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ウォーレン・バフェットに学ぶ、自己啓発書の使い方

経験は本屋で買うことができる。
しかし、それを自分のものにできるかは、読んだ後の行動しだいだ。

その秘訣をウォーレン・バフェットから学ぶ。

Warren Buffett in 2010.jpg
By USA White House - https://www.whitehouse.gov/photos-and-video/video/2011/02/16/2010-presidential-medal-freedom-recipient-warren-buffett, Public Domain, Link

バフェットが出会った本

ウォーレン・バフェットは成功者である。株式投資によって財産を増やし続け、長者番付フォーブズ400では1986年の5位以来、毎年ベスト10に入り続けている*1。現在の総資産額は840億ドル(約8兆9000億円)で3位だ*2

今でこそ「オマハの賢人」と称される彼だが、最初から完璧だったわけではない。バフェットは子供の頃から多くの本を読んでいた。様々な本から先人の知恵を吸収していった結果、今のバフェットがある。そして、中でも特別な一冊となったのが、デール・カーネギーの『人を動かす』であった。

ご存知、自己啓発書の元祖とも称され、80年以上経った現在でも売れ続ける超ロングセラーである。

人付き合いの苦手だったバフェットにとって、この本はまさしくバイブルとなった。そして書かれたルールを自分のものにしたことで、彼のセールスマンとしての才能は開花したのである。

いかにしてバフェットは『人を動かす』の中身を自分のものにしたのか、その一部始終を紹介したい。

疑惑と検証

この本を読んだバフェットがまず行ったのは、本の内容が正しいかどうか検証することだった。

まだ10歳にもなっていないバフェットがこの本を出会った時、彼は世界の真理を見つけた気がした。社交下手なバフェットにとって、ただその通りに動けばいいというシステムは、彼が必要としていたものだったからだ。しかしそれは内容が正しければ、の話である。バフェットは根拠となる数字を求める少年であった。

バフェットは子供の頃に賛美歌の作曲者の寿命を調べたことがある。信心深い人は信仰によって何か得するべきだと思い、平均より寿命が長いはずだと考えたからだった。しかし結果は平均と変わらなかった。数字から神の恵みを感じることができなかったので、バフェットは信仰に疑いを持つようになる。

Domenico Tintoretto [Public domain], via Wikimedia Commons

そんなバフェットが『人を動かす』を検証しようと考えたのは、当然の流れである。バフェットはA/Bテストを行った。デール・カーネギーの原則に従った場合と反した場合で、人々の反応がどのように変わるかを観察し、記録をつけたのだ。

結果は明白だった。ルールが有効であることを数字は示していたのである。

そこでバフェットはルールに従うことにした。

持続する意志

「ルールを読むだけでは何にもならない。ルール通りに生きなければならない」
バフェットはデール・カーネギーのこの言葉に従った。

多くの人にとって自己啓発書が役に立たないのは、その本が間違っているからではない。本に書いてある通りに行動しないからである。やらなければ、はじまらない。

その点、バフェットはその他大勢と違った。彼はやると言ったらやる男であり、一度決めたルールを貫き通す性分である。それは初めて商売をした時からそうだった。

6歳の頃、バフェットはチューインガムを売り歩いていた。ある時バージニア・マクーブリーという女性が、ガムをバラ売りしてくれと言ってきた。バフェットは断った。バラ売りはしない、5枚入りのパック売りのみだ、と。彼女に1枚だけ売ってしまうと、残り4枚もバラ売りしなくてはいけなくなる。そんなリスクは冒すべきではない。バフェット少年は相手が大人であろうとも、自分のルールを貫き通した

Neysa McMein [Public domain], via Wikimedia Commons

この持続する意志こそがバフェットの強みである。デール・カーネギーのルールにバフェットは従おうと努力した。簡単なことではない。時にはルールから逸脱してしまうこともある。そうなると人間関係が上手くいかなくなることを体感した。だからまた基本に立ち返ってルールに従う。

