本しゃぶり

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直近3年に読んだKindle本からブラックフライデーのおすすめ

ブラックフライデーには何を買うべきか。
最もおすすめなのはKindle本である。

俺が近年に読んだ中からセール対象のKindle本を紹介しよう。

セールまで待つ人へ

俺はことあるごとに本を紹介しているわけだが、クリック数の割に買われないなと思うことがある。なぜこんなことが起きるのか。

俺は役立つ面白い本しか紹介していないわけだから、まさか購入ページまで行って「やっぱ止めるか」となるのは考えにくい。となれば理由はただ一つ。「安くなったら買おう」と考え、欲しい物リストに入れる人が多いのだ。俺がそういう動きをしているのだから当然だ。

そんな人に朗報である。Amazonブラックフライデーで、様々なKindle本が大幅に値下げしている。その中には俺が紹介した本も多い。ということで今まさにセール対象でおすすめの本を紹介することにした。ポイントアップキャンペーンは11/22 (水) の買い物から対象となるので、もう買って大丈夫だ。

とはいえ、『スイッチ!』のように何度も取り上げた本を紹介するのもアレなので、今回は俺が2021年以降に読んだ本を対象とする。

2021年に読んだやつ

セール関係なくおすすめの本は以下の記事を参照。

『三体Ⅱ 黒暗森林』

まずはこの手のセールですっかりお馴染みとなった『三体』の第二部。俺は第一部については「悪くはないが、すぐに続きが読みたいとも思わない」という感想を持ったので、第二部は発売されてもすぐには買っていない。それが第三部が発売されたところでセールとなり、ようやく買って読んだのだった。

正直、シリーズの中で一番面白い。あそこまで戦力・技術力に差があり、どう考えても勝ち目がない状況を設定してから、よくもまあ納得感のある終わらせ方ができたものだと感心する。俺は第二部が面白かったからこそ、残りも全部読もうと決めたし、本しゃぶりでネタにしたいと思った*1。第一部は読み切ったけど、まだ第二部は手を出していないという人は、この機会に読んでみてほしい。

『三体Ⅲ 死神永生』

第二部が面白かったので第三部はセールを待たずにすぐ買って読んだ。今なら両方ともセールだから金と時間を天秤にかけなくてよい。

俺は上記の通り第二部のほうが好きだけど、それは第三部がつまらないというわけではない。第一部よりは第三部の方が面白いと思ったし、第三部が一番いいという人も結構多い。これは方向性の違いによるもので、第二部はエンタメ成分が強く、第三部はよりハードSFな内容である。つまりどっちが好みかという話だ。とはいえ第二部を読んだら第三部を読まない選択肢は無いので、まとめて買え。

『最悪の予感 パンデミックとの戦い』

『マネーボール』や『世紀の空売り』で有名なマイケル・ルイスが、いかにしてアメリカの新型コロナ対策が失敗したかを書いた本。 本書が出版されたのは2021年7月8日で、当時はまだワクチンを打てなかった人もいただろう。実際、俺が1回目を打ったのは2021年9月だった*2。そんなコロナ禍真っ最中に出た本なので、今読むと当時感じていた危機感を思い出す。そして、何でこんなに上手く行かなかったのだろうと思ってしまう。

恐ろしいのは、アメリカはパンデミックへの対応を知らなかったから感染を防げなかったのではないことだ。コロナに限らない汎用的な対策は既に研究され、2006年の時点でホワイトハウスのパンデミック対策に反映されている。パンデミックが始まってからも、有志たちが連携して研究・検討し、有効と思われる方策を提言し、受け入れられている。しかし、ことごとく実行されず、感染拡大を防げないのだ。

有能で善意に溢れた人が多くいて、誰もが問題を解決したいと思っている。それでも組織間の連携が機能しなければ、良い結果を得ることは叶わない。それを教えてくれる本である。

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』

陰謀論に染まった父、スピリチュアルな母、DV気質な兄。そんな家庭環境で生まれ育った主人公が、いかにして実家を出て人生を取り戻したかという本。こういう話を知ると、家庭に対して政府や自治体はどこから踏み込むべきだろうかと考えてしまう。この主人公を救い出すには「何かあったら」では手遅れで、早い段階から積極的に介入する必要があるからだ。

