本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

財布を買ったら募金するようになった話

日本人は寄付をしない国民だと言われる。
俺も寄付をしない側の人間だった。

神の肘打ちを食らうまでは。

幸福に金を出さない日本人

手っ取り早く金を使って幸福になる方法は「寄付」を行うことである。

ブリティッシュコロンビア大学の心理学准教授エリザベス・ダンらが行った実験では、与えられたお金を自分のために使った人より、他人のために使った人の方が幸福度が高まった。幸福度に影響を及ぼしたのは、使った金額によらず、あくまでも使用目的であったという。

また、世界136ヶ国を対象としたギャラップ世論調査によれば、先月チャリティーに寄付した人々は、人生により多くの満足を感じていることが分かった。さらにチャリティーに寄付することは、家庭の所得を2倍にするのと同じくらいに幸福度に貢献していたという。

以上の話を知っている人は多いと思う。このブログで2周間前に紹介したからだ。

ここで新たな知見を共有したい。それは「日本人は幸福に金を払いたくない」ということだ。根拠は明白である。先の研究結果を紹介した後に「ほしいものリスト」のリンクを貼ったのだが、何も送られてこない。まさしく俺がエビデンス。

この結果は「お前に人徳が無いからだ」と言う人もいるだろう。それに対して応える代わりに、記事を一つ紹介する。

gendai.ismedia.jp

イギリスのNPOであるCharities Aid Foundationが公表したWorld Giving Index 20181というレポートでは、寄付やボランティアの頻度を基に世界各国の「共助」レベルのランキングが示されている。調査対象となった世界144カ国の中で、日本の順位は128位である。先進国として最低ランクに位置する。


同レポートの調査では、過去1ヶ月の間に、(1)困っている見知らぬ他者の手助けをした者の割合、(2)慈善団体に寄付した者の割合、(3)ボランティア活動に時間を割いた者の割合、が各国ごとに調べられている。日本の割合は、(1)=23%(世界142位)、(2)=18%(99位)、(3)=23%(56位)である。

日本人で過去1ヶ月間に寄付したのは20%以下だ。やはり日本人は「寄付」が好きではない

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ジミー・ウェールズを見ると日本人は反射的にイラッとする / Bram Pitoyo [CC0], Link

俺も昔はそうだった。だが今は違う。俺は過去一ヶ月間に寄付を行っている。きっかけは「世界最小の銀行」を手に入れたことだった。

世界最小の銀行

スタンフォード大学のハッソ・プラットナー・デザイン研究所で開発された演習の一つに「相手から財布に対する不満を聞き出し、それを解決した財布をデザインする」がある*1。この演習が成り立つのは「ほとんどの人が自分の財布に何らかの不満を抱いている」からだ。俺もその一人だった。

今年の4月、俺は使っている財布への忍耐が限界に達していた。とある革財布を使っていたのだが、それはポケットに入れるにはあまりにも大きすぎた。それは大きく、分厚く、重く、そして小銭が出しづらかった。要するに使い勝手が悪い

そこでアウトドア向け財布のTRAIL BANKを購入した。

このTRAIL BANKは「世界最小の銀行」であり、24時間いつでも現金を引き出すことができる。公式サイトにそう書いてある。

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https://www.paagoworks.com/paagoproduct/trail-bank/

これを「銀行」と呼ぶことに同意するかはともかくとして、携帯性が良いのは確かである。俺が購入したのはMサイズで、必要なものを一通り収納できるにも関わらず、そのサイズはコンパクトだ。

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手に持ったところ

仕切りもそれなりにあるため、日常的に使うカードだけなら整理できる。

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開いた状態

小銭入れは裏側についており、取り出すために財布をバリバリする必要はない。中に入っている小銭が見えるのは地味に便利。

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小銭入れ

俺の行動を変えたのがこの小銭入れである。容量が小さいのだ。

日常的に使う分の小銭は入り切るものの、何も考えずにお釣りを受け取っていると、すぐいっぱいになる。特に1円玉、5円玉が邪魔でしかたない。価値は対して無いくせに、体積だけはしっかりある。こいつらをどうにかしたい。

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TAKA@P.P.R.S CC BY-SA 2.0, Link

…………そのために置いてあったのか。

こうして俺に寄付をするインセンティブが生まれた。

ナッジされる

シカゴ大学の経済学者リチャード・セイラーとハーバード大学の法学者キャス・サンスティーンは**「リバタリアン・パターナリズム (穏やかな介入主義)」という思想を提唱している。これは「人々の選択する権利を制限せずに、人々がより良い選択するように介入する」というものだ。

例えば運転免許証の臓器提供意思決定について「デフォルトを提供」にする。提供が嫌な人は「提供しない」にチェックをすればいいため、個人の選択する権利は尊重されている。一方で人はそのちょっとした手間が面倒なため、多くの人は「提供する」ようになる*2

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日本はデフォルトだと意思表示無し / [Public domain], Link

このようにちょっとした介入をすることで、人々の意思決定は改善できる。この「ちょっとした介入」のことを「ナッジ (ヒジで軽く突くこと)」と呼ぶ。

俺もまたナッジされたのだ。もちろんこれは特定の誰かが狙ってやったのではない。だが環境が変化したことで行動が引き起こされたのは確かだ。俺は神の見えざる肘打ちを食らったのである。

終わりに

神が俺を小突いたことで、日本における寄付金は以前よりも増えた*3。俺は家庭の所得を2倍にするのと同じくらいに幸福度が増し*4、パーゴワークスは自社の製品が無料で宣伝された。

俺がコンパクトな財布を購入したことで、世界はより良くなったのである。

日本ハンドバッグ協会が行った財布に関するアンケート調査によると、男女ともに長財布が人気らしい。男性の50%以上が、女性の80%以上が今後欲しい財布として長財布と回答している*5。一方でスマートミニ財布*6と回答したのは男性が15.1%で女性が21.7%だ。足して2で割ると18.4%である。

ここで日本人が過去1ヶ月間に寄付した割合を思い出して欲しい。なんと18%だ。

長財布ユーザーを肘打ち(ナッジ)してスマートミニ財布に転向させれば、日本の寄付率が高まり、幸福度も増すのではないだろうか。

ナッジについてもっと知りたければ

実践 行動経済学

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人の行動について書いた記事

*1:20歳のときに知っておきたかったこと スタンフォード大学集中講義』より

*2:心理学者のエリック・ジョンソンとダン・ゴールドスタインによるヨーロッパにおける臓器提供率の研究では、デフォルトが「提供しない」の国だと一桁から10%台だったのに対し、デフォルトが「提供する」の国だと90%以上になっていたという。

*3:月に100円にも満たないが増えたことには変わりない。

*4:要出典

*5:男女とも長財布が人気【ハンドバッグ協会調べ】 | 繊研新聞

*6:カードサイズを中心とするミニ財布