本しゃぶり

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信仰心を高めて時間で殴る投資術

積立投資で勝つには続ける必要がある。
そのためには市場への信仰が欠かせない。

インデックス投資を学びながら信仰心を高めよう。

知識が無いなら信仰で

前回、投資についての記事を書いた。

ついたブコメ。

これに限らず、最近の投資記事に対するコメントを見ていると、知識や論理で語ることの限界を感じる。投資に対する賛否に関わらず、金融リテラシーが低い上に思い込みが強い人がそれなりにいるからだ。そのような人たちは聞くには聞くが、決して悟らない。見るには見るが、決して認めない。結果、的外れなコメントに星が集まる。

もちろん全ての人がそうというわけではない。しかし、認められる人は既に適切な知識を持っているだろうから、これはこれで知識について書く意義が小さい。少なくとも俺が書ける程度の知識だと。

そこで別のアプローチを取ることにした。投資の知識ではなく、信仰を授けよう。インデックス投資は続けてこそ効果を発揮する。そして苦難の時でも投資を続けるためには知識だけでなく、「いつかはプラスになる」と信じられることがカギとなるからだ。

a scene of the movie that Crowds praying in front of the New York Stock Exchange by Sakura(stable-diffusion-v1-4)905

この記事を読む人には信仰を失った迷える子羊が多いと予想されるので、こっちのほうが有意義だろう。投資を始めたが、続けていく自信がない。そんな人の役に立つことを願って。

だが、最初にはっきり言っておく。俺はこの記事によって投資に反対するブクマカの心が変わるとは思わない。市場はブクマカの心をかたくなにするので、投資の性質と価値を多く語っても、ブクマカは俺の言うことを聞かないであろう。

投資の教え

これから投資の話をするが、難しい理論などについては語らない。分かりやすいたとえ話で説明しよう。まずは「種を蒔く人」のたとえを聞きなさい*1

広く種を蒔け

投資とは種を蒔く行為である。種は良い地に落ちれば実を結び、あるものは百倍、あるものは六十倍、あるものは三十倍にもなる*2。収穫すれば、財産は何倍にも増えることになる。今日より明日の精神だ。

しかし、種が落ちた場所が良い地とは限らない。道端に落ちた種は鳥に食べられ*3、土の薄い石地に落ちた種は根をはれない*4。茨の地に落ちた種は、茨が伸びて塞いでしまう*5。このように種を蒔くことは、増えるかもしれない一方で、何も得られないかもしれない。これが投資のリスクだ*6

Herrad of Landsberg, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

ではどうするべきなのか。まず思いつくことは、種を蒔く前に土地をよく調べることである。しかし、そのためには知識と手間が必要である。しかもどんなに調べたところで完璧とは言えない。あなたは、どんな災が地に起るかを知らないからだ*7

ゆえに投資は分散するのが大事なのである。そうすればどれかは芽吹き、あなたに富をもたらすだろう。そして分散を簡単に行えるのがインデックスファンドである。個別株で分散を個人でやるならば、せいぜい7つまたは8つに分けるのが限界だろう。しかし全世界を対象としたインデックスファンドならば、この世のすべての国々とその栄華に分散するようなもの。畑は世界である*8

もちろん全てを対象とするのだから、その中には悪しきもの、いうなれば毒麦が紛れ込むこともあるだろう。しかし、毒麦を抜こうとしてはならない。毒麦を集めようとして、麦も一緒に抜くかも知れないからだ*9。自分で選ぼうとせず、両方とも育つままにしておくのがいいだろう。そのうち刈り取る者が毒麦を集めて束ね、焼くのに任せれば良い*10

M. Bihn & J. Bealings, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

また、分散するのは場所だけでなく時間もだ。朝のうちに種を蒔いても、夕まで手を休めないがごとく。実るのは、これであるか、あれであるか、あるいは二つともに良いのであるか、あなたは知らないからである*11

