本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

日記をリアルタイムに書くというソリューション

なぜ人は日記が続かないのか。
それはリアルタイムに書いていないからである。

言葉を頭の中に思い浮かべた時には、その場で記録を終わらせろ。

リアルタイム日記が続いている

プライベート用にリアルタイムで日記を書くようになって2ヶ月が経過した。これがなかなか良い。

もともと日記と呼べるものは以前から書いていた。1日の終りに今日やったことを5つ書き、それに5段階評価をつけるという手法だ。これは2011年4月頃から始めたので、9年以上続いている。

しかし1日5行では内容があまりにも貧弱だ。何か書きたいことがある日は追加で書くこともあるが、大半は5行書いて終わり。天文学者のクリフォード・ストールは、著書『カッコウはコンピュータに卵を産む』で「文章のないところに現象はない」と述べた。俺の1日は5行分しかないのか。

そう思いつつも日々5行で済ませていたのだが、2,3ヶ月前、似たような話を複数のソースで聞いた。日記を書くのはリアルタイム、つまり何か出来事があれば、その時に書いてしまっている、と。

これは俺にとって目からウロコであった。日記というものは、1日の終りに書くものだと思い込んでいたからである。言われてみれば、1日の終りまで待つ必要は無い。現に仕事での記録はその時に書いている。むしろ後で書こうとするのは忘れてしまうので避けるべき事柄ではないか。

リチャード・ワイズマン曰く「運のいい人は新しい経験を喜んで受け入れる」*1。さっそく始めたところ、頭の中が整理されるし、無理なく2ヶ月続いた。この知見を共有したい。

何をしているの?

このリアルタイム日記はEvernoteで書いている。

やり方としては特にEvernoteに拘る必要はない。採用した理由は俺がメインで使っているメモアプリであるからだ。どんな機能があるかというより、一番使い慣れたものであることの方が重要だと思う。なんなら紙のノートでもいいだろう。 (俺の使い方だとリンクを貼ったりコピーしたりするのでなるべくデジタルの方がいいが)

まず1日の始めに、ノートを新規作成する。それが本日のページだ。本日のページは開きっぱなしにする。画面に余裕があるなら、常に表示させておく。俺は普段トリプルディスプレイなので、右のディスプレイで開きっぱなしにしている。

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画面配置

このページに思いついたことがあったらすぐに書き込む。見た記事に対する意見、ふと思った疑問、新しく分かったことなど。内容に制限は設けない。むしろ細かく書いたほうがいい。思考の流れをそのまま写し取るような感じで。今日書いた一部を例として出そう。

『知的生産の技術』に出てくる京大カードのB6ってどれくらいのサイズなんだ?
サイズ別ノートデータ一覧 | 趣味文CLUB http://shumibun.jp/basic/detail/683/
どうやらパスポートサイズがB7なので、パスポートを見開きにしたサイズのようだ
ズボンのポケットに入れるには大きすぎるな

例の中に出てきた『知的生産の技術』でも日記は、なるだけこまめに記録をとることに努力する、と書かれている。

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

ただ、本書での日記は実験や野外調査の記録に着想を得たものなので、どちらかといえば「記録」としての面が強い。俺の日記はどちらかというと本書でいうところの「発見の手帳」に近いだろう。ダ・ヴィンチのように、興味を持った現象やアイデアをひたすら書き留めていくのだ。

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Leonardo da Vinci (1452-1519) / Public domain, Link

リアルタイムに日記を書くというと、『未来日記』を思い出す人もいるかもしれない。俺の日記は自分の内面に偏っているので、あまり強くなさそうだ。

また、俺の日記の特徴としてはURLが貼られていることが多い。疑問があったらまずネットで調べるので、答えが書いてあったページへのリンクを貼っておく。調べ物をしていると後で「あれ、この内容はどこのサイトに書いてあったのだっけ」となることが度々あるからだ。また、何かに興味を持ったり考える切っ掛けとなるのもネット由来が多いので、それへのリンクを貼っておく。

このような形でひたすら「本日のページ」に書き込んでいくだけである。ただし、日付が変わったらそれ以上は書き込まない。また新しい「本日のページ」を作成するのだ。もし前日の続きを書きたいなら、前日へのノートリンクを貼って、その下に続きを書き始めている。

何がいいの?

