本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

男の下半身、前から見るか?後ろから見るか?

「生ける神の戦列に挑戦するとは、あの無割礼のペリシテ人は、一体何者ですか」
巨漢と対峙したダビデは、ハートの目でこう言った。

聖書の時代より、男の下半身の「前」に注目するのは男性である。

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Benjamín Núñez González CC BY-SA 4.0, Link

一方、女性が注目するのは下半身の「後」、すなわち「尻」である。

なぜ男女で男性の下半身に対する着目点が真逆なのか、その理由を生物学的観点から探っていく。

巨乳と対になるもの

前回「巨乳美少女と対になるのは巨根男性ではなく、心が通じる有能なイケメンである」と書いた。

これに対する反応を見ると賛成が多かった一方で*1、「巨乳の対として巨根を出すのは間違いではない」とする反対意見も数あった。

そういった反対意見を読んだ上でも、俺の意見は変わらない。女性が身体のパーツに注目されることを忌避するのは、今回の件も含めてよく見かける。男性が「女は男のことをATMとしてしか見ていない」と批判するのも目にしたことがある。しかし、男性が「女性は男性の価値を大きさだけで判断する」なんて嘆くのは、そんなに一般的なことだろうか?

とはいえ俺は論争するつもりは無い。ネットでは完全に論破したとしても得るものは僅かだからだ。俺は「ピュロスの勝利」を望まない。

なので今回は前回と違った視点からの話をすることにした。視点をグッと下げるのだ。注目する先は「男性の下半身」である。

本題に入る前に

本題に入る前に「2点」言っておくことがある。

1点めは「言い換え」についてだ。どうしても話題の都合上「男性器」について言及しなくてはいけない。しかしこの単語をあまりにも連呼すると、アダルトコンテンツ判定されてしまう*2。そこで本記事では「コブラ」と呼称することにした。以降、本記事内で「コブラ」と書いてあった場合、それは蛇ではなく、男性の股間にぶら下がっているものだと思ってもらいたい。

2点めは「傾向」についてだ。前回の記事もそうだが、今回の記事でも俺が語るのは「傾向」である。これは必ず当てはまることを意味しないし、例外が無いと言っているわけではない。あくまでも集団としてそのような振る舞いをする割合が多いというだけだ。

本当はこんな興ざめすることを前置きとして書きたくないのだが、後に書いても読まれない。人間は性的に興奮すると衝動的になるからだ。少なくとも男性はそうである*3。きっと最後まで読まず、衝動的にコメントすることだろう。

準備が整ったところで、本題に入ろう。まずは前回の記事に通じるところからだ。女性は男性の稼ぎを気にするという話を。

男の稼ぎは尻で決まる

もし150万年前に出版文化があったら、きっとこんなタイトルの本が出ていたに違いない。そして恐ろしいほどのロングセラーとなっていただろう。ヒトは長きに渡り、走ることで狩りをしていたのだから。

前回も紹介したが、ロマンス小説に登場するヒーローのパーツを表す頻出語トップ7は以下である*4

  • ほお骨
  • あご
  • ひたい
  • ウエスト
  • ヒップ

今回注目すべきは一番最後の「ヒップ」すなわち「尻」である。女性は男性を見る時、コブラよりも尻を重視するのだ。

なぜ女性は男性の尻に注目するのだろうか。それは男性の「大殿筋」を見ているのではないかと考えられる。女性は相手の大臀筋が筋肉質引き締まっているかを確認しているのだ*5

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Dr. Johannes Sobotta [Public domain], Link

大殿筋は人体の中でも最も大きく、強力な筋肉だ。この筋肉が他の霊長類とは異なるヒト特有な尻の形状を形作る。この偉大なる筋肉の役割は2つ。1つは骨盤を安定させ維持すること。もう1つは股関節の伸展だ。これが人を走らせる。

ハーバード大学の古人類学者ダニエル・E・ リーバーマンは、大殿筋は歩くときよりも走るときに活用されると述べている*6。走行時に収縮することで、姿勢の安定化に役立っているのだ。この発達した大殿筋をホモ・エレクトス*7の時点で既に獲得していることが、骨格から判明している。

このホモ・エレクトスは肉食をしていたことが分かっており、走るのに向いた人体構造武器が未発達*8なことから、エレクトスの狩猟方法としてリーバーマンらは「持久狩法」(獲物が疲れ果てるまで追いかけ続ける狩猟方法) を提唱している。これはただの推測ではない。数学者のルイス・リーベンバーグは学生時代、カラハリ砂漠の狩猟採集民族ブッシュマンと実際にこの手法で狩りを行っている*9

