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ポイ活はITが苦手な人ほど挑戦する価値がある

ポイ活の真の価値はポイントがザクザク手に入ることではない。
世の中の流れについていけるようになることだ。

ポイ活を学習機会として捉え直せ。

ポイ活はお得か

最近、興味深い記事を読んだ。ポイ活はやめた方がむしろお得であるという記事だ。

記事の著者はポイ活に挑戦したが、アプリの導入に挫折、さらに大手の囲い込み戦略に拒否感を持ったことでポイ活と距離を置くことにした。その結果、より「お得な生活」を送れるようになったという。

1つめの記事で挙げられていたのは、主に精神面のメリットである。店や商品をポイントで選ぶ必要がないという行動の自由を得られ、さらにポイ活の情報収集に時間とエネルギーを費やす必要がなくなった、と。

2つめの記事で挙げられていたのは、より金銭的なメリットだ。ポイントがもらえないことで商品が割高に感じられるため、購入することに躊躇するようになった。その結果、財布から出ていくお金が減ったという。また、ポイントのつかない個人商店を利用するようになったので、店主と顔なじみの関係となった。これによって新たな人間関係を手に入れただけでなく、「おまけ」という形で金銭的な得も手にしたそうだ。

脱・ポイ活で得られたもの

俺はこの主張に同意する。関係の構築については個人差があると思うが*1、他の3つは多くの人が当てはまるのではないか。特に「脱・情報収集」に関しては、ポイ活にのめり込んだことがある人ほど共感できるだろう。お得なキャンペーンほど短命に終わるため、効率的にポイ活をしようと思ったら継続的な情報収集が欠かせない。これはなかなか負担である。

しかし俺は著者の主張に同意した上で、ITが苦手な人ほどポイ活を勧める。それは「学習の機会」としてポイ活が優れているからだ。

経験による格差

ここで今年のGWに帰省した時の話をしたい*2

母親から「Evernoteの使い方について、いくつか教えて欲しい」と言われた。母親はしばらく前にMacBook ProやApple Watchを俺から安く買い取り*3、俺と同じアプリを使うようになっていた。その流れで、どうしたらやりたいことができるのかと、訊いてきたのだ*4

質問のいくつかは俺もやり方を知らないことだった。しかし、その場で何となく触っていたら、ググることもなくやり方が分かった。このタイプの操作は、この辺りを押せばたぶんできるだろう、みたいな感じで。

帰省してやっていたこと

そんなことを繰り返していて、ふと思う。お互い知らない機能であるにも関わらず、俺はちょっと触れば分かるのに、母親にはそれが難しい。この差はどこから生じるのか、と

端的に言えば「経験の差」となるが、もう少し詳しく話そう。母親と会話していて思ったのは、「お約束的な知識」が少ないということである。例えばEvernoteアプリで、既存ノートの文章中にファイルを挿入したいとしよう。慣れている人ならば、とりあえずノートを編集モードにする。そしてカーソルを合わせた後に、左下の「+ボタン」を押せばできそうだなと思う*5

ノートにファイルを挿入したいと言われた時

実際「+ボタン」で正解なわけだが、仮に間違っていたとしても問題はないだろうと考えていた。しかし母親はこの手の「お約束」を知らないし、間違っていた時に取り返しがつかなかったら困る。だから試しに押してみることもしていなかった。

こうなるもの仕方ない。現在のEvernoteは多機能で複雑なアプリである。母親のように初めてノート系アプリに触る人は「何ができて、どうしたらできるのか」が分からなくても当然だ。一方で俺はEvernoteを10年以上も使っている*6、OneNoteのような他のノート系アプリも使っているので、おおよその見当がつく。初心者である母親は0から考えて理解する必要があるのに、俺は「差分」だけ。これが未知の機能への対応の差となる。

そろそろ話をポイ活に戻そう。例の記事の著者はアプリの導入に挫折した。そこで現在のPayPayの画面を見てみよう。

PayPayの画面

俺だって押したことがないアイコンがたくさんある。これはITに疎い人が挫折しても仕方ない。しかし、だからといってITから逃げると、しだいに追い込まれていくのが今の流れである。

赤の女王はITスキルでも

初心者を圧倒しにかかるPayPayのアイコンだらけな画面を見ると、「特に困ってはいないし、俺は手を出さなくていいな」と思う人もいるだろう。しかし今は困らなくても、将来は困ることになるかもしれない。環境は刻々とIT化・無人化の方向に変化しているからだ。