やり方は上記の通りなのだが、このような日記を書くメリットは何があるのか。俺の場合、最大のメリットは思考がループしないことだ。これを語るにはまず、鉄鋼王カーネギーの逸話から始めたい。

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Bain News Service, publisher / Public domain, Link

成功したはずのアンドリュー・カーネギーは、ある晩、自殺をしようとしていた。人間関係や会社関連のトラブルなど、あまりに多くの悩みを抱えていたためノイローゼになっていたのだ。ついに自殺を決意し、遺書を書こうとしたところ、カーネギーはふと思った。「俺にはどれくらい悩みがあるのだろう」と。

そこでカーネギーは便箋に悩みを箇条書きで書き出した。すると、60個あたりで手がぴたりと止まる。常人からしたらこれでも十分に多いが、カーネギーにとってはそうではなかった。死にたいくらいなのだから、1,000個はあると思っていたのだ。

さらにひねり出しても、悩みは100個にすら届かない。そうやって書き出された悩みを眺めるうちに、カーネギーは落ち着きを取り戻す。そして出した悩みを緊急度で分類し、方針が決まったところで妻と夕食に出かけたのであった。

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Bain News Service, publisher / Public domain, Link

この逸話から何が言えるだろうか。一つはカーネギーのような優秀な人でさえ、問題を頭の中だけで処理しようとすると、悩むだけで解決に向かわないということ。もう一つは頭の中を書き出すことで、客観的に捉えることができるということだ。

人は問題を複数抱えると、思考がループしがちである。問題を思い浮かべることにリソースが使われ、解決へと進むことができなくなる。そこで問題を書き出したらどうなるか。問題を見ることで把握できるので、思考に余裕が生まれるのだ。そしてどうしたらいいか、一歩ずつ考えることができる。

この書き出すメリットは日記を始める前から知っていたし、必要に応じて活用していた。例えば旅行に行く時は分からないことが多いため、疑問点を書き出し、一つ一つ調べることで解決している。具体的な話は以前記事に書いたので、興味のある人は読んでほしい。

この手法は日常的には使っていなかった。しかしいざ意識して使うようにすると、使える場面は意外に多い。例えば買い物。俺は引っ越しを機会にスチールラックを新たに買おうとした時のことだ。スチールラックだけでも選択肢が多く、どこから手をつけていいか分からなくて困ってしまった。行動経済学で言うところの意思決定の麻痺(ディシジョン・パラリシス)である。

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Frank Kovalchek from Anchorage, Alaska, USA / CC BY, Link

そこで俺は日記に書きながら選択を進めていった。メーカーごとの特徴を書き、それに対する見解を書く。自分がどのように使いたいかを書き、それにあったサイズを書く。懸念や疑問があれば書き、それについて分かったことがあれば書く。どうしてこの選択をしたのか忘れたら、日記を見返せば良い。こうすることで思考ルートが明確になり、最終判断へ着実に進むことができたのだ。

「引っ越しを機会に」と書いたが、日記を始めたのが引っ越しの前で良かった。俺は引っ越しに慣れていないので、分からないことが多い。それに引っ越しは決めなくてはいけないことが多くある。もし日記を書いていなかったら、精神の消耗が激しくて辛かっただろう。

この他にも日記を書くことには、アイデアを忘れずに残せたり、ちょっとした達成感を得られるといったメリットもある。少なくとも俺は書くというコスト以上のリターンを得ていると感じているし、続けることに苦痛を感じない。ただ、そうなるためにはポイントがあると考える。

何がポイントなの?

