人類とフレンズの関わりは歴史的に見ても長く、そして深い。
忘れ去られようとしている、ともに過ごした日々の記録をここに残す。
バズで生まれた子へ
『けものフレンズ』が流行っている。この一週間で爆発的に広まった。1話放映後から何とかして広まらないかと頑張っていた俺も、ここまでになるとはさすがに想定外だった。しかも単純に流行るだけでなく、BD付きオフィシャルガイドブックがAmazonで完売になるのだから喜ばしいと言えよう。
しかし一気に広がるのも良いことばかりではない。肉体の成長に従いていけなかったがゆえの内部疾患に苦しまされるがごとく、急激に広がったフレンズのコミュニティでは、バズ以前からいた者と以後に入ってきた者との間で摩擦が起きるようになった。ただでさえアニメ以前と以後の断絶があるのにだ。
俺はこの状況を引き起こしている原因を、知識不足であると考える。そこで今回『けものフレンズ』についての歴史を書くことにした。これを読めば人類とフレンズがどのような関係を築いてきたか理解でき、無知ゆえの衝突も無くなるだろう。
最古のフレンズと支配者
人類とフレンズの歴史を語る場合、メソポタミア文明から始めるのが通例である。詳細な記録が残っているのは文字の発明後であるためだ。それでもこの記事では文明以前から話を始めようと思う。そうすることによって、人類とフレンズの関係がいかに長いものか実感できるのだから。
以前にも書いた通り、はっきりとした最古の痕跡は、ドイツで発見された32,000年前の象牙彫刻である。
By Dagmar Hollmann - Own work, CC BY-SA 3.0, Link
一つの象牙を石器で彫ることにより作られたそれは、人の体にライオンの頭部を持ったライオンのフレンズを模している。これと似た彫像は同地域の別の洞窟からも発見されており、この地域でライオンのフレンズが重要な地位にあったことが伺える。 他に有名な後期旧石器時代のフレンズ痕跡というと、フランス南部のレ・トロワ・フレール洞窟壁画*1が有名だ。15,000年前のものとなるここでは、動物や人間の中にシカのフレンズとおぼしき姿が描かれている。
ここで一つ気になることがある。我々とは異なる人類種であるネアンデルタール人が滅びたのはいつだったか。2万数千年前である。ネアンデルタール人はホモ・サピエンスよりも強靭な肉体と大きな頭脳を持っていた。道具と火も使いこなしていた。だからホモ・サピエンスは登場してから8万年以上もアフリカの中に留まり、10万年前にレヴァント地方へ進出しようとした時も、ネアンデルタール人に撃退された。
それにも関わらず、次にホモ・サピエンスがアフリカの外へと進出した時、ネアンデルタール人は急速に数を減らし、滅びてしまった。
進出の一回目と二回目で、何が違ったのか。フレンズの存在である。フレンズは友好的で穏やかな存在と思われがちだが、闘争本能を持ち、敵とみなした相手には容赦がない。人類を超越した身体能力を持つフレンズと手を取り合った時、世界の支配権はホモ・サピエンスのものとなったのだ。
文明の起源
文明が興るには集団でなくてはならず、それを統率する者が必要だ。その統率者はどのように集団をまとめ上げていたのだろうか。もちろんフレンズの力によってである。戦闘はもちろんのこと、フレンズの能力は建築や運搬、諜報・索敵においても王の助けとなった。このことから文明はフレンズによって誕生したと考える者もおり、これをフレンズ文明起源説と呼ぶ。
By Bernard Gagnon - Propra verko, CC BY-SA 3.0, Ligilo
世界四大文明がどれも大河の近くで誕生したのも、これと無関係ではない。地表に散乱しているサンドスターは、雪解けによって濃縮されながら河へと流れ込む。河はサンドスターを多分に含む土砂を下流へと運び、やがて氾濫して堆積させる。このようなサンドスター濃度の高い土地の動物はフレンズ化し、近隣の人類と交流するようになったのだ。
また、フレンズと関係の深い文明誕生と言うと、少し後の時代となるがローマが挙げられる。ローマの建設者である双子の兄弟ロムルスとレムスは赤子の時、権力争いによってテヴェレ川へと捨てられた。だが二人を哀れに思った精霊によって救われ、川の畔に住むメスのオオカミに預けられる。
By Benutzer:Wolpertinger on WP de - Own book scan from Emmanuel Müller-Baden (dir.), Bibliothek des allgemeinen und praktischen Wissens, I, Deutsches Verlaghaus Bong & Co, Berlin-Leipzig-Wien-Stuttgart, 1904. Image copied from de:Bild:Kapitolinische-woelfin 1b-640x480.jpg, Public Domain, Link
