本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

2019年に読んで面白かった本5選

f:id:honeshabri:20200329150755p:plain
去年おもしろかった本5選お願いします、ちょうどキンドルもセール中なので | マシュマロ

ついにマシュマロで言われてしまった。
年末年始はイタリア旅行で忙しかったので*1、後で書こうと思っていたのだが。

しかしコロナで暇している人の多い今がベストタイミングなはず。

【目次】

2019年に読んだ本

2019年に読み終えた本は101冊。例年通りといったところだ。

f:id:honeshabri:20200329151605p:plain
骨しゃぶりさんの2019年の読書グラフ - ブクログ

この中から面白かった本を紹介する。ちなみに俺はブクログで5段階評価を付けているが、これは俺にとっての面白さをそのまま表しているのではない。特定の個人へのオススメ度だ。細かくは以前記事に書いたとおりである。

前置きはこの辺にしておいて、本の紹介に移る。順番は読み終えた順である。

ホモ・デウス

『サピエンス全史』ユヴァル・ノア・ハラリが人類の未来について書いた本。

この本は日本だと2018年9月出版なのだが、なかなか手を出す気になれなかった。というのも、未来予測系の本を読むと「なんかネットで見たことのある話の寄せ集めだな」と感じることが多いからだ。結局のところ最新技術紹介でしかなく、「だから未来は今よりも素晴らしいです。良かったですね」で終わってしまうのだ。せいぜい「変化しなければ生き残れない」と警告がある程度。

それに対して本書はむしろ「視線を過去に向ける」ところが特徴であると言える。だから他の本と比べて内容が独自だし、妙な説得力を持つ。俺の抱いたイメージを描くと以下のようになる。

一般的な未来予測の場合、現在から未来を予測する。

f:id:honeshabri:20200329164817p:plain
一般的な未来予測

対して『ホモ・デウス』は過去からの延長線としての未来を予測する。

f:id:honeshabri:20200329164906p:plain
『ホモ・デウス』の未来予測

いや、この図では未来に対して過去が短すぎる。本書は未来よりも過去のことにページを割いている。比率は適当だが、こう修正しよう。

f:id:honeshabri:20200329165015p:plain
『ホモ・デウス』の未来予測 (修正)

しかし歴史を学ぶことが重要なのは、未来を正確に予測できるようになるからではない。歴史を学ぶことによって、現在の価値観がどのように作られたかを知り、過去に縛られない自由な発想をするためである。

いつの時代・地域でも、人は今の価値観が絶対で普遍的だと考えてしまう。現代ならば、人間至上主義がそれにあたる。だが人間至上主義も、国民の質と数が国力に直結する世界だったからこそ生まれたものである。この先アルゴリズムが進歩し、人の数が力とならなくなった時、人権を守る必要はあるのかと本書は問いかける。

リベラルアーツは本来、人間を束縛から解放するための知識や力を身につけるための学問だという。本書はまさにリベラルアーツだと言えるだろう。

残酷すぎる成功法則

残酷すぎる成功法則  9割まちがえる「その常識」を科学する

残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する

人類の行く末に思いを馳せるのも悪くないが、多くの人にとって大事なのは「100年後の人類」より「1年後の自分」である。自分の未来を少しでも良くしたいと考えている人には本書がお勧めだ。本書を一言で表せば「エビデンスのある自己啓発本」である。

この本は既にブログで内容からタイトルに至るまでガッツリ使っている。アニメネタを交えているとはいえ、本書の論理をそのまま使っているので、購入を検討している人には参考になると思う。

基本的な流れはこうだ。まず成功にまつわる疑問を提示する。それは「どっちがいいの?」の形をとっている。「親や先生の言うことを聞くべきか否か」「いい人とずるい人はどっちが得か」など。そういった疑問について、著者は関連する研究・調査を収集し、現段階で分かっている最適解を提示するのだ。

巷には様々な自己啓発本が蔓延しているが、「この方法で成功できる。ソースは俺」というのも少なくない。しかも本によっては全く逆の主張が展開されることもある。こうなると読者は悩む。結局何を信じればいいのかと。

