本しゃぶり

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給食のカレーにピーナッツを入れるという愚行

印象に残っている給食のメニューといえばカレーである。
だがそれはカレーが好きだったからではない。

カレーにピーナッツが入っていたからだ。

給食で印象深いメニュー

Oisix特別お題キャンペーン「好きだった給食メニュー」

Oisix(オイシックス)×はてなブログ 特別お題キャンペーン
by Oisix(オイシックス)

このキャンペーンページを見て、何か印象深いメニューはなかったかと記憶を探ってみた。やはり俺にとってはカレーしかない。しかし残念なことに、これはキャンペーンの趣旨に反している。なぜならカレーは悪い意味で印象的なメニューであるからだ。

それは俺がピーナッツアレルギーだからである。

ピーナッツアレルギー

俺は子供の頃から今に至るまで、ピーナッツアレルギーである。ピーナッツは症例数や重篤になる度合いから、食品表示法で表示が義務化されている「特定原材料」に指定されているほど厄介なアレルゲンだ。人によっては落花生の殻に触れただけでアレルギー症状が出る場合もあるという。また、2012年にアメリカでは、ピーナッツバターサンドを食べた相手とキスをしたことで亡くなったという事故もあった*1。特定原材料に指定されるのも納得である。

Dan4th Nicholas from Cambridge, MA, USA, CC BY 2.0, via Wikimedia Commons, Link

幸いにして俺のアレルギー症状はここまで酷くはない。柿ピーからピーナッツだけを避けて柿の種を食べる程度なら大丈夫。またうっかりピーナッツの含んだドレッシングをかけたサラダをがっつり食べた時も、軽い絞扼感 (喉の締めつけ感) が生じるだけで済んでいる。

とはいえ摂取量や体調*2によっては重篤な症状となる危険性があるため、ピーナッツは避けるようにしている*3。しかしこれがなかなか難しい。

ピーナッツはそのままの形で食されることもあるが、隠し味に使われることもよくある*4。そしてピーナッツの植物性食物アレルゲンタンパク質ファミリーである2S アルブミンクーピンは、熱にも消化酵素にも耐性を有している。そのため、ピーナッツが含まれているとは知らずに摂取してしまい、アレルギー症状が出てしまうというのは普通にありえるのだ。上記で書いたドレッシングの件もこのパターンで、バンバンジードレッシングに使われていた*5

ピーナッツが隠し味として使われる料理はいろいろあるが、機会の観点から一番厄介なのがカレーだ。

カレーにピーナッツバター

カレーには「コクを出すため」という理由でピーナッツバターが使われることがある*6。例えばカレーチェーンだとCoCo壱番屋が有名だ。ポークソースと甘口ポークソース、それにビーフソースにピーナッツが含まれている。含まれていないのはココイチベジソースとハッシュドビーフソースだ。

ココイチのアレルギー情報 ※2022/07/03時点

また、カレールウやレトルトだと、かつてはハウスがピーナッツを使っていたことで有名である*7。そのため俺はカレーを買う時、まずハウスを除外することを習慣としていた。ただし、ハウスは2014年の製品リニューアルで、アレルゲン対応の一環としてカレーからピーナッツを除外した*8。アレルギー検索をしたところ*9、今では全てのカレーでピーナッツを使っていないようだ*10。それは「CoCo壱番屋監修 もってこカレー」も含めてである。ハウスを見習って本家も無くせ。

そして俺が通っていた小中学校の給食のカレーでもピーナッツが使われていたわけだ。マジでクソ。カレーは給食の中でもトップクラスに人気のあるメニューである*11。そのためか月に1回はカレーがあった。つまり少なくとも毎月1回は俺が食えないメニューが出てくるわけである*12

しかもカレーは、それがメインメニューという点も厄介だ。他にピーナッツを使ったメニューで覚えているものでは「ピーナッツ和え」があるが*13、あれは副菜なので食べられなくても特に問題はない。しかしカレーは食べないとなると、おかず無しで白米に挑むことになる。つまり、ピーナッツ和えはレベル1の対応で済むが、カレーはレベル1だと対応困難というわけだ。