当然このオオカミがフレンズであることは言うまでもない。その後二人は羊飼いのファウストゥルスとその妻アッカ・ラーレンティアに見つけられ、育てられる。この妻は女神ケレースという説があるのだが、彼女はギリシア神話の女神デメテルと同一視されており、このデメテルは本来ウマの頭をした女神であったとされる。このことからローマはフレンズから産まれたと言っていいだろう。
フレンズに育てられたという話は、古今東西あまねく存在する。例えばギリシア神話のゼウスもフレンズに育てられた一人である。彼はアマルテイアというヤギのフレンズによって育てられた。地中海世界以外であれば、北米の先住民族モドック族の話が有名だ。彼らによればインディアンの全ての部族の先祖は、グリズリーによって育てられた精霊であると言う。
このようにフレンズが人間の子を育てるというのは、歴史上繰り返しあったことであり、育てられた子は時に文明の始祖となった。アニメを見てサーバルの母性に心打たれた視聴者も多いようだが、それも当然であると言えよう。
伝承とゆらぎ
ここまで読んだところで、納得がいった人がいる一方、引っ掛かりを感じる人もいるだろう。中でも姿形については、現在のフレンズと伝承の中でのフレンズで異なる場合があるからだ。フレンズの外見は人間の若い女性に獣の手足と尻尾、それに耳を付けたものである。しかし伝承においては、完全に獣の姿をしていたり、あるいは男性であったりする。
これは文化的・歴史的背景による意図的なことであったり、伝達中に起きた変化によるものだ。典型的な例として、古代メソポタミアにいたヤギのフレンズであるエンキ(エア)の場合をみてみよう。
By The British Museum Collections - Version 1 Version 2, Public Domain, Link
エンキは知恵、呪術、それに淡水などを司る神である。彼の最も有名なエピソードは『ギルガメシュ叙事詩』にも書かれた洪水伝説だろう。他の神々が大洪水で人類を滅ぼすと決めた時、彼はシュルッパクの王に大きな船を作るように命じた。おそらく実際は、ヤギの優れた聴覚によっていち早く危機を察知し、王に避難を進言したのだと思われる。
このエンキだが、エンキの母である女神ナンムとの共通項が多い。そのためエンキはナンムが姿を変えたものであるという説もある。このことから実在したフレンズは現代と同様に女性の姿をしていたが、神話における役割のため、性別が変化して伝わっているのだと考えるべきだろう。
役割によって性別が変化して伝わる、あるいは元々性別を偽るというのは、そう珍しい話ではない。最も有名なのはアーサー王ことアルトリア・ペンドラゴンだろう。近年、研究が進んだことで男性と思われていた人物が実は女性であったことが、他にも多く判明している。フレンズも同様の理由で変化していてもおかしい話ではない。
迫害、フレンズ暗黒時代へ
このように人類とフレンズは、手を取り合うことで繁栄を謳歌してきた。しかし、その関係は永遠のものではなかった。最近までフレンズの存在が知られていなかったことからもわかるように、彼女たちは歴史の表舞台から姿を消すのである。我々人類が生み出した物によって。
フレンズに襲いかかった正体、それは虚構だった。実際には存在しない、しかし人々の頭の中には確かに存在するそれは、宗教である。もちろん、宗教と分類されるものは以前からあり、それどころかフレンズを神と崇める宗教も多くあった。では今回の宗教は何が違っていたのか。それは布教活動を伴っていた点にある。
それまでの宗教はあくまでも自分たちのためのものであり、外部の人間に対しては興味を持たず、改宗を求めることをしない。それどころか多神教にいたっては、相手の神々を受け入れることさえもあった。時には他宗教に対し軽蔑を示すこともあるが、迫害するのはごくわずかな例外を除けば無かった。
しかし、布教活動を行う新しい宗教は違った。自分が正しいと信じるならば、他の宗教を否定しなくてはいけない。そのため、自分たちと異なる宗教が存在したら、例え無害であろうとも攻撃し、撲滅しようとする。宗教より人権が優先される現代ではまず無いが、そういった時代は確かに存在したのである。
かくして異教的存在のフレンズは攻撃の対象となり、迫害された。フレンズを崇めていた人々も同様である。中でもエンキやアマルテイアのように、各地で神格化されていたヤギのフレンズは、悪魔と見なされるにようになった。
Public Domain, Link
こうして古代が終わるとともに、フレンズ暗黒時代の幕が開けたのだった。
終わりに
以上が原始・古代における人類とフレンズの歴史である。かつては側にいるのが当たり前であり、人類の発展はフレンズ抜きではなし得なかった。しかし時代が進むに連れ、人類の方からフレンズとの関係を切ってしまったのである。
現在、人類とフレンズが手を取り合う時代が再びやってきた。この関係は一時的なものなのか、それとも永遠のものなのか。それは我々次第である。