本しゃぶり

骨しゃぶりの本と何かを繋げるブログ

引用回数の多い本で価値観が分かるという説

インパクトファクターは学術雑誌の影響力の大きさを測る指標である。
ページランクは被リンクの数を指標とした。

本から受けた影響の大きさも引用数を指標とできるのではないか。

自分がどれだけ引用したか

『ゆる言語学ラジオ』#36で、このブログ向きのミームが提唱されていた*1。それは「個人的インパクトファクターが高い」である。これまでの人生で自分が何度も引用したり話をした本などに対して使うものらしい。

ユージン・ガーフィールドが提唱した本来の「インパクトファクター」は学術雑誌に対して使うもので、その雑誌に掲載された論文の1年あたり平均引用回数を表している。

f:id:honeshabri:20210711172540p:plain
インパクトファクターの計算式*2

したがって単純な引用数に対して「インパクトファクター」という言葉を使うのは不適切だと思うが*3、言わんとすることには同意する。価値観の指標として、本の引用数が使える、と。

「お勧めの本」や「面白かった本」と違って「引用数が多い本」は結果そのものだ。しかも引用数は定量的である。本に言及することが多い人に対して「引用数が多い本」を問うことは、かなりクリティカルな質問となるだろう。

では自分の場合はどうかということで、このブログ「本しゃぶり」で引用数が多い本を調べてみた。理想を言えば、まずこのブログで使われている本を全てリストアップしてから各引用数を出すべきだが、さすがにそんなことはやってられない。感覚的に何度も使っていそうな本をリストアップし、その引用数を出すことにした。

引用したかの判定は「書名を出したか」もしくは「リンクを貼ったか」である。上下巻やシリーズのように複数巻に分かれている場合は同一としてカウントした。マンガは除外している。

以上のやり方で上位5冊を紹介する。

『ヘロドトス 歴史』:10回

最も引用数が多かったのは『ヘロドトス』である。最初に上中下と3記事に分けて書いたのが決め手となった。最初に取り上げた本が最も引用数が多いとは面白い。

引用したうちの半分は『ヒストリエ』が関係している。実際、『ヘロドトス』を読むきっかけとなったのは『ヒストリエ』なので当然の結果だろう。ヘロドトスの知識についてエウメネスが「必ず役に立つ!」と断言していたので読んだが、それは正しかった。中でも(上)に収録されている3巻38節「慣習の力」の逸話は、俺の思考に強く影響を与えている。

f:id:honeshabri:20130512205852p:plain
『ヒストリエ』3巻

今回の調査で本書が最も引用数が多いということで、俺も自信をもって断言できる。『ヘロドトス』は必ず役に立つ。

『ローマ人の物語』:8回

次に引用数が多い本の一つは『ローマ人の物語』であった。引用した記事のタイトルから分かるように、本書は「お勧め本」の記事で繰り返し使われている。単純に面白いからだ。不思議なことに、背景知識が少なくてもスイスイ読めるのも良い。『ヘロドトス』では人名・地名に馴染みが無いため読み進めるのに苦労したのだが、なぜか本書ではそういったことが気にならずに読み進められて驚いた覚えがある。

記事への引用数こそ『ヘロドトス』に負けたが、新たに本を買うきっかけという点では本書がおそらく1位であろう。Amazonの注文履歴で「ローマ」と検索したら、『ローマ人の物語』を除いても26冊あった。さらにカルタゴを加えたら30冊となる。本書は歴史書ではなく歴史小説であるため、本書だけでローマを語るのは危ういが*4、俺は本書をきっかけにローマに詳しくなったのは間違いない。

ちなみに俺の好きな巻は2巻 (ハンニバル戦記)、6巻 (パクス・ロマーナ)、10巻 (すべての道はローマに通ず) である。

『仁義なきキリスト教史』:8回

8回で同率2位となった『仁義なきキリスト教史』。キリスト教をネタにするたびに引っ張り出している。本文中で言及こそしていないが、「なぜラノベ原作ヒロインは3分以内に脱ぐのか」は本書を読んで書いた記事なので、実質9回で『ローマ人の物語』より上と言えるかもしれない。