以上のことから一つの仮説が導き出せる。

200万年の長きに渡り、尻のいい男性は稼ぎがいい

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Michael Albov CC BY 2.0, Link

前回の記事で紹介したように、女性は男性に対して「資産」「たくましさ」を求める*10。太古の昔、男性の尻はその両方のバロメーターであったのだから、女性が注目するのも無理はない。

ではコブラは?残念ながらコブラのサイズは男性の甲斐性を測るのに向いていない。

万能サイズが一番

「不等成長」という現象がある。複数の身体部位の寸法が、異なる比率で推移することを指す。例えば脳がいい例である。身長の低い人と高い人を比べた時、身長の差に対して脳の大きさの差は僅かである。これが不等成長だ。逆に同じ比率ならば「等成長」である。身長に対して脚の長さは同じ比率となっているため、これは等成長だ。

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Leonardo da Vinci [Public domain], Link

ではコブラ*11は?

ロンドンの泌尿器科医ジョーティ・シャーアンドリュー・ニマル・クリストファー 104人の男性について、コブラの長さと靴のサイズに相関があるか調査をした*12。結果、両者の間には相関が無かったと結論づけている。

まったくもってコブラは不等成長な器官なのである。これはヒトに限った話ではない。他の様々な生物においても、コブラは不等成長な器官であるという結果が出ている。これについて昆虫から哺乳類に至るまで130種にもコブラのサイズを測定し、まとめたビル・エバーハードらによれば、コブラはメスの中に入れるものなので万能な平均的サイズが有利ではないかと考えている。

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平均値でって言いたい / Ark0n CC BY-SA 3.0, Link

以上のことを考えると、女性がコブラのサイズを気にする理由は弱いように思える。なにせ遺伝子を残しやすいのは平均的なサイズであり、たくましさとも関係が無いからだ。少なくとも求めるのはちょうどいいサイズであり、大きければいいというものではない。

しかし男性からは異なる景色が見えている。

競争と興奮

男性はとことんコブラのサイズに拘る。もちろん大きいほど良い。異性愛者の男性でもだ*13

カリフォルニア州立大学ロサンゼルス校のジャネット・レバーらが行った調査によると、自分のコブラのサイズに満足している男性は55%であり、もっと大きいほうが良いと答えたのは45%だった*14。逆に小さくしたいと答えたのは0.2%しかいない。ちなみに同じ調査で、パートナーのコブラのサイズに満足している女性は84%である。

また、例によってオーガスとガダムが検索エンジン「ドッグパイル」に打ち込まれた検索ワーズを解析したところ、「大きなコブラ」関連の検索ワーズは47,476あったのに対し、「小さなコブラ」関連の検索ワーズは7,861しかなかったという。

他にも男性の方がコブラに興味があり、加えて大きさに拘るという調査結果を出すことはできるが、この辺にしておこう。このブログの読者は男性の方が多い*15。自分自身がよく分かっているはずだ。

男性がコブラをポルノに求める理由として、オーガスとガダムは「精子競争」が原因ではないかと述べている。オスは自分の遺伝子を残すために、他のオスに打ち勝たなくてはいけない。そのため特殊な身体機能を獲得したり、勝利に向けた行動をとったりする。そういった要素をまとめて「精子競争」と呼ぶ。

(精子についての言い換えを忘れていた。面倒なので省略形から「スペル」と呼ぶことにする)

コブラはヒトのコブラには他の霊長類とは異なる大きな特徴が2つある。先端の「返し」「長さ」*16

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これはコブラではなくアシナシイモリの一種 / Tobias von Anhalt CC BY-SA 3.0, Link をトリミング

ヒト特有なコブラの形状は、先に出されたスペルを掻き出すのに効果的である。このことは聞いたこともある人も多いだろうが、実際にはどうなのだろうか。実は実験した人がいる。

ニューヨーク州立大学の生物心理学者ゴードン・ギャラップは精巧に作られた男女の模造品を用意した。続いて水7mlコーンスターチを7.16g加えて5分間の撹拌を行い、人工スペルを作成した*17。これで準備が整った。

ギャラップが学生たちと実験した結果、ヒトのコブラ形状を模した場合だと、1回のピストン運動でスペルの90%以上を掻き出せることが分かった。対して返し形状が無いバイブの場合だと、35%程度しか掻き出せなかった。

