートビーチとして死海の一部を専有している。そこにはホテル関係者以外の商売は禁じられていた。

しかたがないのでホテル内のお店に行くと水着が色々売っていた。一番安いのはたったの35ディナール。当時のレートにして5300円である。たけーよ。半日着てそれ以降使わないもののために5千円とかいくらなんでもねーよ。これがマリンダイビングとかならまだわかるぞ。やるのは浅瀬でプカプカ浮くだけだからな。いくらなんでもありえないだろ。あまりの値段に立ち尽くしていると店員が話しかけてきた。

店「水着欲しいのか?」
俺「これ高すぎるだろ」
店「よし、特別に25ディナールにしてやろう」

やったね!いきなり3割近く安くなったぞ。つまり日本円にして3800円だ。十分たけーよ。俺は水着を買うのを諦めた。

記念とパンツと羞恥心

俺のヨルダン旅行は無念のうちに終わるのか。こんなことなら水着と名の付くものならありとあらゆる種類を揃えている大洗のアウトレットで買っておくべきだったか。後悔に身を委ねようとした時、ある言葉が頭をよぎった。

「イケますって!ちょっとのお金と明日のパンツさえあれば!」

世界各国を旅した男の言葉だ。俺は手持ちのパンツを数えた。なんと2枚も余裕があるではないか。水着がなければパンツで入ればいいじゃない。水着もトランクスも見た目は対して変わらない。それがどんなにパンツに見えても水着といえば水着だし、ズボンといえばズボンなのだ。

ソウチョウ作戦です!

問題はいつ決行するかだ。調べてみると死海が昼間は暑い上に人が多いので朝6時に行くといいと書いてあった。人間が朝の6時に起きられると思うか。いや、6時に入るなら起きるのは5時くらいじゃないと…… 一瞬ためらったがよく考えたら俺は普段から6時に起きていた。しかも時差の関係上、早くに目が覚めやすい。問題なんてなにもないよ。

人がいないのであればパンツも水着も変わりはしない。仮に人がいても離れたところにいればわからないだろう。観測者がパンツと認識するまでの間は、俺が履いているのは紺色的な何かだ。いわゆるシュレディンガーのパンツである。決まりだ。明日の朝6時に入ろう。名付けてソウチョウ作戦だ。

次の日の朝、ロッカーで着替えた(脱いだだけだが)俺はパンツ一丁になっていた。ソウチョウ作戦開始です。パンツァー・フォー!

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人いるじゃねーか

これは予定外だった。まず白状しておくと俺が外に出たのは7時半頃だった。だって6時はまだ外が暗かったし。きっと6時に行った人は夏に行ったのだろう。だが季節は既に秋。地軸が太陽に対して傾いているために起きた悲劇だった。6時に起きられない人間も7時には起きられる。ビーチには既に人がいた。行くのを止めるべきか。一瞬そう考えたが、西住流に逃げるという道はない。俺は前へと歩を進めた。あとには退けない砂浜です!

晴れ渡る死海はAT-X

死海に降り注ぐ日差しは朝から強烈だ。正にひだまりポカポカ状態。それなのに、それなのにだ。強い光があるのにもかかわらず、俺のパンツはしっかり見えている。普通パンツ姿で外にいたら太陽光線でちょうどパンツだけ見えなくなるんじゃあないのかよ。きっと死海からこっちを見ている男性の視界にも俺のパンツは映っているだろう。そうかここがAT-Xの世界か。この世界でも俺は歓迎されていないようだな。

だが今さらあがいても仕方ない。俺は堂々と歩く。パンツだけど恥ずかしくないし。

どこでも浮ける

そしてついに死海に入る。思ったよりヒリヒリしない。そして浮いた。写真みたいに仰向けになってプカプカ浮いている。浮いた状態で泳いでみる。もちろんうつ伏せになるつもりは無い。本日天気晴朗なれども塩辛し。口に水が入るとヤバイのは昨日体験している。仰向けのまま移動している。

……

飽きた。だってただ浮かぶだけだし。もういい!もうたくさんだ!トランクスを脱ぎ捨てる!さすがにこの場で実行しなかったが、俺は限界を感じ死海から出る。明らかに水着じゃあないへばりつき方をする物を身にまとい、俺は部屋に戻り始めた。なんか周りでは水着になった人達が楽しそうにはしゃいでる。明らかに俺は浮いている。

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