また、本書を読むと家の呪縛から逃れることの難しさも感じる。これが物語ならば大学に入って一人暮らしを始めたらもう解決だろうが、そうシンプルには終わらない。休みのたびに帰省しては、また昔の生活に戻されようとするからだ。

本書は極端な事例ではあるけれども、自己責任論を語ったりや親ガチャ否定派な人に読んでほしい。世の中には自分ではどうにもならない環境で育つ人もいるのだと分かるので。

『習慣の力』

本書は「面白かった本」には入れなかったけど、役立った本であることには間違いない。 習慣のメカニズムを解き明かし、どうしたら習慣化できるか、あるいは悪習慣を止められるかを教えてくれる本であるからだ。実際、本しゃぶりでも過去に繰り返し取り上げている。

去年からマガジン*3やダイエット*4など色々なことを始めており、これらが続いているのは間違いなく本書で得られた知識を使っているのが大きい。この手の本は読んだだけではあまり価値は無いが、実行に移すと人生を変える可能性を持つ。特に習慣は強力なので、1冊くらいは読んでおくことをお勧めする。

2022年に読んだやつ

『プロジェクト・ヘイル・メアリー』

読んだ人がしばらく「いいからプロジェクト・ヘイル・メアリーを読め」と繰り返すbotになってしまうことで有名なSF小説。俺が見た事例では『ゆる言語学ラジオ』の堀元さんがひどかった。『ゆるコンピュータ科学ラジオ』で1時間ひたすら喋る回をやったのに*5、『ゆる言語学ラジオ』の案件動画でひたすら『プロジェクト・ヘイル・メアリー』を連呼してしまうのだから*6

ただそうなるのも分かる。まず単純に面白く、読んでいて余計なストレスが無いので一気に読めてしまう。これだけで他人にも勧めたくなる。それなのに本書はストーリー的にネタバレ厳禁だ。これによって読んだ人は苦しむことになる。「本書について語りたい、だがこの面白さを真に味わうためには前情報無しで読んでほしい」と。だから所構わず会った人に対して「いいからプロジェクト・ヘイル・メアリーを読め」と言ってしまうのだ。

『マネー・ボール』

『最悪の予感』の紹介で本書の名前を出しているが、実はこっちのほうが読んだのは後。『最悪の予感』が面白かったので、他の作品も読んでみるかと考え、映画にもなっている本書に手を出したのである。そしてやはり面白かった。

統計データを駆使して戦うということは知っていたが、ちょっと思っていたのと違った。俺はてっきり統計をここのプレー選択に使うものとばかり思っていた。だが統計が真価を発揮するのは選手のトレードの際である。選手の優劣を印象ではなく統計で判断し、割高な選手を出して割安な選手を手に入れる。そうやってチームを強化したからこそ、弱小チームだったオークランド・アスレチックスは強くなった。

こういうのを読むと、データ分析は重要だが、それをどう活用するのかも重要だと思い知らされる。

『ヒトの目、驚異の進化 視覚革命が文明を生んだ』

ヒトの視覚がなぜそのような性質や特徴を持っているのか、新たな観点から説明していく本。特に俺が印象に残ったのは「両目が正面にある」(両眼視) の理由である。俺は今まで両眼視は「距離を正確に測る」ためだと思いこんでいた。だが本書ではTVゲームを例に、単眼視でも大きさや運動視差によって彼我の距離は把握できると述べる。そして新たな仮説として、透視を出す。

霊長類が生息している葉や樹木が生い茂る環境では、様々な障害物によって視界が遮られる。だが両眼視ならば、片方の視界が障害物で遮られても、もう片方の目で見れる場合も多い。だから両眼視であることが有利に働き、顔の正面に両目があるというわけだ。

こんな感じで次々と納得感のある仮説が提示されていくので、普通に驚いた。これが正しいかどうかは別にしても、そんな捉え方もあるのか、と。こういう本を読むと、他のことについても思い込みを捨て、別の見方ができないか考える必要があるなと思う。

