本しゃぶり

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2021年下半期に読んで面白かった本5選

気がついたら4月になっていた。
今更ながら去年の下半期に読んだ中からおすすめの5冊を紹介する。

【目次】

2021年下半期に読んだ本

後でやろうと思っていたら、ついにマシュマロで指摘されてしまった

俺は有言実行するタイプなので、ちゃんと4月中に記事にしたというわけだ。4月になってまだ2021年の話をしているのかよと言われそうだが、俺の誕生日は4/11なので*14/10までは実質2021年である。なのでセーフ。

2021年下半期に読み終えた本は47冊。上半期は55冊だったので、読書ペースは減ったようだ*2。まあ、年間で102冊だから良いとしよう*3

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2021年の読了数推移

いつもの冊数振り返りはここまでとし、本の紹介に移る。

『多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織』

なぜ組織には多様性が必要なのか、様々な研究や逸話を用いて説明する本。多様なバックグラウンドは多様な視点から問題を見ることにつながる。そうすることで死角が減り、よりよい解決策が生み出されるのである。

上半期のおすすめに入れた『失敗の科学』と同じマシュー・サイドの本。この人は現代のビジネスで流行っている概念をいい感じに解説するのが上手い。弊社でも最近は「心理的安全性」「ダイバーシティ」などの重要性が説かれるようになったが、その教育資料を見た時に「あっ マシュー・サイドの本で読んだやつだ」となった*4

ではなぜ多様性が重要なのか。論点はいくつかあるが、一番重要なのは観点の数が増えることである。これを説明するには、文章を費やすよりも本書で使われているイメージを見せた方が手っ取り早い。□がある問題の領域で、○が個人の持つ知識 (観点) だ。

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『多様性の科学』より抜粋

ある問題に取り組むメンバーを集める時、重要なのは個人の知識 (○のサイズ) だけではない。どの領域をカバーしているかも同じくらい重要だ。いくら○が大きくても、図2のように重なり合っていては、追加する意義は小さい。多少サイズが小さくとも他と被らず、より問題領域をカバーできる人を選ぶべきだ。本書では図2の構成で失敗した話や、逆に図3の構成で上手く行った事例が多く紹介されている。

この観点の多様性から始めて、本書では多様性にまつわる様々な価値や活かす方法について解説していく。多様性の重視に賛同するにしろ反対するにしろ、なぜ多様性が重要視されているのか、その理由を知らなければ適切な判断を下せないし、活用することもできない。本書を読むことで、多様性について考えるスタート地点に立てるだろう。

『THE ONE DEVICE ザ・ワン・デバイス』

あえて繋げて言うならばこれは多様性、つまり多くの人達の観点が集まったことで価値が生じた事例だろう*5。本書はiPhoneについて前世から来世まで書いた本である。タッチスクリーンを始めとするiPhoneに使われているテクノロジーはどのように研究されていきたのか。初代iPhoneはどのように開発されたのか。鉱物資源の採掘現場から製造工場、さらには廃棄先へと、取材のために世界各地を飛び回る。誰がiPhoneを作ったのかと言えば、「たくさんの人」と答えるしかない。

本書がすごいのは「iPhoneができるまで」について、時間的にも空間的にも幅広い範囲をカバーしていることにある。「時間的」というのは開発の話である。iPhoneを構成する様々な主要技術について、1970年代あたり*6までさかのぼったところから解説が始まるのだ。

一方「空間的」は、製造の話である。iPhoneの原料採掘を見るためにボリビアのセロ・リコ鉱山の坑道に入ったかと思えば、深センにあるFoxconnの龍華工場に侵入する。さらには使用後ということで、電子機器の廃棄場であるグイユにまで訪れる。iPhoneの全てを知ってやろうという意気込みが凄い。

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『THE ONE DEVICE』が語るiPhoneの全てのイメージ

俺は歴史とか進化とかルーツの話が割と好きなのだけど、本書はまさにiPhoneのルーツを辿る旅なのだから、面白くないわけがない。iPhoneはAppleの製品であるわけだが、そこへ至る過程はApple以外の様々な人達の手で作られている。そのことが本書を読むとよく分かる。