例えば最近、マクドナルドのモバイルオーダーが話題となった。

マクドナルドはアプリを使わせるため、金銭的にだけでなく、時間的にもお得な仕組みを作った。

  • 商品は注文された順番に作られる (来店した順番ではない)
  • レジに並んでいる人は、自分の番が来るまで注文できない
  • モバイルオーダーは待たずに注文できる
  • レジに並ぶよりもモバイルオーダーした方が先に食べられる

先に注文された商品が先に作られるというルールは、モバイルオーダー登場以前と変わっていない。しかしモバイルオーダーが登場したことで、レジで注文する人は不利益を被るようになった。これはアプリを使いこなせる人と比べて損ということだけではない。自分はそのままなのに以前と比較して損な状況になったのである。

環境が変わっても自分が変わらないと不利益を被る

この流れはマクドナルドに留まらない。例えばJR東日本は、2025年までに「みどりの窓口」を約7割削減すると宣言している。

その代わりとして遠隔操作サポートがついている「話せる指定席券売機」の導入も進めているが、これもどこまで使えるか分からない。人件費の削減にはなっても、設備費用の削減にはならないからだ。本命は当然チケットレス化だ。実際JR東海は、リニア中央新幹線ではできる限りチケットレスにしたいと述べている*7

アプリやサービスを使いこなせないと、日常生活が今より不便になっていく。これは遠い将来の話ではなく、現在進行系で起きている話だ。

ではどうしたらアプリやサービスを使えるようになるか。はてなユーザーは「パソコンの先生」が多い*8ので、必要に迫られたタイミングで習得することができるだろう。しかし例の記事の著者のように、世の中にはアプリ導入で挫折する人もいる。そんな人は、いつ・どのアプリの使い方を習得するべきなのか。そこでポイ活である。

ポイ活という学習機会

上で書いたとおり、ポイ活は投入した労力に対して見合った利益を得られるかというと、微妙である。繰り返しになるが、お得なキャンペーンほど短命に終わるため、継続的な情報収集が必要となるからだ。しかし裏を返せば、ポイ活を行う者は常に最先端のサービスを知ることになる。

アプリやサービスを覚えるのが一番簡単な時期はいつだろうか。それは登場初期である。初期はまだ機能が少なくシンプルに作られていることが多いからだ。例えば上で「複雑だ」と言ったPayPayでさえ、登場初期はまだシンプルだった。

PayPay新旧比較 / 旧画像はソフトバンクニュースより, Link

見えているアイコンこそ今とほぼ同数だが、「すべて」が必要ない程度の機能に収まっていた。それに「お得な使い方」は今よりはるかにシンプルだった。

2018年12月に行われた「100億円あげちゃうキャンペーン」を覚えているだろうか。あれはただPayPayで支払うだけで必ず20%還元され*9、さらに2.5%の確率*10で全額ポイント還元*11であった。しかも対象は全てのユーザー、全てのPayPay加盟店である。

「100億円あげちゃうキャンペーン」を12月4日より開始 - ニュース - ヤフー株式会社

それが今では店舗によって、対象金額、付与上限、開催期間が異なるクーポンを活用する必要がある*12。以前からPayPayを使っていた人ならば「差分」だけ理解すればいいが、PayPayを初めて使う人にはハードルが高いと言わざるをえないだろう。

ゆえになるべく早い段階でアプリ・サービスを利用することは、2つの利点がある。1つはお得なキャンペーンに参加できること。もう1つは段階的に触れることで学習コストが低いことだ。一気に覚えようとするから大変なのである。少しずつ覚えればそう難しいものではない。

そして、キャンペーンは基本的に新たなアプリ・サービスの宣伝のために行われる。したがってポイ活でお得なキャンペーンを追いかけていれば、自然と新しいものを学ぶことになる。だからこそ、ITに疎い人ほどポイ活に挑戦すべきなのだ。

ポイ活で段階的に習得する

ではいつからポイ活を始めるべきなのか。もちろんITに疎い人は今すぐ始めるのが良い*13

開始が最も大変だが、今が一番簡単な時期

アプリは登場初期が最も簡単ではあるが、現在ポイ活のメインになっているアプリは既に複雑化している。それで例の記事の著者も悪戦苦闘して挫折してしまった。しかしだからといって先延ばしにするのは悪手だ。「今が一番若い」と同じで「今が一番簡単」なのである。

例外はあるが、基本的な流れとしてはアプリは時間の経過と共に機能は増え、複雑化していく。さらに年配の人ならば、頭の働きの観点からも、時間の経過で不利になる。だから大変でも頑張って最初の一歩は踏み出して欲しい。

