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本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

【SHIROBAKO】ディーゼルさんに学ぶ、好きを仕事にするための自己投資

「夢をかなえる〇〇の法則」みたいな本を読むくらいなら『SHIROBAKO』を見たほうがいい。こっちのほうがためになって面白い。

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『SHIROBAKO』13話より

2015年冬アニメが続々と放映されているが、あえて2クール目に突入した『SHIROBAKO』をネタにしようと思う。この作品は鵜呑みにできないとはいえ、いろいろ参考になるところがある。なにせアニメ業界というシステムを赤裸々に描写しているのだ。一つの目的を完璧に遂行できるようにつくられたシステムは、他の目的にも転用は可能になる。参考にならないわけがない。

ディーゼルさんに学ぶ

システムが参考になると言ったばかりだが、あえて今回は一人の人間の行動に着目しようと思う。アニメ脚本家志望のディーゼルさんこと、今井みどりだ。

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『SHIROBAKO』13話より

彼女は作品内でほとんど本名を呼ばれることはなく、かといって愛称の「りーちゃん」は俺の文章に合わないので、タイトル通りディーゼルさんで通す。

さて、これから書く内容はまさにタイトルの通り、ディーゼルさんのとる行動が自己投資のお手本のような内容であるので、それについて解説したいと思う。なお、このような記事を読む人間は『SHIROBAKO』を見ていることを前提とするが、一応簡単に背景を書いておく。知っている人は読み飛ばせ。

  • アニメ脚本家を志望の大学生。
  • 高校時代は主人公たちとともにアニメを制作していた。
  • 脚本家になるにはどうしたらいいか分からず、とりあえず読書に励む。
  • アニメ制作会社で働く先輩のために調べ物 (ディーゼル車について) を代わりに行う。
  • そのレポートが高クォリティなため、監督からディーゼルさんと名付けられる。
  • その腕を見込まれて、脚本家から調べ物を依頼される。

概ねこんな感じ。というわけで説明を開始する。まとめてしまえばポイントは3つだけだ。

1. フライングする

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『SHIROBAKO』1話より

まずディーゼルさんの、というより彼女達「元上山高校アニメーション同好会」のメンバーの偉いところは、将来の夢に向けて学生のうちから既に行っている点にある。アニメを作ってみたいと思った時に、まずアニメ会社に就職しようとするのではなく、作るところから始めている。こうすることで、いざ社会に出た時に僅かながらでも実戦経験を持った状態となっているのだ。

ここ何年かは新卒の人間に対して即戦力を求める会社が多いと聞くが、これもまたよく言われるようにそもそも新卒と即戦力は相反する存在だ。卒業して初めて社会に出るため「新卒」と呼ばれるのだから。しかし、制作を学生が行うと新卒と即戦力が両方そなわり最強に見える。無論、その経験は学生レベルのものにすぎないが、有ると無いでは大きく違う。社会で必要になったスキルが、学生時代に取得したスキルの上位版ということはよくある話だ。

実際、ディーゼルさんの場合、高校時代に武具を調べた経験がそのままディーゼル車や戦闘機について調べることに役に立っている。特にただ調べただけでなく、知識のない人間が見ても分かるようにまとまっているところが強い。これは高校時代、自分の調べた内容を他のメンバーに伝えることで磨かれたスキルに違いない。そして彼女はこのスキルによって名前を売ることが出来たのだ。

2. 近くにいる

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『SHIROBAKO』7話より

続いて重要なのはチャンスの近くにいる、ということである。幸運の女神は前髪しか無いと言われるが、列をなして歩いてくるならば1回や2回つかみそこねても気にする必要はない。チャンスを掴もうとするならば、まずはチャンスが来るような場所にいるべきだ。そしてその場所の一つに自分が目指すべき場所にいる人のそば、というものがある。

ディーゼルさんの場合その対象となる人は先輩であり、既にアニメ業界で働いている宮森のことであるが、彼女はわざわざ住居を宮森の上の部屋にしている。このことによって宮森 = 業界の人と接触する機会が増えることになり、多くの情報を得ることができるようになる。13話における戦闘機を調べるきっかけも一緒に昼食をとった時の会話、宮森の愚痴が元になっていた。

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『SHIROBAKO』13話より

SkypeやLINE等、離れた相手とでも無料で会話できる手段の多い現代ではあるが、やはり直接に勝るものはない。そうでなくては最も離れていても問題無さそうなIT業界において、今でもシリコンバレーに人が集まるはずはないのだ。

3. 客にならない

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『SHIROBAKO』10話より

俺がこのディーゼルさんの立ち位置として面白いと思うのは、彼女が普通の大学生をやっている*1点にある。彼女はアニメの脚本家になるという明確な目標があるにかかわらず、その手の専門学校には行っていない。どうしたら脚本家になれるのかわからないと言っているのにだ。これは彼女が脚本家というものを、成らせてもらうものではなく、自ら成るものであると捉えている結果であろう。目標があるのならばこのように、自分の力によって達成しようとしなければただのお客さんになってしまうだけだ。

メタ的な視点で見ると、この脚本家になろうとしている少女の行動は、実際にアニメの脚本家や監督、つまり目標を達成した人間によって決められている。その成功者たちが脚本家を目指す者は専門学校に通うのではなく、アニメ業界で働く人のそばにいて、その人の手伝いをしたほうが、脚本家に成る上で自然だと判断しているのだ。俺は別にそういった業界に詳しいわけではないので専門学校を否定するつもりはないが、目標を達成するのに必ずしも学校に通わなければいけないということは無いだろう。