『最悪の予感 パンデミックとの戦い』

こちらは逆に多様性が上手く機能しなかった話。『マネーボール』や『世紀の空売り』で有名なマイケル・ルイスが、いかにしてアメリカの新型コロナ対策が失敗したかを書いた本。本書を読むと、どんなに優れた個人がいても、組織が機能しなければどうしようもないことを思い知らせる。

本書はいつものように基本読書*7で知ったのだけど、その記事で「マーベルヒーローの映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』で、集結したヒーローたちがなすすべもなくやられていくようなものなので」と書いてあった。読んでみて本当にそう思う*8。まずはこれを見て欲しい。

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最悪の予感 パンデミックとの戦い | マイケル ルイス, 中山 宥, 池上 彰 | ノンフィクション | Kindleストア | Amazon

本書のAmazonにある「コロナ禍を戦った知られざる英雄たち」は、本書のメインキャラ紹介だ。これを読むと上手くいく気がしてならない。例えばグラス親子は2003年の時点でパンデミックにどう対応すべきかコンピュータシミュレーションを行い、学校閉鎖が効果的であることを導き出した。その研究成果をまとめた論文は2006年にはホワイトハウスのパンデミック対策に反映されている。そして2020年、パンデミックの気配が感じられた頃、この対策方法は忘れられていなかった。しかし2020/3/13に国家非常事態宣言が出された時点でさえ、CDC*9「学校は通常通り」と提言したのであった。

だいたいがこんな感じで、優れた有志がネットを通じて連携し、有効と思われる対策を検討し、まとめて提言まで行うが、なぜか実行されないというのが繰り返される。提言が受け取られた時の反応は良かったというのに。

個人単位の連携はされるが、組織単位の連携が機能していない。検査に用いる鼻腔用綿棒を手配したはずが、まつげブラシが届く。そうしている間にも感染者数と死亡者数がどんどん増える。本書で書かれている2020年時点でも相当に酷い。そしてその後のアメリカがどうなったかは知ってのとおりだ。

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国別の人口10万あたりのCOVID-19患者数 / Traut, CC BY-SA 4.0, via Wikimedia Commons, Link

本書を読んでも爽快感は得られない。読み終えた後に「どうすれば良かったのか」と考え込んでしまうタイプの本である。そして自分の所属する組織はどうなのか、とも。

『エデュケーション 大学は私の人生を変えた』

これも多様性を使って語るなら「こんな多様性は嫌だ」となるだろう。本書は親ガチャ大ハズレした女性がなんとか学校に入って、家族の呪縛から解き放たれる話である。リベラルアーツとは「人を自由にする技」ということだが、彼女ほど「リベラルアーツを学んだ」と言える人は少ないのではないだろうか。

「親ガチャ大ハズレ」と書いたが、一番のハズレは父親である。彼女の父親を一言で紹介するなら、陰謀論にハマった狂信的な現場ネコといったところだろうか。厳格なモルモン教徒で、政府や医者を信じない。子どもたちを学校教育から遠ざけ、自宅で必要最低限にも満たない教育を施す。そして幼い頃から廃品解体の仕事を手伝わせるのだが、安全衛生は一切無視。スピードこそが全てで、危険行動ばかり強要する。

もちろん労災は次々起こるのだが、本人は反省しない。それどころか「これは神の意志だ」といって受け入れるだけ。大怪我しても医者に見せず、民間療法で済ませる。もちろん労災は子どもたちだけでなく、父親本人にも襲いかかった。解体中の車が爆発し、心臓が2回止まるほどに一時は生死を彷徨うのだが、大きな後遺症が残るも生き残る。しかしこれで反省するどころか、妻の民間療法に効果があったと大喜び。さらにはそれがきっかけで家の民間療法ビジネスが発展するのだから救えない。