文部科学省『学校給食における食物アレルギー対応指針』, PDF

ではどうしていたかというと、レベル2の対応である一部弁当対応を行っていた。要するに家からカレーソースだけ持参していたのである。

ここで特別お題キャンペーンの優秀賞を狙うなら、母親への感謝を込める感じで手作りカレーの思い出をエモく書くべきなのだろう。しかし本しゃぶりはそういうブログではないので、この後もアレルギーの話しかしない*14

給食のカレーの今

俺は当時、給食のカレーにピーナッツバターが入っていることは間違っていると思っていた。ココイチのカレーにピーナッツが入っているのは腹立たしいが、まだ許せる。別にココイチへ行かなければいいだけだからだ。しかし給食は選択肢が無い。それなのに特定原材料に指定されているピーナッツを使うとは何事か*15、と。

しかもカレーにピーナッツは必須ではない。当時、ハウスのカレーにこそピーナッツが含まれていたが、ピーナッツの含まれていないカレーもたくさんあった。だいたい「コクが出る」なんて言うが、ブラインドテストをしたら多くの人は分からないのではないか*16。それに以前インドへ行った時は毎日3食カレーを食べていたが、ピーナッツが含まれていたことは一度も無かった*17

インドのカレーとチャーイ

では現在もこの愚かなメニューは提供されているのだかろうか。

俺が通っていた小中学校に給食を提供している給食センターのサイトで、現在の献立表を確認してみた。献立表には主な材料が食品群に分類されて書かれているが、アレルギーの項目は無い。そのためカレーにピーナッツが含まれているか分からなかった。ただし、俺が保護者であったならば、原材料が全て明記された詳細な献立表を入手して確認できたことだろう*18

そこで次に文部科学省の『学校給食における食物アレルギー対応指針』を確認してみた。

18ページの「安全性の確保を目的とした学校給食提供の考え方」には以下のように書かれている。

使用する頻度を検討する必要がある食物
(ア) 特に重篤度の高い原因食物:そば、落花生(ピーナッツ)
学校給食での提供を極力減らします。提供する際は、使用するねらいを明確にし、使用していることが明確な料理や料理名とします。
文部科学省『学校給食における食物アレルギー対応指針』, PDF

カレーにピーナッツバター、完全にアウト。入れる必要性は無いし、使用していることが明確な料理や料理名ではない。

名指しで極力減らせとなっているおかげで、ソバとピーナッツを給食から完全に排除した自治体も多いようだ。適当に検索して見つけたものだと以下がある。

岸和田市教育委員会『学校給食における食物アレルギー対応ガイドライン』PDF

千代田区教育委員会『学校給食における食物アレルギー対応マニュアル』PDF

(赤線は筆者追加)
大阪府教育委員会『学校における食物アレルギー対応ガイドライン』PDF (赤線は筆者追加)

どうやら学校給食の状況は、俺の頃よりだいぶマシになっているようだ*19。これならピーナッツアレルギーの子供でも、カレーが良い意味で印象深いメニューとなるかもしれない。

終わりに

ピーナッツアレルギーの俺にとって、給食で印象深いのは悪い意味でカレーであった。あれは間違っていると思っていたが、今はあるべき姿となっているようで良かった。

ところで、今回のキャンペーンはOisixとのコラボである。そこでOisixのアレルギー対応を確認してみた。各商品ページには原材料が全て明記してある上、別枠で特定原材料が記載してある。

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また、Oisixはその時期のセレクト品を提案してくるが、不要な品物は個別にキャンセルでき、その分の費用はかからない。これならアレルギーで食べられないものは送られてこないから安心だ。これなら俺も文句はない。

参考書籍

この記事を書く上で参考にした本。

『臨床栄養 第140巻 第4号』

学校給食の食物アレルギー事情を調べる上で一番参考になった*。書かれている内容は多くないが、要点がまとまっているし、文献もちゃんと載っている。しかも2022年4月号なので、まさに最新の情報だ。

