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【ご注文はうさぎですか?】アニメに学ぶリーダーの育て方

マンガやアニメから学べることは多い。
単純に知識として学べるだけでなく、どのように振る舞うべきかも学ぶことは十分可能だ。

今回はアニメを通じて「偉大なリーダーを育てるにはどうすればいいか」を説明しよう。

きっかけ

リクナビNEXTジャーナルで連載されている『大事なことは全部マンガが教えてくれた』シリーズというものを見た。そういえば以前にも似たようなのを見たと思ったら同じシリーズであった。

マンガやアニメなど、特定の作品から学ぶいうネタは嫌いではないが、2回連続で「リーダーのあり方」をネタにするのは芸が無い。更に見てみると、現時点で実に連載の3割が「リーダーのあり方」について書かれている。大丈夫かこのシリーズ。

ここは一つリクナビに代わって俺が別のネタで書いてやろうと思う。タイトルにあるように「リーダーの育て方」についてだ。下っ端ならリーダーのあり方を知るのもいいと思うが、上の人間が知りたいのは「そんなリーダーをどうしたら育てられるのか」である。これについては今季の作品の中で、最も人の上に立つのが自然な彼を参考にするのがいい。

『ご注文はうさぎですか??』1話

『ご注文はうさぎですか?』に登場する喫茶店ラビットハウスの元マスター、ティッピーである。

お仕事アニメ『ごちうさ』

まず最初に『ご注文はうさぎですか?』について知らない人もいるだろうから簡単に説明しておこう。『ごちうさ』は喫茶店の仕事を通じて少女たちが成長していく姿を描いた、いわゆる「お仕事アニメ」である。この作品はメインキャラが高校生と中学生であるのに学校より仕事中のシーンのほうが多く、彼女らの勤労精神には目を見張るものがある。なにせクリスマスでも働き*1、友達のお見舞いに行った先でも働き*2、妹に会うため遠路はるばるやってきた姉も働く*3ほどなのだから。

『ごちうさ』のメインキャラを紹介する。

『ご注文はうさぎですか??』1話

左が舞台となる喫茶店「ラビットハウス」の一人娘のチノである。彼女の頭の上にいるのが先ほど紹介したティッピーで、彼はこの喫茶店の元マスターであるとともに、チノの祖父でもある。右はココアという名のバイト。この記事ではティッピーがいかにしてチノを後継者に育て上げようとしているかを主軸に書いていく。

リーダーの育て方

さて、本題である「リーダーの育て方」だが、何の根拠もなく説明しても納得してもらうのは難しいだろう。なので参考文献としてこれを取り上げる。

あのamazon創業者でCEO、ジェフ・ベゾスも愛読書の一つとして挙げる名著である。この本に照らしあわせながら、リーダー育成について解説していく。

1. 生え抜きの後継者

まず重要なのがチノが中学生の頃から働いているという事実だ。まだ義務教育が済んでもいない時から経営に参加させることで、その真っ白なキャンバスをラビットハウスの色で塗りつぶしてく。これにより彼女が店を継ぐことになった時、経営者の継続性が保たれ、基本理念が維持されることになる。

『ビジョナリー・カンパニー』においてまず重要視されるのがこの「基本理念」であり、これを貫き通せるかによって企業が存続し成長していけるかが決まる。この際に重要なのは基本理念の中身ではない。それよりも社員全員が心の底から信じることができ、あらゆる状況で理念の下に一貫した行動を取れることが重要なのだ。こうすることでエネルギーが浪費されることはなく、前に進むことができる。だからこそトップに立つべき人間は基本理念に染まりきった者、すなわち生え抜きであることが望ましい。

『ご注文はうさぎですか??』1話

「生え抜き」や「継続性」という言葉を聞くと、それに続いて「硬直」とか「停滞」といった言葉が浮かんでくるかもしれない。凝り固まった考えで時代の変化に対応できるか、と。このような疑問に対する解答が彼である。

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"JackWelchApril2012" by Hamilton83 - Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Commons.

フォーチュン誌で「20世紀最高の経営者」に選ばれたゼネラル・エレクトリック社の元CEO、ジャック・ウェルチだ。ウェルチは企業変革の旗手として知られ、GEを変えた人物であるが、外部からやってきた救世主ではない。職歴のない25歳でGEに入社し、そのまま出世の階段を上がってきた文字通りの「生え抜き」である。

なにもウェルチに限った話ではない。GEの歴代CEOもまた「生え抜き」でかつ「改革者」であり、他のビジョナリー・カンパニーにおいてもまた同様である。なぜならばビジョナリー・カンパニーの基本理念は「進歩への飽くなき意欲」と密接に関連しているため、基本理念を維持するがゆえに進歩を求めるからだ。なので基本理念を若いうちから叩きこまれた生え抜き達は改革者となって、組織を前へと進ませていくことになる。

2. 付与された権限

後継者が生え抜きであることが重要だと言っても、ただ若いうちから働かせればいいというものでもない。将来リーダーになってもらいたいのであれば、権限を渡し自主性を発揮できるようにしなくてはならない。そうすることで企業に進歩をもたらすのである。