また、突っ込んだ深さと掻き出す量の間には強い相関があり、突っ込む深さが75%だと書き出せる量は40%に満たなかった。これは短い場合も同じことが言える。

従ってヒトのコブラの特徴は、先出しされたスペルを掻き出すのに最適であると言うことができる*18。まさしくコブラは遺伝子を残す競争に勝ち抜くための形状をしているのだ。

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Ltshears CC BY-SA 3.0, Link
従って男性がコブラを見て恐れることは、それを自分の中に突っ込まれることではない。自らのスペルを無効化されることを恐れているのである。あれ程までにサイズを気にするのは、掻き出す効果に直結しているからではないだろうか*19

そして、その恐怖に立ち向かおうとする本能が、男性の興奮を高めるのである。

終わりに

男性の下半身に注目する時、女性は後ろを、男性は前を気にする傾向がある。これは進化について学ぶことで、もっともらしく説明することができる。

そう、「もっともらしく」だ。

今回紹介した研究はどれも実際に行われたものである。しかしだからといって、注目する理由が正しいとは限らない。俺自身は本記事に書いたことが最も有力であると考えているが、絶対に正しいと思っているわけではない。その事自体は理解しておいてほしい。

実際、本記事の参考書籍の一つである『人間の性はなぜ奇妙に進化したのか』の著者ジャレド・ダイアモンドでさえも、著書の中でコブラの特徴の謎は「いぜんとして未解決のままに残る」と言っている。しかしだからこそ、この手の話題は面白いのだ。

参考書籍

いつもの本。


生物の交尾器の話しか書いていない本。だがそれが面白い。


『けものフレンズ』を見る上でまず最初に読んでおくべき本。


ジャレド・ダイアモンドもこういうネタで本を書くと分かると、俺も堂々と書くことができる。もちろん本の内容は至って真面目。この記事の完全上位互換的な。

股間に注目する記事

巨根より巨乳という人はこっち

*1:特に数えたわけではない。俺の感覚としての話。

*2:実際に「なぜ断面図は性欲を掻き立てるのか」はアダルトコンテンツ判定をくらった。

*3:ブラム・ヴァン・デン・バーグらによる研究では、ビキニ姿の女性を見た後の男子学生は、他の画像を見たときに比べて衝動的で我慢できなくなった。Bikinis Instigate Generalized Impatience in Intertemporal Choice by Bram Van den Bergh, Siegfried Dewitte, Luk Warlop :: SSRN

*4:オギ・オーガスとサイ・ガダムによる1,878人の作家による10,344作品のロマンス小説を調査した結果。

*5:「筋肉質の」と「引き締まった」ともにロマンス小説でヒーローを形容するのに人気なフレーズである。

*6:The human gluteus maximus and its role in running. - PubMed - NCBI

*7:ホモ・エレクトスが登場したのはおよそ200万年前。

*8:石の槍先が登場したのさえ60万年前。

*9:BORN TO RUN 走るために生まれた ウルトラランナーVS人類最強の“走る民族” | NHK出版

*10:アンソニー・コックスとマリアンヌ・フィッシャーは1949年から2009年までのロマンス小説、計15,019作の作品名を調査した。登場頻度の多い職業は「資産」か「たくましさ」が求められていると分析している。

*11:この記事では「コブラ」が何を指すか忘れていないよね。

*12:Can shoe size predict penile length? - Shah - 2002 - BJU International - Wiley Online Library

*13:本記事では男女の違いについてがテーマのため、焦点を当てるのは異性愛者のみとする。

*14:(PDF) Does Size Matter? Men's and Women's Views on Penis Size Across the Lifespan.

*15:Googleによれば60〜70%が男性。

*16:ヒトと最も近い種であるチンパンジーのコブラは、細く尖っており短い。それにトゲがある。

*17:(PDF) The human penis as a semen displacement device

*18:コブラの形状が掻き出しに最適となっているのはヒトに限った話ではない。ハグロトンボのコブラは後ろ向きにトゲがあり、両側にはシャベルのような形状もついている。昆虫学者のジョナサン・ワーゲは、交尾中のハグロトンボを解体することで、このコブラの形状が掻き出すために使われていることを確かめた。

*19:この仮説が正しいのであれば、女性が男性ほどサイズを気にしないのも納得できる。自分にとって特にメリットが無いからだ。