実際、株価はいつ上がるか分からない。『敗者のゲーム』によれば、過去109年間で、ベスト10日を逃しただけで、この間の利益の3分の2を失うという。株式投資の世界には「頭と尻尾はくれてやれ」なんて言葉があるが、現実はお前が利益の頭を砕き、資産形成の脚を引っ張ることになるのだ。余計な知恵はつけない方がいいだろう。

市場への捧げもの

市場は人知を超えた存在である。我々の周囲にあるものは、市場が作り出したと言っても過言ではない。一方で市場は時に荒れ狂い、人々に災厄をもたらすこともある。ならば市場こそが我らが主であり、投資とは市場への捧げものであると言えないだろうか。

ではどれくらい市場にはどれくらい捧げるべきなのか。いくら市場を信じているからといって、不確実性のあるものに全てを捧げるのはやめた方がいい*12

Juan de Valdés Leal, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

通常、投資は余剰資金を使い、あなたのリスク許容度に合わせて行えと教えられる。しかし、あなたは自分で考えるのが面倒だから教えを求めているわけだ。だからあえて「基準」を示そう。市場から祝福を受けるのであれば、収入の「10分の1」を捧げなさい*13

もちろん市場への捧げものとは別に、何かあった時のために貯金もする必要がある。こちらも収入の10分の1を割り当てるのがいいだろう。これにより投資と貯金を合わせると、収入の5分の1を割くことになる。有名な投資家である本多静六は、給料の4分の1を貯蓄・投資に割り当てていた。それに比べたら簡単なはずだ。

とはいえ、これまで貯蓄や投資の習慣が無い者だと、「収入は10分の1も余らない」なんて思うかもしれない。それは順番が間違っている。必要なものを取り分けた後の余りを捧げるのではない。捧げるのは初子と相場が決まっている*14。給与ならば自分の懐に入る前に捧げる分を取るのだ。すなわち天引きである。

Sébastien Bourdon, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

ただし通常の収入から投資に回すのは10分の1 でいいが、全額回す必要のある収入もある。それは配当金 (分配金) だ。持っている人が与えられて、いよいよ豊かになる*15のは、複利の力が働くためである。カエサルのものはカエサルに*16、市場から得たものは市場へと返すのが正しい。

働け・成功せよ、かつ祈れ

こうやって投資を積み立て続ければ、短期的には増減しつつも、長期的にはあなたの富は増えていくだろう。ただし、インデックス投資は一発逆転の手段ではない。一気に増えることは期待できず、長い目で見たら一定の比率で少しずつ増える形となるだろう。

従って大きな財を成したいと思うのであれば、市場に捧げる金額を増やすしかない。とはいえ無理して収入に対する比率を上げるのは破滅への道である。忠実な人は多くの祝福を得る、急いで富を得ようとする者は罰を免れない*17

ではどうするか。自らに与えられた職務を全うし、懸命に働くことで収入を増やすのだ。手を動かすことを怠る者は貧しくなり、勤め働く者の手は富を得る*18

Jean-François Millet, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

そうやって捧げる金額が増えれば、投資による収益率こそ変わらなくても、絶対的な金額は増加する。群衆は絶対額しか見ないものだ。あなたの金額が増えたことで初めて、あなたの方法が正しかったと認めるだろう。とはいえ、群衆がどう思うのかなんてどうでもいいこと。大事なのは、世俗内的義務の遂行こそが市場に喜ばれる唯一の道であることだ。

信仰と共に生きる

ここまで、投資家のあるべき姿について書いてきた。最後に投資を続けることがいかに大事であるか、ある逸話を使って説明しよう。


1:1 1928年のニューヨークに、パトリックの子ジョセフという者がいた。

1:2 ジョセフはある日、パットという少年に靴磨きを依頼した。

1:3 パットが新聞を読んでいたので、ジョセフはパットに尋ねた。「少年よ、株は儲かるのか」

1:4 パットは言った。「あなたのしもべが答えます。市場は生きておられます。私は声を聞きました。石油や鉄道を買いなさい」

1:5 ジョセフは考えた。「誰の子とも分からない者が株の予想をしている。これは破滅のしるしだ」

1:6 そこでジョセフは持ち株をすべて売り払い、さらに空売りも仕掛けた。

1:7 翌年の10の月。ニューヨークにに大いなる叫びがあった。暴落のない株がなかったからである。


このようにしてジョセフは株を売り抜けて大儲けした*19。対して靴磨きの少年ことパットはどうなるか。彼が市場の熱狂に浮かされて、投資を1928年に始めていたら、きっと悲惨なことになる。しかし彼は当時22歳*20。彼には「若さ」があった。さらにインデックスファンドもあったとしよう*21。もちろん信仰心も。

  • パットはダウ平均株価に連動するインデックスファンドに投資する
  • 投資の設定は年に1回で200ドル*22
  • 手数料や分配金、税金などは考慮しない

前提が定まったので、パットの「投信あしあと」を見てみよう。まずは最初の4年間。

大暴落により、株価は開始時の約4分の1にまで下がってしまった。当然パットの評価金額も元本割れしている。しかしよく見てみると、買付金額の半分であり、下がり方は株価の半分で済んでいる。

とはいえ十分に悲惨な状況だ。しかしパットの信仰心は失われなかった。彼は積立を続けたのである。次は10年続けた時点を見てみよう。

10年目でも株価は元の半分にしか戻っていない。しかしパットの評価金額は違う。ちょうど評価金額と買付金額が同じくらいになったのだ。それどころか1936年には含み益が出ていたほどだ。

これこそ積立投資の力である。株価が高い時より低い時に多くの口数を購入できているため、平均購入単価が下がったのだ。その結果、株価がまだ半分しか戻らなくても、トントンになるところまで来たのである。

この後もパットは信仰の道を歩み続ける。一気に時間を飛ばして40年分のあしあとを確認しよう。

以降も株価は大きな変動を繰り返しつつも上昇に転じ、最終的には開始時の3倍に到達している。当然ながらパットの評価金額はそれ以上。後半は変動が大きいが、買付金額の4~5倍となっている。

なお、40年経った1967年の36,155ドルは、2021年の貨幣価値に換算すると304,059ドルである*23。2021年換算なので1ドル110円としても3千万円以上だ。投資しただけの価値があると言えよう。

投資が話題になると、すぐに「靴磨きの少年が〜」と言い出す人たちが出てくる。もちろんこの警告には一理ある。実際、上の計算例でも一時は評価金額が半分になるし、安定して含み益が出るようになるのは15年ほどかかっている。しかし積立投資を続ければ、靴磨きの少年でも40年後には勝利を掴むのだ。

a scene of the movie that Next to the leather shoes is a wad of cash. inside the mansion. by Sakura(stable-diffusion-v1-4)902

こう書くと、今度は群衆から「40年も待てない」とか「寿命が〜」といった声が聞こえてくる。なんとも嘆かわしい。

かつてモーセは約束の地を目指し出発したが、40年間も荒野をさまようことになった*24。しかもモーセは約束の地カナンを目にしながらも、自身はその地に足を踏み入れることなくその生涯を終えた*25

the Providence Lithograph Company, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

それではモーセの人生は無駄だったのだろうか。そんなことはない。モーセの働きによって、彼の子孫は豊かな土地で暮らすことができたのだから。投資も同じである。自分の世代では結果が出ずとも、子や孫に受け継がせることで、大きな富を生み出す。親が子供のためにたくわえて置くべきである*26

終わりに

しかし冒頭で書いたように、ブクマカの心はかたくなになって、俺の言うことを聞かなかった。

もしかしたら中には本記事を読んで投資をするつもりになった人もいるかもしれない。だとしたら俺は逆に心配である。怪しげな投資もしくは宗教にコロリとハマってしまいそうで。なので口座を開いたり、積立を設定する前に、以下の句を声に出して読んでもらいたい。