努力の結果、バフェットは人を動かすルールを自分のものとした。そしてバフェットは獲得した能力をフル活用する。

犠牲になったのは、高校の同級生だった。

バフェットのハーヴェスト

Wikipediaのウォーレン・バフェットの記事には、幼い頃からビジネスをしていたとあり、次のように書かれている*3

例えば祖父からコーラを6本25セントで購入し、それを1本5セントで売ったり、ワシントン・ポストの配達のアルバイト、ゴルフ場のボール拾い、競馬の予想新聞の販売などを行っていた。
ウォーレン・バフェット - Wikipedia

これからするのは、この中の「ゴルフ場のボール拾い」の話である。

高校生の頃、バフェットは学校でちょっとした有名人だった。友人のドン・ダンリーと一緒にピンボールを理髪店に設置するビジネスをしており、それでボロ儲けしていたからだ。うまい話をしていると人が寄ってくる。真面目なボブ・カーリンはその一人だった。

バフェットは今更ピンボールビジネスにボブを参加させるつもりは無い。代わりに新ビジネスで働いて貰おうと考えた。ゴルフのロストボール拾いである。ゴルフコースの池からロストボールを拾い、それを中古ボールとして販売するのだ。池の中に入るなんてバフェットもダンリーもやりたくない。そこでボブの出番である。 ボブが潜って拾い、利益は3人で山分け。そういう筋書きだ。

TournamentPlayersClub Sawgrass17thHole.jpg
Public Domain, Link

ある日の朝4時、3人はゴルフコースの池の前にいた。

「それで、どうやれば潜ったままでいられるんだ?」
ボブが尋ねた。
「まずは服を脱ぐんだ」
バフェットが答えた。
「そしてワシントン・ポストの配達バッグをかける」
中にはバーベルのウエイトが入っていた。
「これで潜ったままでいられる」

他にも、ガスマスクとホースをつなぎ合わせた即席のシュノーケルも用意していた。
「バスタブで10センチくらい顔を沈めて試した」
バフェットは検証を怠らない。

不安しかない。
ホブが怖気づいたことを口にすると、バフェットは言った。
「ぼくらが失敗したことがあるか?」
「まあ任せておけって…… やめたければやめてもいいよ」
「でも、今後、いっさい仲間には入れないぞ」

ここまでバフェットが強気になれたのは理由がある。卒業が近かったからだ。ボブとの仲が険悪になったとしても、どうせあと2ヶ月もしたら卒業である。バフェットは大人になっても人から嫌われることを恐れるタイプであったが、この時はかまわないと思った。友情の空売りである。

こうしてボブは冷たい池の中へ沈んでいった。
すぐにボブは自分を引き上げるよう合図を出したので、バフェットとダンリーはボブを引き上げた。

「何も見えないよ」
ボブがそう報告すると、バフェットは答えた。
「見えなくてもいい。手探りするんだ」
ボブは再び池に沈んでいった。

バフェットの背後にはデール・カーネギーがいる。ただの高校生が立ち向かえるはずもなかった。

終わりに

かつては人付き合いが下手なバフェットであったが、今では人を動かせるようになった。彼が本を読んだ後にやったことをまとめよう。

  • 内容の検証
  • 技術の習得
  • 能力の活用

この三段階を踏むことにより、バフェットはデール・カーネギーの経験を自分のものにできたわけである。やり方がわかったのなら後は実行するだけだ。優れたルールを見つけたのなら、ルール通りに生きよう。スティーブン・R・コヴィー*4も言っている。「習慣が人生を作る」と。

バフェットは1日にチェリーコークを何本も飲む。

参考資料

この記事はバフェット唯一の公認伝記である『スノーボール』を元に書いた。

万引きしたゴルフボールをクローゼットに何百個も溜め込んだ話や、デート相手をクズかごに突っ込んで立ち去った話なども収録されている。バフェットの畜生エピソードボブがその後どうなったかが気になる人は読むべきだ。そうしたらスノーボールの核は真っ白ではないことが分かるだろう。

Kindle版には便利な上中下合本版もある。

偉人から学ぶタイプの記事

*1:Wikipediaには2008年現在と書いてあるが、10年経った2018年現在でもそれは変わらない。

*2:ジェフ・ベゾスが初の首位に フォーブス世界長者番付2018 | Forbes JAPAN(フォーブス ジャパン)

*3:2018/07/21 22:54閲覧。

*4:『7つの習慣』で有名な経営コンサルタント。