本しゃぶり

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高専における過去問引き寄せの法則

たまには高専の後輩のためになるような記事を書こうと思う。
これを読んで実行すれば赤点を取ってしまうことは無くなるし、留年の心配も消え去るはずだ。

最近これを読んだ。

それゆけ女子高専生 | タテカラー漫画を読むならcomico

多少の違いがあるとはいえ、どこの高専も概ね似たようなものらしい。俺が高専を卒業してしばらく経つが、コメントを読む限り今でも同じようだ。Twitter見ていて知っていたけれども。

さて、高専生の悩みの一つに定期試験の存在がある。高専を知らない人のために説明しておくと、高専では単位が取れないと1年目(高校1年相当)から簡単に留年する。そして科目によって細かい点は異なるが、基本的には試験で平均60点以上とらなくては単位を得られない。実情をもう少し知りたい人は7話を見よ。

そんな試験に怯える高専生の心強い味方が過去問であるが、他人との繋がりが薄い人間は手に入れるのが難しい。だがそれでも諦めることは無い。俺は基本的に人付き合いが悪く、それゆえに交友関係も限られていた。だが全ての科目で過去問を揃えることができていた。そこに至るまでの流れを以下に記す。これは実話である。

1年目 初期状態

この頃はまだ過去問に手を出していなかった。かといって日頃から真面目に勉強していたわけではなく、やるのはテスト前のみ。成績はちょうど真ん中あたりを漂っており、赤点を取ることはまず無かったが、高得点を連発というわけでもない。最近聞かなくなった真面目系クズに近い状態であった。

過去問の存在は知っていたが、入手しようとは思わなかった。積極的に成績を上げる気はなかったし、そもそも入手できるような交友関係を築くのが面倒であったのだ。当時の俺の交友関係はごく一部に留まっており、他の人とは以下の状態である。

  • 同級生:同じ学科ですら顔と名前が一致するのは30%も無かった*1
  • 先輩:ほぼ無し。部活でも寮でも先輩との接触は積極的に避けていた。

この状態から俺はスタートしたのであった。

2年目 点数がアップ

貴重な友人の一人が2,3科目の過去問を持っていたので見せてもらう。この時が俺と過去問の本格的な出会いである。わざわざ過去問を集めようとはしていなかったが、使わないことに固執していたわけではない。見せてもらった過去問は解けるように勉強した。

「ここ過去問でやったところだ」

試験に過去問そのままと言っていいような問題が出ていた。当然正答し、高得点を取れた。これ以降、過去問の力を知った俺は試験の時期になると、過去問を持っていないか友人たちに尋ねた。しかし友人が少ないため、手に入れられた科目は限定的であった。さらに得られたものも何度コピーを重ねられたか不明で、ひどく読みにくい状態のものしかない。もっと欲しければ友人に頼るだけではダメなのだ。

3年目 機会をコントロール

次の年も寮に残るため、俺は成績を上げなければいけなかった。そこでマジメに勉強し始める…… わけではなく、本格的に過去問を集めることにした。過去問を見た科目の点数を取れたのだから、全ての過去問を集めれば全ての成績が上がる。シンプルな戦略である。

俺は人と関わりたいのではなく、過去問を入手したいだけだ。とった基本戦術は3ステップからなる。

  1. 過去問をコピーしている集まりに混ざる
  2. 過去問を誰からコピーさせてもらったか尋ねる
  3. コピー元を持っている奴に声をかける

まず誰が過去問を持っているのか知らないので、とりあえず過去問をコピーしあっている集まりがあったらしれっと混ざる。同じ学科とはいえ普段話したこともない俺がいると「なんでコイツもいるんだ?」みたいな顔をされることもあったが、俺も相手の名前を知らないのでお互い様である。いきなり過去問を見せろというのはハードルが高いが、集まりに混ざるのはわりと気軽にできるというものだ。

ついでにその集まりで、どこから過去問を入手したのかを尋ねる。もしその中に先輩から譲り受けた者がいたのならそいつの顔を覚えておき、他の同級生からだったら名前を聞いておく。名前を知ったところで誰か分からないことが良くあったが、座席表という便利なものがあるので事なきを得た。

そして過去問を持っている奴のところへ行き、また所持している過去問とその入手先を尋ねる、ということを繰り返したのだった。こうして過去問を入手する機会を積極的に増やし、過去問流通経路を遡り続けた結果、俺の手元には多くの過去問が集まることになり、成績も上昇したのである。

