「ドミネ・クォ・ヴァディス (どこへ行かれるのですか?)」
季節の変わり目にアニヲタの間でかわされる挨拶である。
ジャパリパークが閉園した後、次に行くべき場所の探し方を教えよう。
けものフレンズ・ロス
『けものフレンズ』が終わろうとしている。正確に言えばアニメ『けものフレンズ』が最終回を迎えるのだ。メディアミックスプロジェクトとしての「けものフレンズ」は100年続くコンテンツを目指している*1ので、まだ終わるわけではない。アニメもこの人気ならば続編が作られる可能性は十分にある*2。しかし、12話で一度終わりとなるのもまた、避けることのできない事実なのである。
これは憂慮すべき問題である。いくら衝撃的な展開だったとはいえ、11話が放映されたことで休みになる旅館もあるのだ。最終話放映後、視聴者の心に空けられる穴の深さと大きさは想像もつかない。現実世界にも何かしらの影響をおよぼすだろう。
【お知らせ】最後の希望であるPPP予告までもがパークの危機により奪われてしまった為、来週3月27日月曜日は休館とさせていただきます。ご了承下さい。
— 旅館つるや隠宅♨️🐾 (@turuyaintaku) 2017年3月24日
空いてしまった穴は何かで埋めなくてはいけない。ある人はガイドブックを読みふけり、またある人は動物園に向かうのだろう。だが一番多いパターンは、春アニメの中から「ポストけものフレンズ」を探そうとするのではないかと思う。毎週生きる意味を与えてくれるアニメ作品を、だ。
しかし、どうしたらそのような作品を見つけることができるのだろうか。
動物は複雑ゆえに
『けものフレンズ』の次を探す時、人はまず構成要素に着目する。監督、脚本、制作、それにジャンルなど。まるで還元主義のように対象を要素に分解して調べることで、『けものフレンズ』がどのような作品であるかを理解し、似た要素を持つ作品を探すのだ。いくつか特定の要素があれば、同じように楽しめるのではないかと。
作品によってはある程度の効果が期待できる方法である。構成要素が似ていれば、それらの作品から受ける印象も似たものとなりやすい。例えば「◯◯枠」などと呼ばれる作品群のファンは被っていることが多く、特定のポイントを押さえておけば同様に楽しめることを示している。
しかし、還元主義で生物の全てを説明できないのと同じで、この方法で『けものフレンズ』の魅力を説明するのは難しい。もし説明がつくのなら、1話の時点で大人気となっていただろう。『けものフレンズ』を構成する要素の多くは、1話の時点で出揃っていたのだから。だが実際は1話の時点だと酷評の方がはるかに多く、その結果ガイドブックの供給が不足する事態となってしまった。
【ニコ生】「けものフレンズ」1話上映会 アンケート結果 #けもフレ https://t.co/O1Wx9euvf5
— ぬひけ (@ghrmstk) 2017年1月12日
本編は4割スタートか、これからどうなるんだろうか pic.twitter.com/E25gKx0oEf
本日、「けものフレンズ BD付オフィシャルガイドブック 第1巻」発売。勤務先書店の入荷は2冊で御座いました。orz …なお犯人は私です。(ぉぃ),他、売れ筋新刊大量発売。 - 本屋さん戒厳令
したがって『けものフレンズ』においてこの手法は通用せず、次の作品を探すのにも効果は期待できないと言えるだろう。ではどうしたらいいのか。こういった時は原点に立ち返るのが基本である。
心の壁を壊す
この記事を読んでいるということは、あなたは『けものフレンズ』が好きな人なのだろう。ではどの時点でなぜ好きになったのだろうか。
1話放映の時点では完全にスルーしていた人が大半であり、仮に見ていたとしてもニコ生のアンケートが示す通り、批判的な感想を抱いた人が多いと思う。しかし、そんな1話も今ならばその良さを語ることができる。サーバルちゃんが木に登っているシーンいたっては、もう涙無しには見られないはずだ。
これは1話そのものが変わったからではない。変わったのは視聴者のほうである。最初からそこにあったものを視聴者が見つけるようになったのだ。そのきっかけは誰かの解説を読んだからかもしれない。しかし今では、カバンちゃんの得意なところを探していたサーバルちゃんのように、最新話が放映されるたび自ら読み解こうとしている。だからこそ『けものフレンズ』の良いところが見つかり、それを語ることができるのである。
このような現象は、何も視聴者に限った話ではない。サーバルちゃんそのものが吉崎観音の同様な体験から誕生しているのだから。
「動物園に行って帰りの園内バスを待っていたとき、ふと横のおりを見たらネコ科のスラッとした動物がいたんです。チーターかな、くらいの認識で、でもよく見ると模様がとても綺麗で何か惹きつけられて。それが『サーバル』でした。こんなに魅力的な動物を、自分は何でこれまで知りもせず素通りしていたんだろうと自分のなかにあった『知ることをやめた心の壁』に気がついて。その体験が衝撃的だったので、まずはこの子をメインのキャラクターにしてみようと決めました」
本物の動物こそが原作者。「けものフレンズ」コンセプトデザイン吉崎観音インタビュー | WebNewtype
『けものフレンズ』になぜここまで惹かれるのか。それは『けものフレンズ』の良さを知った時、人は「心の壁」の存在に気が付き、それを破壊されるという体験をするからである。これこそが『けものフレンズ』の本当の魅力であり、我々が学んだことではないだろうか。
であれば取るべき行動は一つしかない。新しく始まる一つ一つのアニメについて、良いところを探すように見るのだ。一見ダメそうに思えても、何かきっと良いところがあるというように。そうすれば自分にとって魅力的な作品が見つかるはずだ。そしてそれは『けものフレンズ』の代用品ではなく、新たな名作の一つとなっているだろう。
もしかしたらそんな作品が見つからないかもしれない、そういった心配は杞憂だ。
なにせ来期は60作品以上もあるのだから。
俺の場合、記事を書こうと思ったのは『けものフレンズ』の魅力に気がついたからであるが、記事を書くことでより多くの魅力に気がついた。
自分が良いと思えたなら積極的に書くのを薦める。