いざという時に備えてのパラコード製品は、その使用者によって別物になる。
編み方を知らぬ者にとっては、お守り的なアクセサリー。
編み方を知る者にとっては、実用的なサバイバルツール。
俺は後者であることを示すために自作した。
熱くなれるブレスレット
うっかりこんなのを買ってしまった。
日頃はブレスレットとして身につけ、いざという時は火を点けたり、笛を吹いたり、縛り上げたりできるサバイバルツールである。今までいざという時に、と言ってそのいざという時が来たことは無いのだが、災害は忘れた頃にやって来る。特にサイドリリースバックルがファイアスターターになっているというのに惹かれてしまった。
バックルを分離すると、片方にはフリントとホイッスルが付いている。
フリントを削り、そこへ火花を飛ばせば着火できるという便利なものである。マッチと違って濡れても使えるのが強い。ホイッスルは吹いたら音が鳴った。
反対側のバックルにはストライカーが付いている。
実際にこれで擦ってみたら火花が出た。この時点で満足した感はある。
パラコードはほどけない
この手のパラコード製品のレビューを見ていると、こんな感想をよく見かける。
元に戻せる気がしないので、いざという時までほどきません。
本当にいざという時に解くことは出来るのだろうか。俺はパラコードのサバイバルツールに関しては、自作でないと意味が無いと思っている。もちろんここで言う「自作」とは、「自作PC」や「手作りチョコ」程度の意味での「自作」である。自ら編み、作り上げたのであれば元に戻すことはできるので、気兼ねなく解くことができる。ならばパラコードである意味もあるというものだ。
しかし自作ではなく、編み直すこともできないとなると、気軽に解くことはできない。そして編まれた状態が長く続くほどに、解くことは物理的ではなく、精神的に困難になっていく。もはや概念武装の体をなしたそれは、ゴルディアスの腕輪と呼ぶに相応しい。解くためには文字通り、一刀両断に解くが如くの覚悟が必要なのだ。
そうならないためにも、俺はこれをパーツの集合体とみなし、自分にあった形へと作り変えることにしたのだ。いざという時に信じられるのは自分の技術である。
DIYでEDCなキーチェーン
作り変えると決めたところで、形態を変更することにした。この製品はブレスレットとして身に付けるとなっているが、これは俺にとって現実的ではない。俺には腕が2本しかなく、左腕にはアクローマウォッチが、右腕にはPULSENSEとUP3が装備されている。なので日頃から身につけ、パラコードを使うということでこれを作ることにした。
タイトルに書いたとおり、火を点けられるキーチェーンである。Bomberのこれはパラコード+ファイアスターター+キーチェーンという代物であるのに対し、俺が作るのはさらにホイッスルがつく。勝ったな。もちろん自作であるがゆえに長さについても俺の思うがままである。
用意はamazonで
キーチェーンを作るためのパーツもまたamazonで揃える。
まず肝心のパラコードはブレスレットのをそのまま流用してもいいが、今回は別に用意した。
使うのはロスコ製。パラコードのウリである耐荷重が250kgの比較的しっかりしたものだ。これについては今回新たに購入したわけではなく、以前から所持していたものを使う。長さが30mもあるのでなかなか使い切らない。
キーチェーンとしてのリングとフックはこれを使う。
フック部分が完全にBomberのそれである。Molle対応なので秋山殿リュックにも付けられるのがいい。
部品を別々に買ってもBomberのより安く済む。原価を重視する人には自作を薦める。
理解・分解・再構築
部品が揃ったところで組み立てる。
まずはブレスレットをほどいていくのだが、一つ一つ丁寧にほどかなくてはいけない。こんなチマチマした作業を緊急時にやれと言うのだろうか。この手の製品はクイックリリースやキャタピラ編みなど、端部を引っ張るだけで解ける編み方にしてもらいたい。
完全分解。これについていたパラコードは芯をいくらか抜いてあるのか、潰れた形状で柔らかいものが使われていた。ブレスレットだけに使うならいいが、ロープとしての耐久性には疑問を感じる。耐荷重も書いていなかったので、持っている人はちゃんとしたパラコードに交換した方がいいだろう。やはりパラコードのサバイバルツールは自作に限る。
キーホルダーの方はもともとベルクロが固定されていないため、簡単に外すことができる。今回購入したのは2個セットであるが今回使うのは1個だけ。
クイックリリースで編み込んで完成。短い方は約1mのパラコードから5cmの長さに。長い方は約3mから15cmの長さとなった。クイックリリースならこの比率で編めばちょうどいい。ただ、長さがちょうどであると最後の方に余裕が無く編みにくくなるため、慣れていない人は長めに用意した方がいいだろう。
実際に火花を散らして気がついたが、ブレスレットと違いキーチェーンだとフリント側とストライカー側が完全に分割されるため、火起こしが楽になる。また、パラコード部分が持ち手となるのも便利でいい。
接続すると全長は約30cm。ベルトからまっすぐにポケットへ入れるには長めで、だらっと垂らすには短めであるこの長さは、腰につけたままで鍵をドアに差し込める長さだ。サイドリリースバックルは、外す時は片手で楽なのだが、接続する時は両手を必要とする。なので頻繁に外さなくてもいい長さに仕上げたのだ。もしこれが不便とわかればまた編み直すだけである。
両端を繋げればブレスレットにも。とはいえもともと長めであった製品をさらに長くしたのだから、腕に付けるのは現実的ではない。
鍵やら何やらをセットする。マルチツールはあると便利だが、警官が怖くなるという諸刃の剣である。
ズポンのベルトループにフックをかけて身に付ける。これでいつでもどこでも火を起こせる。
終わりに
実際にファイアスターターやホイッスルを使う時が来るかはわからない。さらに言えば解いてしまってはキーチェーンとしての機能が失われるために、3mのロープとして使うこともまずは無いだろう。しかし、出来ないからやらないのと、出来る上でやらないのには大きな差がある。そして俺は出来る側なのだ。
パラコードを編むのは見た目よりも簡単で、ミスってもすぐにやり直しがきく。値段もたかが知れているのだから、興味のある人は気軽に挑戦してみるといい。仮に余らせたとしても、所詮はヒモである。使いみちはいくらでもあるのだから。