4年目 全てが集まる

成績が上位25%以内をキープできるようになり、無事寮に残れた俺は、4年目も過去問集めに勤しむことになる。この頃になると、先輩から過去問を入手する奴リストが俺の中で完成していた。テストが近づくと俺はこのリストの連中に片っ端から声をかけることで、全ての過去問を揃えることができるようになっていたのである。

気がつけば、俺は先輩との繋がりが直接無いというのに、先輩との繋がりがある奴よりも早く過去問をコンプリートするようになっていた。この現象を説明するのにちょうどいい本がある。

この本はウェアラブルセンサとビッグデータで何が出来るか、というここ近年のトレンドを理論と実践からわかりやすく説明してくれる良書である。この中に「運を定量化する」という話がある。

ここで、「運」を「人生や社会で確率的に起こる好ましい出来事」と定義してみよう。すなわち、人生やビジネスにおける「望ましい確率現象」と捉えるのである。


運を「確率的に起こる好ましい出来事」と定義したが、これをビジネスの上でのことについてより詳しく定義しなおすと、「確率的に、自分が必要とする知識や情報や力を持っている人に出会うこと」といってもよいだろう。
『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』

このように運を定義することで、「2ステップ以内の到達度」をその人の運のよさの指標として使うことが出来る。

『データの見えざる手 ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則』より

言ってしまえば「知り合いと知り合いの知り合いが多いほど、有益な情報を得る確率が高い=運がいい」というわけである。この話を今回の過去問話に当てはめるなら、俺は「過去問への2ステップ以内の到達度」が他人より高まっていた、というところか。多くの人は特定のクラスタ内だけでの交流が多いため、過去問の流通も閉じたものとなる。対して俺の場合は過去問を所持しているかどうかで繋がりを作ったわけであり、複数のクラスタで流通している過去問を入手するのだから揃いやすい。

また、この頃になると俺は過去問を入手するだけでなく、配布する側の人間にもなっていた。これがさらに過去問を集める助けとなる。

5年目 強大なイメージは所持不問

ついに高専の本科最終学年。気がついたら「俺は過去問を持っている人」というイメージが出来上がっていた。最初は過去問を持っているか尋ねてくるのは友人だけであったが、いつの間にか見たことはあるけど名前は知らない奴からも声をかけられるようになっていた。

このイメージが付いたせいでテストが近づくと、気の早い奴は俺が過去問を入手する前から持っていないか聞いてくるようになった。そんな過去問集めに熱心な奴は、その時点で少しばかり過去問を持っていることが多い。そこで俺はいつもこう答えた。

「手に入ったら教えるよ。逆に今持っていたり手に入ったら教えてよ。」

そして相手が持っていた過去問をコピーさせてもらった後、また別の奴が俺に持ってないか聞いてくるのでこう答える。

「今はまだこれだけ。他に手に入ったら教えるよ。逆に今持っていたり手に入ったら教えてよ。」

完全に過去問仲介業者と化していた。黙っていても過去問の方から俺の下へやって来る。つまり俺が過去問を持っているというイメージが先行し、これによって俺は本当に過去問を持つことになるのだ。因果の逆転が起きていた。

終わりに

以上が過去問収集の体験談である。たとえ先輩との繋がりが無く、交友関係が狭くとも、過去問を揃えるのは不可能では無いのだ。

もしあなたが高専生で、学力向上とかはどうでもよく、とにかく留年だけしたくないというのであれば参考にするといい。ただし過去問を揃えても、それを分析し、理解して覚えなければ結局点数を取れないということだけは肝に命じておくべきだ。俺から過去問を受け取ったのにもかかわらず、赤点を取るやつを何人も見てきた。

過去問とあえて異なる問題を出す先生もいるが、それは過去問を3年分も集めればほとんど対応できる。過去問と教科書、それに板書やプリントを見比べればテスト内容を配点まである程度は予測できる。先輩からのアドバイスは以上だ。

ついでに言っておくと途中で紹介した本は普通におすすめなので読んでおいたほうがいい。運だけでなく、幸せもコミュニケーションもウェアラブルセンサで計測できるということがよく分かる。そして人間の活動にもエントロピーの増大法則は適用されるのだ。エントロピーを凌駕する奴は不自由である。

*1:卒業時にも半数はわからなかった。