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キャッシュレス化が著しい中国の深センで行われる100元札のババ抜き

キャッシュレス社会というのは、スマホ決済サービスが充実していることではない。
現金での支払いを断られる社会のことだ。

中国の深センに行ってそう思った。

深センに行ってきた

中国の深センに2週間ほど行ってきた。仕事なので観光はそれほどしていないが、電気街の「華強北」を散策することはできた。

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深センは数年前からネットでしばしば記事が上がるので、歩いていると「ここネットで見たことある」となる。それで似たような写真を自分でも撮る。

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遊歩道ではセグウェイもどきが走っているし、マネキンロボも展示されている。地下鉄の駅から出てすぐに、「なるほど、たしかにここは電気街だ」と思ったのを覚えている。

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こんな感じで華強北はなかなか面白かったが、あまり語れることは無い。俺はメイカーズな人間ではないため、いろいろ売られているのを見ても「すげー」の一言で終わる。せいぜい「賽格通信市場」でケーブルやらApple Watchのバンドなんかを安く買う程度。

それよりも深センで一番印象的だったのはキャッシュレス化だ。確かに日本よりも先を進んでいるのだと大いに実感した。現金で支払おうとすると、断られるのだ。コンビニでさえも。

100元札お断り

100元札は人民元の最高額紙幣である。日本でも現地でも円から人民元に両替をすると、多くの場合この100元札を渡される。

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100元札

つまり開始時の手札には100元札しかない。にも関わらず、コンビニ (セブンイレブン) で水でも買おうと100元札を出すと、首を横に振られて断られるのだ。情報が無いとこれで詰む*1

断られる理由は明白だ。レジにお釣りが無いのだ。支払いを断られたときに思わず「なんでですか? (日本語)」と訊いたら、ガチャッとレジの中を見せてきた。中に入っている紙幣の杯数は少なく、種類によっては完全に空だ。確かにこれではお釣りを返せないのだから、100元札を断るしかない。

日本においても同様の理由で1万円札による支払いを断られることはある。例えばタクシーはその例として挙がりやすい。しかし俺が深センで断られたのはコンビニで、しかもたった100元でしかないのだ。

100元の価値

最高額紙幣といっても、100元はそれほど高額というわけではないからだ。俺が行った2019年10月末のレートだと1元は約16円である。なので100元は約1600円となり、レートだけで考えたら二千円札よりちょっと安い札ということになる。

日本と深センの物価を考慮しても、話はそれほど変わらない。どの製品・サービスを指標にするかによって違ってくるが、とりあえず俺の支払い履歴をみてみよう。

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ライスヌードルの店:1食10〜20元 (約160〜320円)

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ココナッツミルクとマンゴーのシェイク:23元 (約370円)

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ポケットティッシュ(7枚入*18パック):7.9元 (約130円)

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サンダル:35元 (約560円)

俺の感覚としては、深センの方が日本よりも物価が安いが、半分とまではいかない。なので物価を考慮に入れた場合、100元札は日本における二千円札よりは上かもしれないが、五千円札よりは下であると言えるだろう。その程度の価値しかない札の支払いによるお釣りでさえ、コンビニに無いのだ。

コンビニ以外でも状況は似たようなものである。少額 (20元程度) で100元札を出すと、多くの店で嫌がられ、お釣りが無ければ断られるのだ。ほとんどの中国人はスマホ決済で支払うから現金が無いのだろう。そしてスマホ決済ができない日本人は、次のように考え始める。

「この100元札を誰に押し付けるか」

100元札というババ

俺の場合、100元札を崩す方法は主に2つあった。1つは100元札を使える店での買い物。もう1つは同行者への押しつけである。

ホテルの近所にあるスーパーは100元札を使えるということで有名だった*2。なので必要なものがある時はなるべくそのスーパーで購入するようにし、必ず100元札を出すようにした。僅かな出費で手札が入れ替わるのだから、実質マリガンである。

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100元札を崩すための水:11元 (約180円)

しかし金を崩すために不必要なものを買うのもバカらしい。そうなると後は他のプレーヤーに押し付けるしかない。

深センには仕事で行ったので、いつもの海外旅行とは違い、多くの場合に同行者がいた。そのため食事もグループですることが多い。

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海南椰汁小白兎

この時、金額によっては支払いが面倒なことになる。例えば5人で399元だったことがあった。店に対する支払いは100元札が4枚でちょうどよい。これは簡単だ。しかし我々グループ内では各自が80元を出す必要がある。ちょうど出すためには最低でも3枚の紙幣 (50元+20元+10元) が必要だ。また、グループ内の誰かが100元札を出した場合、お釣りとして20元を渡さなくてはいけない。

みな手元には100元札が多くあり、少額紙幣の20元札や10元札は貴重である。なので毎回のように支払い方法で頭を悩まし、あーでもないこーでもないと会議が始まる。それを見ている中国人店員は「これだからWeChat Payを使えない日本人は」と呆れ顔をしていた。

このようなことが何度か続くと、しだいに100元札がババにしか見えない。俺は支払いのたびに「この20元札は保持したままで、100元札を押し付けたい」と考える。とはいえ中にはマジで100元札しか手元にない人もいるため、そういう時は素直に20元札を差し出すのだった。

終わりに

キャッシュレス化が進むというのは、決済サービスが便利になっていくだけでなく、現金が不便になっていく。こうなると現金を使い続けるというのは現状維持にすらならず、むしろマイナスであるのだから、レイトマジョリティもキャッシュレスとなる。今の中国はそういう状況だった。

加えて、日本では現金の利便性が高いというのも実感した。まだ日本においては、現金支払いが断られて、キャッシュレス支払いを求められる場面はほとんど無い。その逆は多いが。

便利であることは基本的にいいことだが、新しい方式に移る時は厄介である。決済に限った話ではなく。

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深センで買ったものとか

だいたいInstagramに投稿している。

@honeshabri • Instagram写真と動画

お金に関する記事

*1:なお100元札を断るこのコンビニでは、なぜかクレカも使えなかった。

*2:弊社の一部で。