早く動くのが正解

手を出した最初こそ大変だが、一度使い始めれば後は比較的楽だ。何かを習得するためには、繰り返し行わなくてはいけない。他の物事なら繰り返すことに苦労するが、ポイ活のアプリは習慣化するためのカギが揃っている。

習慣のループは「きっかけ」「ルーチン (行動)」「報酬」の三要素によって構成されていると言われている。「きっかけ」があると「報酬」への欲求が高まり「ルーチン」が行われる。こうやって習慣は強化されるのだ。

アプリを使ったポイ活の場合、「きっかけ」としてまず買い物そのものがあり、更にアプリからの通知がある。そしてルーチンとしてアプリを使った支払いを行うと、「報酬」としてポイントが手に入る。これは金銭的な意味でも報酬だが、派手なエフェクトも精神的な報酬として機能する。だからまた使いたくなり、習慣化する*14

ポイ活の習慣ループ

こうやってポイ活ループを回していると、そのうちキャンペーンが終わり、また次の手法を学ぶ必要が生じる。だが「またあんな苦労をするのか」と不安になる必要はない。仮に新しいアプリを導入することになっても、最初のアプリの時よりは楽に習得できるからである。異なるアプリでも共通点は多く、覚える必要があるのは「差分」だけなのだから。

だから最初は苦労することになるけれども、思い切ってポイ活を始めてみてはどうか。金のためではない、スキル習得のために。

終わりに

ポイ活は短期的に見たらお得である。うまくやれば支払いの10%や20%を取り戻すことも可能だからだ。しかし中期的に見たらお得とは言えない。お得なキャンペーンは短命で、継続的な情報収集と学習が求められるからだ。そして長期的に見たらお得と言えるだろう。ポイ活は学習の機会として優秀だからである。

おそらくこのブログの読者の大半は、ポイ活よりもインデックス投資をした方がお得だろう*15。しかし、読者の親世代ならどうだろうか。とりあえずスマホは使っているが、アプリを使いこなすのは難しい人もそれなりにいそうだ。ITスキルを向上させる手段の一つとして、ポイ活を選択肢に入れてみてほしい。

参考書籍

習慣ループの説明は本書から。習慣形成のメカニズムと効果について書いた本。個人の習慣だけでなく、企業や社会といった集団内での習慣にも焦点を当てる。どうしたら悪い習慣を止め、新しい良い習慣を身につけることができるのかが分かる。

ポイ活はしたいけど、浪費はしたくない人向けの記事

上手くやればお金を1円も使わず6万円以上のポイントを獲得することができる。追記してあるが、無事に100万円修行を達成して解脱に成功した。

*1:店員に顔を覚えられたら行けないタイプの人だと、関係ができるのはデメリット。

*2:親はこのブログを読んでいるから書いておこう。手間賃としてネタに使わせてもらうね。

*3:俺が「新しいの買った」とツイートしたら、すぐに「前のやつを売ってくれ」と連絡が来た。

*4:俺と同じアプリ・サービスを使っているとこういう時に便利だ

*5:俺はノートの編集を普段PCでやっているので、ファイルの挿入はドラッグ・アンド・ドロップでやっている。アプリでの挿入はこの時が初めてだった。

*6:調べたら使用開始は2011年6月10日だった。2013年くらいまではEvernoteはライフハックの基礎アプリみたいな立ち位置だったな。

*7:新幹線チケット革命、JR東海が仕掛ける「逓減運賃」との決別|ニュースイッチ by 日刊工業新聞社

*8:『はてなメディアガイド2022年4-6月版』によれば、はてなユーザーで最も多い職業はエンジニアで26%を占めている。また、興味関心の1位は「インターネット」で79%だ。コンテンツマーケティング支援・広告掲載について - 株式会社はてな

*9:月額5万円相当の上限あり。

*10:Yahoo!プレミアム会員は5%、ソフトバンクとワイモバイルのスマホユーザーは10%に上昇する。

*11:一度の決済で10万円相当の上限あり。

*12:他にも色々あるが、お得なやつほど制約も厳しい。PayPayキャンペーンまとめ【5月29日最新版】 40%や全額還元に注目 - ITmedia Mobile

*13:パソコンの先生はいつでも習得できるから好きな時に始めて。

*14:これは本来、「いかに消費させるか」を目的とした仕組みなので、我々消費者は「いかに抗うか」と考えるべき習慣ループである。だがITスキル習得の観点からすると、これほど使い勝手のよいものはない。

*15:Analyticsによれば一番多い年齢層は25-34歳なので。キャッシュレス決済アプリすら使えない人はほとんどないだろ。