本しゃぶり

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【書評】利根川さんちょっと待って / “すべては「先送り」でうまくいく ――意思決定とタイミングの科学”

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きっかけ

利根川さんに言われちゃったので。

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ちょい待て / 賭博黙示録カイジ(7)より

まだ動きたくない。後で決めたい。昔からそういう性格だった。将来のことなんてその時になってみないとわからないから予定はできるだけ立てない。今はカレーが食べたくても明日になればラーメンが食べたくなっているかもしれない。それなのに今日の段階で明日食べるものを決めてどうするのか。好きなカードは手に入れた時から《今を生きる/Seize the Day》だ。

しかし、利根川さん含めて世の中は決断を遅らせることを許さない。少なくともきちんと予定を立てたり即断即決して行動に移せたりする人が仕事のできる人間ということになっている。仕事術や自己啓発系の本はそれなりに読んできたつもりだが、「素早く決断して行動に移す」というのはかなりの割合で美徳として書かれている。それどころか即断できるようになる訓練として、レストランでメニューはパッと見で決めろなんてよく書かれている。そんなに直感が大事か。

そんなところにこの本である。タイトルからして俺のことを優しく肯定してくれる。「先送り」したほうがいいのだよ、と。amazonでこれがおすすめ商品に登場した時、俺は先送りせずに1-Clickで今すぐ買った。


内容とか

読んで思った。この本は福本作品のセリフに科学的裏付けを用意した本だ。

優しくなかった

読んで裏切られたという思いとそりゃそうかという思いが頭の中で渦巻いた。確かにこの本の趣旨は「決断を先送りにしろ」だ。しかしこの本のタイトルには肝心なことが書いていない。それは「決断するまでの間に何をするべきか」ということだ。そしてそれは一言で言える。分析しろ。遊んでいてはダメだった。

追記しておくとこの本は、決断をするのは待てとは言うが、ずっと保留していろとは言わない。むしろ決断する締切に間に合うよう準備しろと言っている。締切があってこその先送りであり、無制限に先延ばししろと言っているわけではないのだ。従って「分析し、ベストのタイミングで決断して行動しろ」という割りと常識的なことを言う本である。

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これは駄目なパターン / アカギ―闇に降り立った天才 (6) より

ギリギリまで踏ん張って

さて、分析は決断しなくてはいけない瞬間の直前まで続けろと。ここで言う「直前」とはどれくらいギリギリを指すのか。取り上げられていた例で最も短いのは0.3秒前。テニスのサービスリターンの話だ。そんなレベルの話でもギリギリまで待てというのだから安易に決断してはいけない。さっさと決めて楽になるなど許されないのだ。

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どうにもこうにもなるまで考えろ / 賭博黙示録カイジ(10)より

このことは上のように利根川さんもちゃんと言っていた。そして以下にこう続く。

すぐ「これで負けたらしょうがない」という口をきく
白黒つけるタイミングが一つも二つも早い
ビギナーは耐えられないのだ
勝つか負けるかわからないという‥‥ 不安・葛藤‥‥‥‥‥
そんな時間が長く続くことに耐えられない 
そんな状況よりいっそ‥‥‥
ハッキリさせた方がいいと考える 
仮に‥‥‥‥
負けが確定することになろうとも‥‥‥‥!
それが素人の習性だ‥‥!

まさにこれ。プレッシャーに負けてはプロになれない。

お菓子が増えるのを待てると成功する

待つのが大事なのは分かった。しかしこの「待つ」という行為、世の中にはこれが苦手な人が多い。だが決断も含め、待つことができる人間は優れているらしい。正確に言えば「満足を先送り」できるかどうかだ。それを示したのがこの本でも紹介されているマシュマロ実験だ。簡単にこの実験の概要を説明する。

  1. 4歳児を小さな部屋に入れる
  2. マシュマロを目の前に置く
  3. 「食べてもいいけど15分我慢できればもう一個あげる」と説明する
  4. 子供を部屋に一人にする

かわいそうな子どもたち。このマシュマロの増える速度はたったの0.0011MpS(Marshmallows per Second)しかない。結果、多くの子供は15分間我慢できずにマシュマロを食べてしまったが、少数の子供はマシュマロを増やすことに成功した。そして追跡調査をしてみると待てない子供は問題行動を起こしている事が多く、逆に待てた子供はSAT (大学進学適性試験))のスコアが高いという傾向があった。そしてこの自制心の有無は十数年が経過しても持続していたのだ。

この待てるかどうかというのは個人だけに当てはまるものではない。企業にもそのことが言える。この本で紹介されているのはポスト・イットの話で、この商品はきっかけからデビューまで12年かかっている。あくまでこれは一例にすぎないが、ようするに画期的なものは一朝一夕には生まれないという話だ。iPhoneが広まった頃からイノベーションという単語が流行っているが、一瞬の閃きだけではダメで、植物を育てるようにじっくりと育てていかなければならないと言っている。だから結果を焦らずに耐えて結果を待たなくてはいけない。これができればあなたは優秀な人間だ。マシュマロが保証してくれる。

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長い目で見よう / 賭博黙示録カイジ(2)より

まとめ

まだこの本を評価するタイミングじゃない気がする。もう少し分析を続けよう。


こんな人におすすめ

  • 土壇場で決断する人
  • 刹那的に生きる人
  • お菓子を増やしたい人

待てないなら買うのが大人

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