きっかけ
特許で働かなくても生活できたらいいなと思ったので。
働かないで金が入ってくる。その方法はいろいろあるが、特に資産があるわけではない人間にとって発明は夢あふれるものである。何かすごいものを作って特許を取り、あとはそのパテント料で暮らしていく。金どころか名声までも手に入るかもしれない。実際に可能かは別として、憧れてしまうのは間違いない。
しかし、発明というのは今までにないものを作るものだ。多くの企業が金をかけて日々研究開発に勤しんでいる。そこに専門家ではない自分が入るスキはあるのか。素人に発明は無理ではないのだろうか。そう考えてしまう人は多いと思う。だが、過去の発明を見ると専門家ではない素人によるものは結構ある。活版印刷、燃料電池、無線、電球、そして飛行機。というわけで、専門家ではない素人が特許で金持ちになるにはどうしたら良いか過去の事例を参考にしようと買ってみた。
内容とか
この本での「素人発明家」の定義は次のいずれかを満たしている者を指す。
- 専門の教育機関で教育を受けていない職人
- 教育機関以外で、自学独習、家庭教育、実験助手などで専門知識を体得した者
- 発明の内容が、本来の職業・職種とは殆ど関係ない者
まとめると、専門的な知識を教育機関で体系的に学んでいない者ということになる。教育を受けていても発明内容に関係が無ければ定義の3に含まれ、「素人発明家」となる。個人的には教育を受けていなくても、仕事と同じ分野での発明は素人と言いたくない。発明の内容によるかもしれないが、それで飯を食っているなら十分専門家だろと。
さて、この本には様々な素人発明家が出てくるが、俺が一番気になるのは儲かったかどうかだ。コストを支払ったならそれ以上のリターンが欲しい。だが世の中には奇特にも必要以上に金を受け取らない人がいる。この本にも登場していて、ファラデー、フランクリンがそれに当たる。当然のことながらこいつらは少数派で、大半は金も名声も全力で狙いに行く。この本に登場するのは全員が発明をしているが、金持ちに成れたのと成れなかったのがいる。それは何が違っていたのか。
ありがちな答えだが実業家としての要素があったかどうかなのだろう。自分の発明を特許で守れるか、発明する前にそれの需要について調べたかといったことができている人は成功している。
蒸気機関を発明したワットは成功した例だが、彼は実業家のボールトンと手を組んで商会を設立した。発明した蒸気機関も彼が一から作ったものではなく、既に使われつつあった蒸気機関を改良したものであった。需要があるものを改良し、プロと手を組んだのだから上手いことやっている。
この本に登場する中でも最も発明家で実業家でもあると言えるのは誰もが知るエジソン。彼の発明については今更書く必要は無い。ここで紹介するのは実業家としてのエジソンだ。まず、発明するのは実用的なものだけというところ。ターゲットを都市部に住む者に絞り、電気を用いた日用品を発明する。儲かりそうなものを狙って行くのだから徹底している。そしてエジソンの発明家と実業家の要素が合わさって発明されたのが「発明工場」である。発明を自分一人で行わず、自分のチームで行う。他の発明家と一線を画しているのがこれである。発明王の名も当然と言える。
かなり偏った目線で書いたが、この本は単純に感心しながら読むだけで面白い。偉大な発明をするだけあってちょっとおかしい人が次々出てくる。自分が発明者になるために汚い手を使う奴もいる。ベルとか。なので人の話として読んでも、物の話として読んでも楽しめるお得な本である。誰か俺にも出願前のネタをうっかり喋ってくれないだろうか。
こんな人におすすめ
- 働きたくない人
- 物の歴史を知りたい人
- 発明バカを利用したい人
時代や次元や種族にかかわらず、発展途上の工匠というものは必ず羽ばたき飛行機械を発明するものらしいよ。