それに対して本書は全ての主張にエビデンスがある。加えて一見すると真逆の主張となる研究を紹介し、それぞれがどのような場合に適用されるかを示す。なので読者は方針に納得できるのだ。

本書で紹介される様々な研究は、それ自体が一冊の本となっていることも多い。なので本書を読んで興味を持ったテーマがあれば、紹介されている本を続けて読むというのが良いだろう。そして実行に移す。俺はちゃんと実行している*2

予想どおりに不合理

デルポイのアポロン神殿の入口には「汝自身を知れ」と刻まれている。成功したければ自分自身のことを知らなくてはいけない。本書は人がどのように振る舞うのかを説明する行動経済学の本だ。

f:id:honeshabri:20200329175636j:plain
デルポイのアポロン神殿 (2017年撮影)

本書もブログで使っている。つい前回のことだ。

加えて春のハヤカワ電子書籍祭の対象になっているので*3、最近読んだばかり人も多いかと思う。それでも面白かったことに変わりはないので、今回とりあげた。

上記記事の中で本書を以下のように紹介した。

一般向けな行動経済学の本はちょいちょい読んでいるけど、だいたいこれと『ファスト&スロー』あたりを読んでおけばいいのではないかと思う。ピークエンドの法則を身をもって経験しているだけあって強い。

この件について、もう少し詳しく書こう。教養の観点から言うと、やはり『ファスト&スロー』に軍配が上がる。行動経済学について書かれた本で、『ファスト&スロー』もしくは著者の一人ダニエル・カーネマンの名前が挙がらないことは無い*4。対して『予想通りに不合理』の方が娯楽的に面白いというか、ユーモアがあって読みやすい。読書慣れしていない人は『予想通りに不合理』を先に読んだ方がいいだろう。要するに両方読めということだ。

もう一つの「ピーク・エンドの法則」はダニエル・カーネマンが1999年に発表した「記憶に基づく評価は、ピーク時と終了時の苦痛の平均でほとんど決まる」という法則である*5。発表したのこそカーネマンだが、この法則を心で理解しているのは『予想通りに不合理』の著者ダン・アリエリーの方だろう。

アリエリーは18歳の頃、全身の70%にⅢ度の火傷を負った*6。これで何年も入院することになるわけだが、当初の苦痛は「入浴」であったという。肉にくっついた包帯を剥ぎ取られ、ほとんど皮膚の無い患部に消毒液をかけられる。想像するだけで耐え難い。

ここでアリエリーが注目したのは包帯の剥がし方である。包帯の剥がす速さはどうするのがいいのか。

  • 速く剥がす:痛みは大きいが、時間は短い
  • ゆっくり剥がす:痛みは小さいが、時間は長い

看護師たちは「速く剥がす」が患者にとって好ましいと信じ切っていた。しかし実際に体験しているアリエリーは同意できない。長期の退院が許されるようになると、大学に戻り、そこで「人が痛みをどのように経験をするか」という問題に取り組む。そして彼もまた「ピーク・エンドの法則」にたどり着き、その研究成果を携えて火傷病棟に戻ったのである。

FACTFULNESS

現状を正しく認識するためには、正しくデータと向き合う必要がある。

これもブログで紹介した気がしていたが、タイトルをオチに使っただけだった。とはいえ使い方はそれほど間違ってはいないと思っている。

世界の現状を説明しながら、現実を正しく認識する方法を説く本である。データを適切に見れば世界はより良くなってきていることが分かるが、多くの人は世界が悪くなっていると思いがちらしい。ただ俺の場合は先に『ホモ・デウス』を読んでいたので、世界が良くなってきているというのは意外ではなかった。コロナが世界を脅かしているとはいえ、長期視点からすれば人類の三大問題「飢饉」「疫病」「戦争」は減っているのだ。

世界がどうこうというより、俺としてはネット炎上に本書を活用したいと考える。本書は日常的にインターネットで何かと戦っている人こそ読むべきだ。そういう人こそ本書で提示される「10の思い込み」に陥っていないか考えてみて欲しい。

思い込みの中でも特にTwitterと親和性が高いと思うのは「焦り本能」だ。この本能に付け込むことを著者は批判している。具体的には「正しい行動」をとらせるために、データを大げさに見せ、恐怖を煽るような戦術を取るべきではない、と。この方法は短期的には効果を上げるかもしれないが、信頼を損なうため、長期的にはマイナスである。