父親以外にもDV気質の兄など、主人公の家庭環境はそうとうに酷い。学校に入ったら洗脳が解け家族との縁も切れるかと思いきや、話はそう簡単に終わらない。休みのたびに実家に戻っては、昔の生活に引き戻されようとする。読んでいて「まだ解決編じゃなかったのか」と何度思ったことか。いいかげん、ショーンと二人っきりになるのはやめろ。殺されたいのか。

優秀な人、例えばオードリー・タンの逸話とかを読むと、「一律に与えられる型にはまった義務教育なんて」と言いたくなるが、本書を読むと「やっぱり義務教育って大事だよね」と言いたくなる。何が正しいかとは簡単には決められないが、著者のような子供の置かれた状況は、家庭から引き離すことになったとしても対処すべきだろう。

『三体Ⅲ 死神永生』

世界的大ヒット中華SFのラスト。第三部はまた主人公が変わり、程心という女性研究者になる。シリーズラストで女性主人公なので、実質ジョジョ六部。主人公が交代したせいか、第二部の主人公だった羅輯が伝説の人物みたいな扱いになっているのが笑える。ポケモン金銀に登場するレッドを思い出した。

第二部できれいに落としたのでこの後どうするんだと思ったら、抑止というのはそんな簡単な話ではないと繋げるのがさすがというべきか。抑止力を働かせるためには、こいつにはやると言ったらやる『スゴ味』があると思わせなくてはいけない。そうやって地球世界と三体世界の戦いを再開させ、羅輯の特別さをアピールする。この続編の作り方が一番凄いと読んでいて思った。

しかし迷うのは、小説の場合どこまで紹介するのかということ。もう読もうと考えている人はみんな読んでいるだろうから、ネタバレを気にせず全部書いてしまってもいいだろう。だがもしかしたら保留していて、ここまで読んでから判断しようと思っている人もいるかもしれない。なので感想の続きはブクログを見てもらうということで終わりにしよう。

終わりに

前回 (2021年上半期まとめ) で、入浴中に『三体』のような先が気になる本を読んでいると、風呂からあがるタイミングを見失うと書いた。この問題については解決済みである。風呂にタイマーを持ち込むのだ。タイマーが時間を教えてくれるので、読書に集中できるのが良い。これの詳細については下記の記事で書いたとおりだ。

現在の課題は今回まとめが遅くなった理由、つまりブクログを溜め込んでしまうということである。 俺はマジメなので、読み終えた後はちゃんと感想文を書いておきたい。だがブログを優先してちょっと後にするか、年末年始にやるか、確定申告がー、と言っている間にどんどん溜まってどうしようもなくなってしまった。

今回の記事のために断腸の思いで2021年読了分は星だけつけて処理したが、まだ2022年分が26冊残っている。どうするか。まあ、星だけつけて一度リセットするしかないだろうな。

やはり本のような重たいコンテンツを読み終えたタイミングだけで書こうとするのが間違いなのかもしれない。読んでいる最中にも書いていく方が記憶に残るし気が楽ではないだろうか。ちょっとやり方を検討してみたいと思う。

2021年上半期に読んで面白かった本

*1:欲しい物リスト本の欲しい物リスト

*2:読んだ本のページ数は未確認。

*3:例によって100冊読んでいるから偉いとかそういう話ではなく、俺個人の感覚として年間100冊読みたいなというだけの話。

*4:よく見てみたら参考文献に『失敗の科学』や『多様性の科学』が記されてあった。

*5:例えばAppleが買収したマルチタッチ技術は、手首の反復運動過多損傷に苦しむ学生がキーボードより楽な入力方法を求めて生み出したものだ。

*6:技術によってはもっと古いのもあるし、逆に浅いのもある。

*7:深刻なパンデミックに対抗するため組織内で奮闘した個人の姿を描き出す、『マネー・ボール』の著者最新作──『最悪の予感: パンデミックとの戦い』 - 基本読書

*8:なんだったら本書に登場する有志で結成ささたコロナ対策チームもメールでアベンジャーズを名乗っていた時期もあった。

*9:アメリカ疾病予防管理センターのこと。技術はあるけど機能していないらしい。