チノはまだ中学生であるが、重要な仕事を任されている。それはバイトへの指示と教育である。アニメで描写されている範囲においてマスターからバイト達へ指示されることはまず無く*4、仕事の割り振りはチノによって行われている。教育についても同様だ。バイトへの対応についてはチノに一任されていると言っていいだろう。この「バイトへの対応」という仕事は、将来チノが人を使う立場になるということを考えれば、早いうちから学ばせるという点で正しい選択だ。

しかしチノにとっては難易度の高い仕事であるというのもまた事実。バイト達はチノより2~3歳も年上である。社会人ともなればこの程度の年上を指導するなどよくあることであるが、彼女らはまだ中高生だ。自分がそれくらいの年の頃を思い出して欲しい。たかだか一つ年上というだけで服従しなくてはいけない、というのがこの年頃の社会である。なのにチノは中学生の身で高校生を指導しなくてはいけないのだ。そんな逆境の中、彼女は立派に勤めを果たしている。間違いなくリーダーの素質があると言っていい。

『ご注文はうさぎですか?』1話

この権限を積極的に与えるというのはビジョナリー・カンパニーの特徴の一つである。さらにビジョナリー・カンパニーとされた18社の内、フィリップ・モリス、3M、アメリカン・エキスプレスにいたっては基本理念に「自主性」という単語が含まれているほどだ。ビジョナリー・カンパニーがこういった特徴を持っている理由は、先に挙げた基本理念を最重要視しているからである。ジム・ノードストロームがスタンフォード大学で語った内容を引用しよう。

店員はすべて販売の専門家だと当社では考えている。専門家には規則はいらない。基本的な指針は必要だが、規則は不要だ。ノードストロームでは、基本的な価値と基準を守っていさえすれば、仕事を進めるために何をやってもいい。
ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

ただ何の規律もなく自主性に任せていては堕落することになるが、基本理念が浸透していれば社員はより良くするために働く。そこには創意工夫が生まれ、企業が進歩していくことになるわけだ。

3. 放任せず監督する

基本理念で染まった者に任せれば後はなんとかなると言う程、経営は単純なものではない。人を動かすにはアメとムチがいる。社員に与えられる権限がアメであるならば、その行動を管理し評価するシステムがムチにあたる。人は間違えるものであるし、楽をしたいものであるから、正しい方向へ進むための仕組みが必要なのだ。

例えば社員の自主性ということで有名な3Mには、ポスト・イットを生み出した「15%ルール」というものがある。これは「執務時間の15%を自分の好きな研究に使ってもよいとする」もので、以前Googleも採用していたものだから知っている人も多いだろう。だが同社にはもう一つ「25%ルール」というものがある。

各部門に対して、売上の25%を過去5年間に発売された新商品と新サービスであげるよう求める*5
ビジョナリー・カンパニー 時代を超える生存の原則

このようにただ好きなことをやらせるだけでなく、それが実益に繋がるよう促すシステムが存在するわけである。

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"Fry-lightbulb-on-forehead1" by Tinkeringbell - Own work. Licensed under Public Domain via Commons.

さてティッピーはどのような仕組みを用意したか。ラビットハウスがまだ一つの店舗であること、店の経営は息子(チノの父)に任せているということ、そして自身がアンゴラウサギの姿をしていることから革新的な方法を生み出した。それは「常にチノの頭上に居座り、その一挙一動を監視する」というものだ。

『ご注文はうさぎですか?』1話

この方法が優れている点としてまず「業務におけるチノの行動を全て見ることが出来る」というものがある。そして何か問題があれば、その場で注意も助言もすることが可能だ。さらに「チノに対するバイトや客の反応を直に見れる」という点も見逃せない。表情の微妙な変化や声の調子といった細かいことまでリアルタイムにわかるのだ。また、チノの頭上に位置するため、彼女の視界にティッピーは入らないというのもいい。上司の視線を感じながらの仕事はストレスになるが、その問題も無いわけである。

ラビットハウスの将来性

では以上の教育方法の成果はあったのだろうか。これは断言できる。チノはリーダーとしての道を着実に歩んでいる、と。彼女の仕事は先に書いたようにバイトへの指示と教育である。つまりバイトがどれほど成長しているかでその成果が測れるわけだ。ここで1期最終回を振り返ってみよう。最終回はお仕事アニメにふさわしく、職業インタビューの話であった。そこで仕事のやりがいは何かと聞かれたバイトはこう答える。

「お客様の笑顔です」

『ご注文はうさぎですか?』12話

バイトにも基本理念が浸透した結果である。バイトへの教育が上手くできている紛れも無い証拠だ。そしてまた、ティッピーのリーダー育成もまた上手くいっているわけである。ラビットハウスはビジョナリー・カンパニーへの道をゆっくりとだが着実に歩んでいると言えるだろう。

このように『ごちうさ』からはリーダーの育て方を物語形式で楽しく学ぶことが出来る。もちろん実際にアンゴラウサギになれとは言わないが、これで学んだことを現実に反映させるということは決して無茶では無いはずだ。俺はこれからもアニメやマンガから色々と教わっていくことになるだろう。

続き

*1:1期12話

*2:2期2話

*3:2期5話

*4:せいぜい「今日はもう上がっていいよ」と言うくらいだろうか。

*5:後に30%を過去4年間のものと、より厳しいルールに改定された。