『地球の未来のため僕が決断したこと 気候大災害は防げる』

今年の夏もクソ暑く、感覚的には温暖化は進んでいるように思える。IPCCもこんなことを言っているし。

人間の影響が大気、海洋及び陸域を温暖化させてきたことには疑う余地がない。大気、海洋、雪氷圏及び生物圏において、広範囲かつ急速な変化が現れている。
より精緻な科学的知見を提供-IPCC第1作業部会第6次評価報告書概要-| 地球環境研究センターニュース

ではどう対処するかということで、ビル・ゲイツがやっていることを自身でまとめたのが本書である。俺はMacユーザーだし、特にビル・ゲイツ信者というわけでもない。だが本書を読んで温暖化対策に関してはゲイツの意見を基準に考えるのはアリだなと思った。

俺がそう考えるに至ったのは3点。第一に温暖化対策は重要だが、貧困問題の解決を重要視していること。第二に彼自身が頭が良いだけでなく、世界一流の専門家たちから直接意見を聞いた上で判断していること。そして第三に彼は口を出すだけにとどまらず、自身の身銭を切って投資していること。100%正しいとは思わないが、そこらへんの意見よりはよっぽど参考になるだろう。

『mRNAワクチンの衝撃 コロナ制圧と医療の未来』

ファイザーが製造・販売しているワクチンを開発したビオンテック社が、いかにして超短納期でワクチンを開発したのかを追った本。本書を読んだ後にファイザー製ワクチンを打つと「これがあの……」となって良い。ちなみに俺の打ったコロナワクチンの3/5がファイザー製である。

俺はmRNAワクチンについて知りたくて本書を読んだわけだが、mRNAワクチンそのものよりも納期短縮の方に意識を持っていかれた。会社で働いていると短納期を求められて「できるわけがない」とつい言いたくなる。だがビオンテックCEOは、ワクチン開発が1日遅れるごとに感染が拡大し、死者も増えることを心から理解していた。だから徹底的に納期短縮を求める。そして開発プロセスの加速が無理というのであれば説明を求め、「もし物理法則の下では不可能だと説明できるのなら、私も受け入れよう」と返した。

あのイーロン・マスクも納期短縮のために要件は全て疑い、物理法則でなければ変更できると言っていた。優れた経営者というのものは物理法則以外には従わないものらしい。短納期を求められたらこういう姿勢でプロジェクトを進めよう。求められたくないが。

2023年に読んだやつ

『同志少女よ、敵を撃て』

年始に一気に読み切ったくらい面白かった歴史小説。家族を失った少女たちが集められ、狙撃手となって侵略者であるナチスと立ち向かう話。第二次世界大戦が舞台で、彼女たちは「魔女小隊」と呼ばれるので実質ストパン。そう思うくらいには深夜アニメっぽい作品。

上の記事でも書いた通り俺は絶対にアニメ化すると思っているのだけど、内容的にロシア・ウクライナ戦争が終わるか飽きられるまでは厳しいだろう。なので興味があるならアニメを待たずに読んだほうがいい。本書を読んだら次は「エピソード0」とでも言うべき『最強の女性狙撃手』を読むといい。俺は読んだ。

『三体0【ゼロ】 球状閃電』

一応『三体』の前日譚という扱いではあるけれども、一部の登場人物が被っているだけで独立した作品。シリーズとして読むよりも、『三体』を読んで劉慈欣の他の作品も読みたいと思ったところで手を出すのがいいだろう。

あるいはその逆もアリかもしれない。『三体』は最初の第一部が一番ハードルが高いと思っているので、先に読みやすくて一冊で終わる本書を読み、劉慈欣の作品が合うことを判断してから『三体』に手を出すというわけだ。実にもっともらしい理屈と、謎の現象から急激に物理学の根本へ迫る作風は、本書でも健在である。ドハマりするほどではないが面白かった。