本書はキリスト教史をヤクザの抗争と捉えることで、本来は複雑で把握しにくい歴史をスッキリ分かりやすくしている。各登場人物のキャラが立っているからだろうか。また、各エピソードについて神学的な捉え方はせず、徹底して無神論者の視点で解釈するのが良い。イエスがイチジクの木を呪ったのは、ただのネタである。そこに深い意味は無い。

なお、本書だけでキリスト教を語るのも避けた方がいいだろう。

『性欲の科学』:8回

『性欲の科学』も8回で同率2位。宇崎ちゃんの記事こと「巨乳の炎上に見る進化と文化のミスマッチ」で大活躍した本書は、人の性欲に関するデータが豊富なのが良い。男女の差について語る時は気をつけないと、自分の持つ偏見を述べるだけになってしまう。対して本書ならばアンケートやキーワード分析によって、違いを定量的に示せる。個人の好みを性別で特定することはできないが、傾向は確かに存在する、と。

本書は一つの主張を深堀りするのではなく、様々な独立したネタを紹介していくタイプの本である。なので少しずつちぎって使えば、けっこう長持ちする種本となる。おそらく今後も引用する機会はあるだろう。

『スイッチ!』:8回

最近紹介したことで『スイッチ!』も8回となった。この前はプライムデー対象という制限下での選出だったが、無制限でもランクインである。読み終えてからの年間平均引用数では本書がトップだ。

なぜこんなに何度も引用してしまうのか。おそらく本書の主張が効果的だからだろう。人の行動を変えるためには、明確な指示を与え感情に訴え環境を整える。そして何より、いかに頭を使わせないか。これを意識して実践すると、実際に行動・習慣を良い方向に変えることができる。変えることができたから記事にする。この流れが繰り返し起きた結果が、引用数に表れたのだ。

終わりに

今回は引用数が多い本トップ5を挙げてみた。これで本しゃぶりがどのようなブログなのか、よく分かったと思う。上位5冊の内、3冊が歴史関係の本である。ブコメなどで、本しゃぶりを「おっぱいのブログ」と認識している人をたまに見かけるが、それは誤りであることが立証された。ちなみに『乳房論』の引用数は7回である。危ない。

とはいえ引用数の対象をマンガやアニメにも広げたら印象は変わるだろう。『ジョジョの奇妙な冒険』の引用数は『ヘロドトス』を超えるのは間違いない。なにせ「ジョジョ」カテゴリーにした記事だけで20件あるのだから。また『ヒストリエ』『けものフレンズ』もそれなりの数になるだろう。その人の価値観を知るのに引用数の多いものを調べるのは有効だが、どう枠組みを設定するかが重要ということだ。

最後に引用数で殿堂入りした本を貼っておこう。真の1位は本書だ。

*1:リチャード・ドーキンスが提唱した本来のミームは「文化伝達の単位、あるいは模倣の単位という概念を伝える名詞」であるが、このラジオでは「仲間内で使われる用語」としている。用語はミームの一部ではあるが、ドーキンスはもっと幅広い対象に使うことを想定している。『利己的な遺伝子』ではミームの例として「旋律」「観念」「キャッチフレーズ」「衣服のファッション」「壺の作り方」「アーチの建造法」を挙げている。

*2:y年のインパクトファクターは「y-1年の論文数」と「y-2年の論文数」で「y-1年とy-2年の論文がy年に引用された回数」を割った値である。

*3:本来のインパクトファクター一定期間における平均値であるため、その要素は欲しい。しかし同一の本は毎年内容が変わるものではないのだから、インパクトファクターのような計算はできない。普通に引用数で語るのが良いのではないか。一方で連載マンガはインパクトファクター的発想を使えるかもしれない。これならば一定期間における平均引用回数という形で出せる。ツイート数やコメント数を使えば、「個人的」に留まらず、普通にインパクトファクターの代用となるだろう。アニメだとアニメレーダーがやっていることがそれに近いと思う。

*4:「ローマ人の物語」を歴史の専門家はどう評価しているのか?: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる