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【書評】数理モデルには凄みがある / “波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘”

波紋と螺旋とフィボナッチ

波紋と螺旋とフィボナッチ

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きっかけ

こんなタイトルで無視できるわけがない。

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波紋 / ジョジョの奇妙な冒険 3 (ジャンプコミックス)より

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螺旋 / STEEL BALL RUN vol.11―ジョジョの奇妙な冒険Part7 (11) (ジャンプコミックス)より

俺の書評記事を読んでくれている人は知っているだろうが、俺はマンガやアニメをきっかけに本を買うことが多い。逆に本を読み解く際にマンガやアニメを使うことも多い。そしてこのタイトルである。俺が無視できるわけがない。

きっかけは新聞の書評記事だった。普段の俺は新聞を読まない。その時はたまたま実家に帰ってゴロゴロしていたら、たまたま新聞が俺の下にあったのだ。そして馴染みのある単語が目に入った。

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実家の俺 / スティール・ボール・ラン (1) ジャンプコミックスより

そこにはこう書いてあった。『波紋』『螺旋』 連想できるものは一つしか無い。

こんな言葉がある。「心が迷ったなら 買うのはやめなさい」だがもう『迷い』はない。俺は行動した。


内容とか

なんというか… これは確かに俺向きの本だった。

とり囲まれていた

まずこの本のある小見出しを書いておこう。

動物の模様を作るのは、
波紋(山吹色の波紋疾走)である

これが……これが…著者のやり方だったんだ……………
僕らが単語に気がつくのを計算していたみたいだ………

初っ端からネタで始めたが、この本は一般向けに書かれていて読みやすい。そして他にも著者の趣味と思われるネタがちょいちょい差し込まれている。誤解のないように言っておくと、話の中核となる研究内容はいたってまじめに説明されているし、式や図も豊富だ。おかげで話がわかりやすいだけではなく、読んでいて飽きない構成となっている。

それにしても最近の研究者はオタクネタに親和性が高いようだ。正確に言えば以前からその傾向はあったと思うので、一般的な書籍にそういったネタを使うようになったと言うべきか。最近紹介したこのへんの本もそうだった。

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今の時代は自分のやっている研究を一般の人達にどれだけわかりやすく伝えられるかが重要なのだろう。そういった時にオタクネタは著者と読者の共通の話題として上手く機能する。人によっては「別にオタクネタにこだわる必要ないじゃないか」と思うかもしれない。しかしそれは間違いだ。単に研究者である著者がオタクであるだけだ。どうせ書くなら自分の好きな事がいい。この本にもこう書いてある。

理系男子は“オタク”である。特に大学院に進み、研究が仕事になってしまうともう鉄板だ。(俺は違うぞ!という奴、オマエは理系ではない。)

俺はこの風潮に賛成だ。オタクに限らずもっとみんな自分の趣味を前面に出していくべきだ。そして本来関係の無いモノとモノを繋げることで新しいアイデアは生まれる。このまま突き進んでしまえ。

『チューリングの数式に敬意を払え』

生物は複雑な一方で、美しい幾何学模様をもっていたりする。あれは一体どうやって創りだしたのか。その答えがタイトルにもなっている「波紋」と「螺旋」と「フィボナッチ」である。そしてこれらは「数理モデル」で表すことができる。簡単に言ってしまえば数式で表すことができるってことだ。

例えばシマウマなどに見られる縞模様、もしくはキリンのような斑模様、さらには模様のない単色な体表。これらは体のどこは何色にしようとか、何センチ間隔で縞を作ろうとかそういう仕組にはなっていない。実はどれも同じ原理、チューリング波による結果なのだ。使われている数式は同じで、違うのは一つのパラメータ値だけ。実にシンプルな仕組みだったのだ。

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コイツの髪もチューリング波で説明できる / STEEL BALL RUN vol.13―ジョジョの奇妙な冒険Part7 (13) (ジャンプコミックス)より

ちなみにこれを最初に思いついたのは式の名前から分かる通り、あのアラン・チューリングだ。専門以外でも新たな発見するとか天才ってマジにすげえ。ただ あまりにも時代を先取りしていたために、他の学者たちには理解されなかったようだ。俺のブログもまだそこまで人気となっていないのも時代を先取りしているからなのだろうか。

それにしてもこの手の話を知るとうまくできているもんだと感心してしまう。形作るのに数式を使うというのはすごく理にかなっている。なぜならサイズにかかわらず、同じ表現で作ることができるからだ。人間が数式を生み出す前から生物はそれを使っていたというわけだ。数学なんて生きていく上で必要ないなんて言う奴(特に中学生)がよくいるが、アホだな。数学なんて単細胞生物ですら使っているというのに。

宝のありかは地図が示す

男には地図が必要らしい。

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俺は言われたこと無い / STEEL BALL RUN スティール・ボール・ラン 3 (ジャンプコミックス)より

著者も宝を見つけるためには宝の地図が必要だと言っている。ここで言う『宝』とは新発見のことだ。つまり新発見をしたいのであればそれを示してくれる『何か』が必要だということだ。そして著者はその『何か』は『数理モデル』だと言っている。数理モデルは現象の本質を捉え、可能性を指摘している。従って既にある数理モデルが本当か検証してみるだけで、新たな発見につながるのだ。

よく考えると俺も以前に数理モデルを扱っている。

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すごく単純なものであったが、現象を数式で表していることに代わりはない。新発見のためそのうち検証してみるか。

しかしなぜ著者は数理モデルを薦めるのか。新しいアイデアを生み出すのに、自分の専門外の領域からアイデアを貰ってくるというのはよくある話だ。違う分野同士のコラボは新しい価値を生み出す。上に書いた研究紹介でオタクネタというのも広い意味ではそれに入るだろう。そういう意味では数理モデル以外でもいいはずだ。

俺はこの本のコラムにあったジンクピリチオン効果の話を読んで答えに辿り着いた。ジンクピリチオン効果とは、一部の言葉が持つ「なんだかよくわからないけど凄そうだ」と思わせる 効果のことだ。詳しくはこれを見ろ。本にはこれがそのまま載っている。

第一回:研究論文や申請書におけるジンクピリチオン効果について第一回:研究論文や申請書におけるジンクピリチオン効果について

これを読んで俺は考えた。数理モデルは確かにすごい。本質を示している。だがそれ以上に凄さを感じさせる。名前だけでなく、式まで用意されているのだから。これはジンクピリチオン効果なんてものではない。 つまり…

数理モデルには凄みがある。


まとめ

ジョジョで『波紋』や『螺旋』が使われるのは凄みがあるから。


こんな人におすすめ

  • 数式が好きな人
  • 新発見をしたい人
  • 納得したい人

金さえ払えば4回言わなくても