『三体X 観想之宙』

一方でこちらはモロに『三体』の外伝である。第三部までちゃんと読んでからでないと読んでも意味が分からない。もしストーリーの記憶が薄れているのであれば、本書を読む前に第三部の復習をすることを強くお勧めする。復習が面倒な人のために、巻末に第三部のあらすじが書いてあるのが優しい。

本書は『三体』の名を冠しているけれども、劉慈欣の作品ではなくファンによる二次創作である。だが並大抵の二次創作ではない。中国で第三部が発売された時にベルギーへ留学していた著者は、友人からページを1枚ずつ撮影した写真をメールで送ってもらって読むことに成功する。そして三体ロスを埋めるべく、すぐにネットで『三体X』の執筆を開始。そして第三部の発売から一ヶ月後には完結させたのである。これが人気を博し、劉慈欣の許可もとって出版するに至ったわけだ。

こんな短期間で仕上げたにも関わらず、本書は『三体』本編の矛盾や謎に上手く説明を付けていき、内容も面白い。本書は本編があってこそなので単体で評価するタイプの本ではないが、『三体』を読んだのならこちらも読むとより楽しめる。あくまでも二次創作であり公式ではないが。

『運動の神話』

『人体六〇〇万年史』のダニエル・E・リーバーマンの本。タイトルの通り、運動には様々な神話がある。「運動は全てを解決する」とか「人は走るために生まれてきた」とか。そしてこういった神話の根拠として、リーバーマンの研究が引用されることも多々ある。それこそ俺がリーバーマンについて知った、『BORN TO RUN』とか*7。対して第一人者であるリーバーマンはどう考えているかというのが本書である。

本書は「神話」を打ち砕く本であるのだから、内容としては身も蓋もない。人は健康のために身体を動かした方がいいが、なるべく怠けようとする性質がある。数々の神話に対する検証を見ていくと、世間で言われていることは大きくは間違えていないが、だいたい過剰に扱われているというのが実感だ。なので「健康と運動に関していろいろ言われているけど、結局はどうなんだよ」と思っている人は本書を読むといい。分かっていることだけでなく、分かっていないことも知れる。

『BUILD 真に価値あるものをつくる型破りなガイドブック』

iPodとiPhoneの開発チームを率いたトニー・ファデルが、自身のエンジニアのキャリアを振り返って語る本。俺は『THE ONE DEVICE』を読んだ*8のでiPhoneは彼一人の手柄ではないと分かっている。なにせアップルの元幹部は「トニー・ファデルの話は一言も信じるな」と言ったらしいのだから*9。あくまでも彼はiPodとiPhoneのハードウェアを統括した責任者であって、全ての発明者ではない。それに最初ファデルが率いていたクリックホイール式「iPodフォン」は競争に敗れたわけだし。

だからといって、トニー・ファデルが大したことをしていないわけではない。むしろ彼自身は若き日の過ちで失敗談として語っていることでも、普通からはかけ離れている。まず大学を卒業するまでに3度もスタートアップ立ち上げに携わっている*10。最初に入社したゼネラルマジックでは下っ端として働き、タッチスクリーンの電話やメールが可能なモバイル端末「マジックリンク」の開発に参加する。このプロダクトは大失敗となったが、これは1994年のことだ。時代の先を行き過ぎている。

ゼネラルマジックの次は、初めての大企業であるフィリップスに入社。この時ファデルは25歳なのだが、いきなりCTOとして扱われる。それでまた携帯端末の開発を指揮し、完成はしたけれども売れずに失敗。彼曰く、プロダクトは最高だったがマーケティングの意識が抜け落ちていた ことが問題だった。

こんな感じで若い頃は失敗ばかりとのことだが、失敗のスケールが普通とは違う。そしてこんな若さでマーケティングやマネジメントの重要性を学んでいるので、本書でもチームビルディングからカスタマーサポートまでが「ものづくり」に必要なものだとしている。やはりiPhoneを統括していた人なだけのことはあると実感した。

終わりに

例によってセール対象からおすすめのKindle本を探したら、早川書房で埋まってしまった。俺は早川書房からは1円ももらっていないのだが。

もっと前に読んだ中から早川書房でおすすめの本

これで紹介している本もセール対象のはず。