そして自分の力で達成しようとしているからこそ、ちょっとでも関係のあることを見つけたらそれに飛びつくことができる。ディーゼルさんは別に宮森に頼まれたからディーゼル車や戦闘機のことを調べたわけではない。仲間である先輩を助けたいとという気持ちと共に、少しでもアニメ制作に関わりたいという気持ちから自ら動いたのだ。その結果、彼女は自分の存在を現役のアニメ監督と脚本家に覚えてもらうことができた。このように自ら動けるようになるためにもお客さん状態になってはいけない。

実際のところ

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『SHIROBAKO』13話より

ポイントを抜き出したところで実際のところどうなのか、と言いたい人はいるだろう。それっぽく描かれているとはいえ『SHIROBAKO』はフィクションで、P.A.WORKS代表はこんな発言をしている。

3ポイントが現実的かどうかは何とも言えない。そして俺も上述したように業界について言えるような経験・関係は持っていない。しかし、他人の意見を引っ張ってくることはできるので紹介してみる。

最近タコより股のあることで話題な岡田斗司夫が書いた本に、ちょうどこのネタにぴったりな話が載っている*2

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この中に『7つの習慣』のような大目標を建てることで、夢を叶えられるか、というコラムがある。そこではアニメ監督や声優になろうとして『7つの習慣』戦略を実行したとしても、なるためには運や偶然の影響が大きすぎるため、段階的なタスクをこなしたところでなれる可能性は低い、無力であるとまで言っている。

そして逆に運の要素で成功した例として、あるドラマの脚本家の人*3の例を挙げている。ちょうどこの内容について岡田斗司夫が講義した内容を書き起こしている人がいたので、引用させてもらう。

運次第というのが具体的にどういうことかと聞くと、たとえば今木村拓哉さんが主演されてるドラマで、いつもシナリオ書いてる女性のライターの方がいる。その方はもともとテレビドラマの大道具さんだったんですよ。大道具やってる女の子だったのが、大道具さんにも台本が回ってくるわけですね、撮影の時に。


そうすると、あまりにもセリフにセンスが無いのが多いので、自分で勝手に赤ペンで線引いて、自分が知ってる少女マンガの格好良い台詞に入れ替えたんですね。シナリオライターが書いたシナリオそのものなんですけど、台詞の部分だけ彼女が知っている格好良い少女マンガの台詞に入れ替えてるんですよ。
で、それをたまたま監督や俳優さんが見て、「この台詞格好良いね。どうしたの?」、「いや、少女マンガにあるんですよ」という話を面白がられて、「じゃ、おまえシナリオ書いてみろよ」という話になった。
【文字起こし】スマートノート原形 | ノート書きます、フミですから。

この人の場合は完全に運と言ってしまえばその通りなのだが、一方でそうなる条件は揃っていたとも言える。まず少女マンガが好きで、センスのいいセリフを自分のものにできるほど読んでいたということ。次にドラマ制作の近く、この人の場合は現場そのものであるが、そこにいたということ 。そして脚本家になろうとしていたわけではないが、頼まれもしないうちから自ら動いていたということ。決め手は完全に運であるのだが、どれか1つでもやっていなかったら運そのものが無かったのもまた事実である。

このように1例だけではあるが、そこまで現実離れしていないということは分かるであろう。達成したければフライングして、近くに行って、自ら動くべきなのだ。

おわりに

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『SHIROBAKO』9話より

俺はP.A.WORKS作品が肌に合わず、『花咲くいろは』以降は毎回1話で切っていて、今回もどうせ1話でサヨナラだろうと思っていた。それ以前は暇だから全部見れたに過ぎない。しかし『SHIROBAKO』に関しては完全に例外で、毎週楽しみだしこんな記事まで書く始末。おそらくキャラクターたちが大人ということもあって、感情で突っ走るようなことがまず無いからというのが大きいのだろう。俺はちゃんとキャラが思考しているのが好きだ。

さてここまで律儀に読んでくれた人の中にもまだ、こんなのは都合よく物語に合わせてメソッドを展開しただけじゃないか、と言う人もいるかもしれない。そんな人に良いことを教えよう。ほぼ全ての自己啓発本は、俺がここまで書いたような内容とほとんど変わらない。中学生の頃から読み始めて、3桁は間違いなく読破した俺が言うのだから間違いない。つまりそれらの本が正しいのなら、この記事も正しいのだ。それならばエンターテイメントとして優秀な『SHIROBAKO』を見たほうがいい。こっちのほうがためになって面白い。

SHIROBAKO イントロダクション (JUMP j BOOKS)

SHIROBAKO イントロダクション (JUMP j BOOKS)


『SHIROBAKO』はWikipediaがかなり充実しているので一度は見るべき。該当シーンが何話かすぐにわかって助かった。

*1:さらに身も蓋もない話をすれば、脚本家に成れる確率はとても低い。ならばダメだった時のことを考えて普通の大学に行っておくのは合理的と言わざるをえない。

*2:この本については以前紹介しているので、メインの内容はこっちを見よ:【書評】ガッチャマン見てノートを手に取る / “あなたを天才にするスマートノート” - 本しゃぶり

*3:正確に言えばこの人の場合、セリフを作る専門のダイアログライターである。