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【書評】インターネットでもクマムシは生き延びる / “クマムシ博士の「最強生物」学講座: 私が愛した生きものたち”

きっかけ

こいつらに勝てるのか気になったため。

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火星にいる師匠 / テラフォーマーズ 1 (ヤングジャンプコミックス)より

最強の生物は何か。誰でも一度は考えるこの疑問。まずは大きいのを思い浮かべるはずだ。象とか白熊とかライオンとか。絶滅しててもいいなら最大の肉食恐竜であるギガノトサウルスを思いつくかもしれない。中学生ぐらいになると昆虫が体の割にすごい強いことを知る。体重100kgのカマキリとかヤバイ。以前紹介した本に出てくるサバクトビバッタも強い。脚力がパない。

【書評】フォームチェンジの謎を解く / “孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生” - 本しゃぶり【書評】フォームチェンジの謎を解く / “孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生” - 本しゃぶり

孤独なバッタが群れるとき―サバクトビバッタの相変異と大発生 (フィールドの生物学)作者:前野ウルド浩太郎出版社/メーカー:東海大学出版会発売日:2012/11メ...

ちなみにこのサバクトビバッタもテラフォーマーズに登場している。

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でも集団のゴキブリには勝てない / テラフォーマーズ 1 (ヤングジャンプコミックス)より

だがネットで調べ始めるとある生物の名が上がってくる。それがクマムシだ。いつの間にかネットでその名を上げ始め、気がついたらイチロー並に存在がコピペレベルになっている。ついにはニコニコにまで生息している。
クマムシとは (クマムシとは) [単語記事] - ニコニコ大百科
とりあえずこいつは環境に対する耐性がメッチャクチャに高い。高温低温、圧力、乾燥、放射線など思いつく限りの劣悪な環境でも行きていけるらしい。そんなクマムシの本が出たので読んでみた。


内容とか

この本は1/3がクマムシと耐久性の高い生物について。残りは他の変な生物と生物研究者について書かれている。

最強はクマムシ

やはりクマムシは強かった。クマムシが最強の耐久性を獲得するのは乾眠状態になった時だ。これは生きながらミイラになったと思えばいい。この状態のクマムシはどんな環境でも耐えられると言って良いレベル。そのすごさはコピペにもなってる。

-270~150℃までの温度に耐え
真空状態にも耐え
6000気圧もの高圧状態にも耐え
無水分状態でも数百年生き延び
なんと放射線にまで耐性を持つという
恐ろしいまでに最強の生物クマムシ。
まさに最強。

もはや鉱物と生物の中間のような状態だ。だが乾眠状態になり環境耐性を獲得できる生物は他にもいる。例えばこいつ。

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姿は蚊に似ているが害はない / テラフォーマーズ 1 (ヤングジャンプコミックス)より

サイズが違うので単純に比べるのはアレだが、やっぱりクマムシのほうがすごい。ネムリユスリカは乾眠状態になって初めて放射線に耐性を持つ。しかしクマムシは通常の活動状態でも高い放射線耐性を持っているのだ。むしろ種類によっては活動状態のほうが放射線に関しては強かったりもする。また、ネムリユスリカは乾眠状態になれるのは幼虫時に限られ、しかも48時間以上かけてゆっくりと脱水していかなくてはならない。テラフォーマーズでは居眠りするがごとく乾眠状態になっていたが、あれをやるにはクマムシやセンチュウの能力を与えないとダメではないだろうか。

しかしクマムシが強いのは環境耐性であり戦闘能力は全然ないので、ゴキブリと戦おうと思ったら結局ネムリユスリカと同様に、自分を囮にしてゴキブリが死ぬ環境に引きずり込むしか無いだろう。むしろゴキブリにクマムシの能力を盗られる危険性のほうが高くてヤバイ。クマムシは登場させてはいけない生物なのだ。

研究者ちょっと表に出ろ

この本はもともとむしマガという有料メルマガを加筆・編集したものらしい。なんでわざわざ研究者である著者が有料メルマガなんかをやっているのか。それは研究費と科学啓蒙のためだという。

国からの研究費が不足しているという話はよく聞く。しかも十分な予算を獲得しても、それには助成期間が設けられているため長期間に渡っての研究のアテに出来るわけでもない。こうなっている原因の一つに一般人の科学離れがある。

そこで著者は自らコンテンツを提供することにより、自由に使える資金の獲得と、科学に興味を持ち応援してくれる人を増やそうと考えた。この辺のことは下記のインタビューでも話している。
まぐスペインタビュー 堀川大樹さん - まぐまぐ!

著者の活動はこれだけではない。ブログむしブロもやっているし、Twitterもやっている。そして何とキャラクタービジネスまで手がけている。

クマムシさんのお店クマムシさんのお店

クマムシさん【DF両日 I-227】 (kumamushisan)さんはTwitterを使っています

たしか竹内健 (kentakeuchi2003)もこれからの研究者はどんどん情報を自ら発信していかなくてはならない的なことを言っていた気がするが、ここまでやっている人はそうそういないだろう。まったくもって感心する。

クマムシはインターネットでも生き残る

しかしクマムシの環境耐性はすごいし著者の努力もすごい。しかしこうもたかが微生物の名が世に知られるようになったのか。これについて著者はこう断言している。

「可愛くて魅力的だから」

なるほど。すごい説得力だ。確かに拡大してみたクマムシは愛らしい。

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Hypsibius dujardini, scanning electron micrograph by Bob Goldstein and Vicky Madden

ずんぐりむっくりした胴体に短い手足といったテディベアに似た特徴を持っている。これに対して同じような耐性能力を持つセンチュウなんかはうっかりケツから出てきそうなディティールをしていて嫌悪感を持つ人も多いだろう。今のネットでは流行り廃りが激しく、様々なコンテンツが颯爽と現れては消えていく。そんな中クマムシは最強生物の名を冠して現れ、今でも忘れられずにいる。

それを踏まえて俺は上で紹介したコピペをこう改変したい。

-270~150℃までの温度に耐え
真空状態にも耐え
6000気圧もの高圧状態にも耐え
無水分状態でも数百年生き延び
なんと放射線にまで耐性を持つという
ネットでも忘れられずに生き続ける ←new
恐ろしいまでに最強の生物クマムシ。
まさに最強。


まとめ

やっぱりクマムシは最強だ。


こんな人におすすめ

  • クマムシが好きな人
  • 最強に憧れる人
  • カップ麺になりたい人

これで君も最強だ