本書は今更俺が紹介するまでもない大ベストセラーのはずだが、ネットを見ていると実際に読んだ人はそれほど多くないのかもしれない。

果糖中毒

『ホモ・デウス』や『FACTFULNESS』で語られているように、現代は飢饉よりも過食の方がはるかに深刻な問題となりつつある*7。過食により肥満となり、そこから糖尿病へと進んでいく。これを回避する助けとなるのが本書である。糖分摂取による肥満のメカニズムと、その影響について学ぶのだ。

痩せるためにはカロリーの入出力量を考えるだけでは不十分だ。何から摂取しているかという「質」も考慮しなくてはいけない。だから糖分を制限する必要がある。

糖分は単純にカロリーがあるだけでなく、満腹感を感じにくくなり、より脂肪を溜め込みやすくさせる。この機能は特定の時期にしか甘いもの=果物を食べられない時代には良かった。秋に脂肪を蓄え、冬に備えるのである。しかし現代は違う。365日いつでも甘いものを食べられる。環境に対して人体機能がミスマッチを起こしている以上、意識的に避けなければいけない。

肥満になる仕組みは複雑だが、我々がやるべきことはシンプルである。食物繊維を取り、糖分を減らし、運動をする。そのためにはできるだけ未加工の食品を摂ることが望ましい。本書では栄養成分表示ラベルがついていない食品を「本物の食べ物」と呼んでいる。健康的な生活を送りたいなら食事では「本物の食べ物」を選ぶべきなのだ。

最後に本書の効力について書いておこう。これは俺の友達の話なのだが*8、本書を読んで食生活を改善した結果、体重が73.3kgから54.2kgへと、約19kgのダイエットに成功した*9。正直なところ、本そのものよりこのエピソードの方が俺にとっては面白い。

終わりに

2019年もそれなりに本を読むことができた。読書量は多ければいいというものではないが、ある程度までは量があった方がいいと俺は考える。この辺のことについては昔書いたので、気になる人はそっちを読んでもらいたい。

それなりに読んだとは書いたが、買った本の方が多いのも事実。気になってメールを検索してみたら、2019年に購入したKindle本は190冊だった*10。明らかに読書スピードが追いついていない。

2018年の本

マシュマロ

marshmallow-qa.com

*1:ストライクウィッチーズ2 聖地巡礼『俺のロマーニャ』 - 本しゃぶり
ジョジョのネアポリス聖地巡礼 レクイエム - 本しゃぶり
ジョジョのローマ聖地巡礼 レクイエム - 本しゃぶり

*2:デオコで女の子の匂いを感じるためには女の子との思い出が必要という問題 - 本しゃぶり

*3:セールは4/13まで。

*4:もし挙がらないようであれば、それは行動経済学の本ではないということだ。もちろん『予想通りに不合理』にはカーネマンの名前が出てくる。『アリエリー教授の人生相談室 行動経済学で解決する100の不合理』には出てこないので、この本は行動経済学の本ではない。

*5:苦痛だけでなく快楽でも同じことが言える。

*6:一番深い火傷であり、皮膚は硬く、黄白色となります。火傷が治ったあともケロイドなどのキズ跡が残る。 対象疾患:やけどとは?|日本大学医学部 形成外科学系形成外科学分野

*7:国連の報告によれば、2018年の世界の飢餓人口が8億2160万人であるのに対し、肥満人口は10億5000万人 (大人の肥満+過体重の学齢期の子供+過体重の5歳未満児) である。食糧不安の人口も考慮すればまだ飢餓の方が多く、飢餓人口は3年連続で増加しているが、長期的には減少傾向にある。 世界の飢餓人口は3年連続で未だ減少せず、肥満は依然増加傾向-国連の報告 | World Food Programme

*8:本当に友達の話である。俺だって友達の1人や2人くらいいる。

*9:2020/03/28時点。友達が読み終えたのが2018/10/28なので、5ヶ月で達成したことになる。

*10:正確に言えばKindle本の購入メールが190通あった。