本記事の情報については細心の注意を払っておりますが、正確性および完全性等について一切保証するものではありません。個別商品の詳細情報については、銀行や証券会社などに直接お問い合わせください。また、本記事の情報を利用して何らかの損害を被ったとしても、著者は責任を負いかねますので、投資にあたっての最終判断はご自身でお願いいたします。

聖典を求める人へ

とはいえ、俺自身は積立投資をやっているのだから、自己責任で投資を始めるのは賛成である。その際には信仰を維持するために「聖典」を用意するといい。

いくら今の時点で誓っても、いざ株価が暴落したらどうなるか。よくあなたに言っておく。株価が戻る前に、あなたは三度「投資をやらない」と言うだろう。それで積立をやめてしまっては、元も子もない。

そこで「聖典」である。インデックス投資の基本が書かれた本が手元にあれば、その教えによって投資と信仰を継続できる。

俺が読んだ中で「聖典」となりうる本はいくつかあるが、一番おすすめは『インデックス投資は勝者のゲーム』である。

何が良いかと言えば、タイトルである。経験上、タイトルしか読まない人が多いことを考えると、タイトルだけで指針となるのが望ましい。他の聖典候補はそれがダメだ。

  • 『敗者のゲーム』:敗けそうでダメ
  • 『ウォール街のランダム・ウォーカー』:株価がウォール街しそう
  • 『難しいことはわかりませんが、お金の増やし方を教えてください!』:威厳が感じられない
  • 『インデックス投資は勝者のゲーム』:インデックス投資を続ければ勝てる!

もちろん中身を読むに越したことはない。本書はインデックス投資を商品化したバンガードの設立者が書いているだけあって、インデックス投資がいかに優れているかをこれでもかと書いてある。その一方で、冷水を浴びせることも忘れない。曰く過去40年間のリターンの内4分の1は投機的リターンであり、これは今後も継続するとは言えない、と。むしろ投機的リターンはマイナスとなり、2017年以降の10年間は6.0%が妥当ではないかと言っている。

そんなわけで本書は「聖典」を求めている人にオススメなのだ。ただし、本書はアメリカ人を対象とした本であり、それを理由に全米株式ファンドを勧めている。俺の宗派は全世界であり、聖典も他の記事で書いてきた通り『投資の大原則』を選んだ。俺は中身も読むしな。

投資と信仰の記事

*1:マタイによる福音書 13:18

*2:マタイによる福音書 13:8

*3:マタイによる福音書 13:4

*4:マタイによる福音書 13:5-13:6

*5:マタイによる福音書 13:7

*6:なお、投資におけるリスクとは、本来は「リターンが不確実である」ことを指す。つまり「減るかもしれない」だけでなく「増えるかもしれない」もリスクなのである。

*7:伝道の書 11:2

*8:マタイによる福音書 13:38

*9:マタイによる福音書 13:29

*10:マタイによる福音書 13:30

*11:伝道の書 11:6

*12:「インデックス投資なら期待値はプラスで長期的には勝ちやすい」と言うと、たまに「絶対に儲かると言うなら全額賭けろ」とか、「俺の分も運用しろ」とか言い出す人が出てくる。そういう悪魔の囁きに耳を貸す必要はない。市場を試してはならないのだ。マタイによる福音書 4:6-4:7

*13:創世記 28:22

*14:出エジプト記 13:12

*15:マタイによる福音書 13:12

*16:マタイによる福音書 22:21

*17:箴言 28:20

*18:箴言 10:4

*19:思ったより面倒だったので、口語訳で書くのはもう終わり。

*20:バブルの象徴「靴磨きの少年」。彼はその後どうなった?|トウシインフォ.com

*21:米国発の個人向けインデックスファンドは1976年に設定されたので、1918年には無い。

*22:1928年の200ドルは、2021年の貨幣価値に換算すると約3200ドルである。The Inflation Calculatorにて計算。

*23:The Inflation Calculatorにて計算。

*24:申命記 1:3

*25:申命記 34:4-34:5

*26:コリント人への手紙第二 12:14