正直なところ、専門雑誌なので買うのを躊躇したのだが、これは買って正解だった。学校給食以外にも、基礎知識から対応方法までいろいろと載っているので勉強になる。

『臨床栄養 第140巻 第4号』のアレルギー特集目次

『大人の食物アレルギー』

こちらはタイトルの通り大人の話。そのため学校給食に関しての話はない。だが食物アレルギーについてまるまる一冊を費やしており、日常に役立つ話は多い。

食物アレルギーというと、子供の頃に発症したのが続くものというイメージを持っている人もいるが、実際は大人になってから発症する例もある。例えばスギ・ヒノキ花粉症になった人は、タンパク質の構造が似ているバラ科果物 (リンゴ、サクランボ、モモ、ナシ、イチゴ、プラム) や柑橘系果物、それに梅干しのアレルギーになる場合がある。また、ラテックスの手袋や、化粧品からなる人もいる。誰でも起こりうる話なので、そういう意味ではアレルギーの知識は全ての人が持っていた方が良いだろう。

インドへ行った時の記事

*1:「アレルギー」の盲点?キスで命を落とした20歳の女性

*2:アレルギー症状は同じ人でも、身体の状態によって発症度合いが変わる場合もある。例えば食物依存性運動誘発アナフィラキシーと言って、特定の食物を接種後2~4時間以内に運動をすることで症状が誘発される人もいる。成人小麦アレルギーでありがちな事例。

*3:命に別状はなくても、症状が出るのは不快であるし。

*4:「ピーナッツバター」をいろいろな料理に追加したら、定番メシが即レベルアップした【ちょい足し調味料】 - メシ通 | ホットペッパーグルメ

*5:俺は今までピーナッツの使われていないバンバンジーしか食べたことが無かったので油断していた。例えばCookDoや丸美屋のバンバンジーの素にはピーナッツは含まれていない。ドレッシングでもリケンのにも含まれていない。しかしキューピーのには含まれていたのだ。もちろんこれは記事執筆時点の情報である。

*6:【みんなが作ってる】 ピーナッツバター カレー コクのレシピ 【クックパッド】 簡単おいしいみんなのレシピが370万品

*7:我が家で。

*8:ハウス「バーモントカレー」「ジャワカレー」「印度カレー」 「濃縮ブレンド製法」を採用し、2月17日から全国で発売 | ニュースリリース | 会社情報 | ハウス食品

*9:アレルギー情報検索結果 | 商品カタログトップ | ハウス食品

*10:2022/07/03時点の情報。購入の際は自分で成分表示を確認するように。

*11:これでは2位。【人気投票 1~59位】給食メニューランキング!最も愛される給食の献立は? | みんなのランキング

*12:海上自衛隊のように週イチではなくて本当に良かった。

*13:ピーナッツ和えは名前にピーナッツとあるので分かりやすいが、定食とかで説明無く現れると困る。見た目が「ごま和え」と似ているためだ。ちなみにごまは「特定原材料に準ずるもの」であり、ごまアレルギーもそれなりにポピュラーなアレルギーである。

*14:それにブクマカは、母親に負担がかかる話を美談とするのが嫌いだろ。

*15:ピーナッツを含む特定原材料の表示が義務化されたのは平成13年厚生労働省令第23号によるものなので、俺が小学校に入学した当初は仕方ないかもしれない。しかし公布された後も俺は給食を食べていたし、カレーにピーナッツは含まれていた。・アレルギー物質を含む食品に関する表示について(◆平成13年03月21日食監発第46号食企発第2号)

*16:俺は分かる自信あるが。

*17:これはインドのカレーにピーナッツが含まれていないことを保証しているわけではない。単に俺が食べた中に含まれていなかったことを述べているだけである。

*18:「学校給食における食物アレルギー対応指針」にもそうするように書かれているし、給食センターのアレルギー対応マニュアルにも献立明細表について言及してあった。

*19:ここまで来るまでに何度もガイドラインが改定され、その間に学校給食における食物アレルギー死亡事故もあったわけだが。