人が日記を続けられない理由は、頭を使わないといけないからだと考える。今日は何があったのかを思い出す。何をどのように書くべきなのか。そういった様々な思考を求められるのがコストとなり、日記から遠ざかる理由となる。人はできるだけ頭を使いたくないのだ。

だからこそ、日記を書く上で頭を使わないように環境を整えるのが肝心である。俺が「本日のページ」を開きっぱなしにしているのはそのためだ。記録を行うコストが最小限であるため、この内容を記録するかどうか判断する必要は無い。日記の存在も忘れない。だから書き続けることができるし、メモとして機能する。

先ほど日記は買い物に使えるという話を書いた。これに対して「日記の形式で書くよりも、テーマごとにノートを作成して書くほうがいいのでは」と考える人もいるだろう。これは一面では正しい。情報が日によって分断されていると、見返しにくいのは確かである。だが、書かれないものは見返せない

もし小さいことでもテーマごとにノートを作成する運用だとどうなるか。何かちょっとしたこと書こうとした時、様々な判断をしなくてはならない。この件は既存のノートに書くべきか、それとも新たにノートを作成すべきか。新たにノートを作成するなら、どこに何というタイトルで作るか。タグはどうする? 行き着く先は「意思決定の麻痺」だ。結局何も書かずに終わってしまう

これが「本日のページ」に書くと決めていたら、こうはならない。どこに書くか考える必要は無く、選択肢は常に一つだ。今開いている「本日のページ」の一番下に追記すれば良い。だから書ける。『書き残す』と心の中で思ったなら、その時スデに行動は終わっているのだ。

もしテーマごとにまとめた方がいいと思ったなら、後で日記から該当箇所をコピーしてまとめればいい。デジタルなら検索できるのだから、まず書き残すことを最優先に考えるべきだ。だから記録する方式は、自分が最も使い慣れたものを選ぼう。とにかく書くコストを最低限にする。これが一番のポイントだ。

終わりに

このような感じでプライベートでも日記をリアルタイムで書くようにしている。これまでもブログのネタは細かくEvernoteに残すようにしていたが、今は日記からネタが生まれることもある。例えば「キュロットの記事」は日記産だ。

キュロットって何?から始まり、日記に調べたことを書いているうちに「これ記事を書けるな」となって記事化した。リアルタイムに日記を書くことはストレスが低減され、生産性が高まる。これからも続けていきたい。

参考書籍

本記事を書く上で使った本。

『知的生産の技術』

知的生産の技術 (岩波新書)

知的生産の技術 (岩波新書)

執筆を始めとする何らかの情報を生産するための基礎的なテクニックや考え方について書いた本。「この方式でやれ」ではなく、著者の試行錯誤の結果を紹介するという形式である。1969年に出た本なので内容に時代を感じることもある一方で、現代にも通じる話がある。今なら具体的なやり方よりも、目指すところは何かを意識して読んだほうが良い。

『スイッチ!』

スイッチ!

スイッチ!

いかに考えずに行動させるかが重要なのかは本書で学んだ。「意思決定の麻痺」はジャムの逸話*2で知っていたが、本書を読んでより全体像が分かった気がする。身も蓋もない言い方をすれば、人は頭を使わない選択をするのだ。

本書はこれまでも何度かブログで取り上げている。わりと使い勝手の良い本だ。

『スマートノート』

岡田斗司夫のノート術の本。前からやっていた5行日記は本書が元ネタ。あとカーネギーの逸話も本書で紹介されている。岡田斗司夫という文字列を見ると拒否反応を示す人もいそうだけど、内容は悪くないと思っている。

このノート術は思考を発展させることを目指すものだ。目指すところは、ノートで独自の考えを作れるようになったら情報発信、である。本書を読んだ時はまだ「本しゃぶり」を始めていなかったけれど、今はこうして毎週のように記事を書いている。それなりに効果があるのかもしれない。

記録することの記事

*1:運のいい人の法則 (角川文庫) | リチャード・ワイズマン博士, 矢羽野 薫 | Amazon

*2:スーパーでジャムの試食を行った際、6種類展示した時と24種類展示した時では、6種類の時の方が売上が10倍多かったという話。